私の音楽の原点にある、ときめきを生み出してくれた象徴としての〈ターンテーブル〉

夢のようなアンソロジーだ。竹内まりやの魅力を多角的に楽しめるデビュー40周年記念3枚組『Turntable』。2008年に出た30周年記念ベスト『Expressions』から漏れた代表曲と近年のシングル曲を収めたディスク1《More Expressions》、ソングライターとしてアイドルなどに提供した楽曲のセルフ・カヴァー中心のディスク2《Mariya’s Rarities》、FM番組「山下達郎のサンデー・ソングブック」でおなじみ“まりやの課外(クラブ)活動”で録音された貴重な洋楽カヴァーなどを初CD化したディスク3《Premium Covers》という盛りだくさんの内容だ。

竹内まりや Turntable WARNER MUSIC JAPAN(2019)

アルバム・タイトルについて、まりやさんはこんなことを語ってくれた。

「子供のころ、学校から帰ってくるといつもステレオセットの前に座って音楽を聞いてました。それが最大の楽しみだったな。レコード・プレーヤーのターンテーブルにLPを乗せて針を落とす瞬間の得も言われぬときめき。針を盤面に落とした瞬間、コニー・フランシスとか弘田三枝子さんとかビートルズとかがうわっと歌い始めるじゃないですか。あの感じ。私の音楽の原点にあるそういうときめきを生み出してくれた象徴としての〈ターンテーブル〉なんです。いまは音楽の聞かれ方もずいぶん変わりましたけど、どんな聴き方だろうと、たぶん音楽が好きな人ならこのときめきはいまでも感じるはず。私もそういうときめきをみなさんに提供していられたらいいなと思って……」

ディスク1の冒頭に収められているのは、78年のデビュー・アルバム『BEGINNING』の収録曲“すてきなヒットソング”だ。デビューしたばかりの竹内まりやが、彼女を育ててくれた数々の洋楽ポップスに感謝を捧げた初の自作曲。そんな曲とともに〈はじめの一歩〉を踏み出した女の子は、40年という歳月を着実に歩み続け、いつしか自らがぼくたち音楽ファンたちから限りない感謝を捧げられる存在へ成長した。そんな道のりを改めて振り返るうえで『Turntable』は絶好の3枚組だ。

特にディスク3の洋楽カヴァー集。杉真理+松尾清憲のBOXと共演したビートルズものから、センチメンタル・シティ・ロマンスと共演した米西海岸もの、松木恒秀らジャズ・ミュージシャンたちと共演したスタンダードもの、そして山下達郎との夫婦デュエットによるスウィートR&B……。自らの原点に立ち返り、気の合う仲間たちと音楽をやる楽しさを満喫しているまりやさんの姿が記録されていて、胸が震える。

「そうですね。私のソロというよりは、みんなと一緒にコーラスしながらやってる感じ。学生時代の気分に戻ってますよね。杉さんもセンチもずーっと古い付き合いで。おもしろいんですよ。BOXがコーラスやるといきなりブリティッシュな世界になって。センチがやるといきなりウェストコーストになる。で、結婚した相手はイーストコーストのドゥーワップ……(笑)。自分の音世界の中にそういう音楽仲間がちゃんといてくれたのはラッキーでした。確かに近年の流行とは無縁の音楽性かもしれませんが、昔から私を応援してくださってきたリスナーの方って、こういうものをきっといまでも待ってくれてる気がするんですよ。もちろん新鮮に受け止めてくださる若い人もいるはず。これをきっかけにYouTubeとかでそういう昔の音楽を新たに掘り起こしても面白いかも」

84年にまりやさんが発表した“プラスティック・ラヴ”が海外で再評価され大いに話題を集めているけれど。新たな“プラスティック・ラヴ”がこの3枚組アンソロジーからまた生まれるかもしれない。竹内まりや。デビュー40周年を迎えてなお目が離せない。