スティーヴ・ルカサーは時代や世代を超えて橋を架ける!
15期メンバーの本邦初お目見えとなるTOTOのジャパン・ツアーが開催間近である。ここのところの彼らというと、新しい血を入れたことで新陳代謝が活発化し、強靭なライヴ・サウンドを聴かせているという雰囲気だ。新入りドラマーのロバート“スパット”シーライト(スナーキー・パピー/ゴースト・ノート)が叩き出すファンキーなグルーヴがアンサンブルにどう作用するのか、など鑑賞の際のチェックポイントも多々あるが、コロナ禍の2020年に開催したオンライン・ライヴを収めた『With Little Help From My Friends』で確認する限り、手法やテクニックを超えてロックの醍醐味を徹底追求する、そんな使命感に駆られた様子が窺えて、ひたすらカタルシスに酔いまくるライヴが待っているはずだと期待が膨らんでしまう。
きっと昨今のAORリヴァイヴァルやシティ・ポップ・ブームの流れで、その源流と呼ぶに相応しいTOTOに接近遭遇してしまった世代、例えばウィーザーのカヴァーでよみがえった名曲“Africa”に大いに反応してしまった人、あるいはTOTOサウンドがインスピレーションの源として重要な成分となっていたジョン・メイヤーの2021年作『Sob Rock』にズッポリハマってしまった人なんかも、彼らの新しい動向をすんなりとスルーすることはできないのではないかと思う。また現在シティ・ポップに執心しているリスナーなどは、定番と呼ばれる曲を知れば知るほど、そこにTOTOや米国西海岸で活躍した名うてのスタジオ・ミュージシャンによるプレイ・スタイルや音作りの方法論がいかに深く入り込んでいるのかが十分に理解でき、より関心が高まっていたりするはずだ。
泣く子も黙る技巧派集団でありながら柔軟な発想力を持ち味としてジャンルレスな作品を作り出してきたユニークなロック・バンド、TOTO。なかでもバンドの支柱であるスティーヴ・ルカサーはいまなお精力的な活動を展開し、誰よりも際立った存在感を示している。竹内まりやの『Miss M』や尾崎亜美の『HOT BABY』といった作品への参加も知られる彼は、どんな局面においても優れた対応力を発揮するオールマイティーさも魅力のギタリストであり、マイケル・ジャクソン、ポール・マッカートニー、オリビア・ニュートン・ジョン、ライオネル・リッチーといった著名アーティストのセッションで披露したプレイの数々はいまもなお高い評価を受けている。そんなルークの通算9枚目のソロ作『Bridges』が絶好のタイミングで到着した。