INTERVIEW

宮田大インタヴュー 「エルガーのチェロ協奏曲は、自分のバロメーター」

宮田大インタヴュー 「エルガーのチェロ協奏曲は、自分のバロメーター」

チェロ協奏曲といえばエルガー、宮田大といえばエルガー!
ダウスゴー&BBCスコティッシュ交響楽団との共演はBBCプロムスでも!

 宮田大の弾くチェロには、すみずみまで歌が宿っている。しっとりとした情感が曲全体に脈打っている。はじめて彼の演奏を聴いたとき、まるで鯛焼きの尻尾まであんこが詰まっていたときのような嬉しい心地がしたものだ。

宮田大,THOMAS DAUSGAARD,BBC SCOTTISH SYMPHONY ORCHESTRA エルガー:チェロ協奏曲 Columbia(2019)

 その宮田の新譜は、エルガーのチェロ協奏曲だ。初めてのコンチェルト録音であり、コロムビアからの第1弾となるアルバム。

 「この曲は、自分を成長させてくれた曲の一つで、どういう音楽をやっているのか、どういう音色が作れているのかといった、自分のバロメーターになっている曲」と宮田は語る。

 チェロ協奏曲といえば、ドヴォルザーク作品がメジャーだ。宮田も数多くその協奏曲を弾いているが、その次くらいにこのエルガー作品を演奏してきた。

 「感情を表立って出さずに内に秘めている作品なんです。感情の起伏が細やかに変化することで、まるで聴いた人が自身の人生を振り返るような。もちろんドヴォルザークも素晴らしいのですが、チェロ協奏曲といえばエルガー、という認識がもっと広まって欲しいですね」

 今回共演したのは、トマス・ダウスゴーが指揮するBBCスコティッシュ交響楽団。初の顔合わせだった。

 「ダウスゴーさんは、かつて自身が弦楽器を弾いていたこともあるらしく、音楽の作りが弦楽器的なんですよね。さらに音楽の方向性も一緒で、しかもオーケストラはこの曲はやり慣れていたので、まったくストレスを感じることなく演奏ができました。この曲に慣れていない指揮者だと、自分がゆっくり歌ったとき、どうしてもオーケストラもそれを引き継ぐようなテンポで進めがちなんです。お互いの駆け引きがなくなって、平板になってしまう。しかし、今回は息づかいごとにテンポや間の取り方も変化するなど、最初のコンチェルト録音で彼らと共演できたのは本当に良かったと思います」

 カップリングには、ヴォーン・ウィリアムズ作品をディヴィッド・マシューズが編曲した《暗愁のパストラル》を選んだ。ヴォーン・ウィリアムズがチェロ協奏曲として構想しつつも完成を断念。その残されたスケッチから、マシューズが緩徐楽章のみを独立した作品として編曲したものだ。これまで録音はほとんどない。

 「日本的な音階も聴こえる、この哀愁あふれる音楽は、聴けば聴くほどに魅力を感じます。エルガー作品との雰囲気も通じ合ってますし。もう一つ、ダウスゴーさんがこんなことを言っていたんです。ヴォーン・ウィリアムズは、エルガーのチェロ協奏曲に匹敵する作品を書こうとしたのだが、その重圧に負けて途中で書けなくなってしまったのではないかと」。なるほど、エルガーの協奏曲と組み合わせるにはじつに最適な作品ではないか。

 ストラディヴァリウス「Cholm ondeley」を弾き始めて7年あまり。かつてはアマデウス四重奏団のマーティン・ロヴェットが長らく弾いていた楽器でもある。そのせいか、アンサンブル向きの落ち着いた響きだった。3年ほど前から、宮田が望む音色が出るようになったという。

 「どのように悲しかったのか、どういう理由で嬉しかったのかといった、細やかなニュアンスやシチュエーションがこの楽器を演奏することで表現することができるようになりました。自分が伝えたいものをより具体性をもって代弁してくれる楽器です」

 最近では、エルガーといえば宮田大と言われるまでになった。ただ、もっとも得意としているのはラフマニノフなどのロシアものだと本人は語る。最近のリサイタルでは、チェロとピアノに編曲した管弦楽作品にも果敢に取り組んでいる。今年はガーシュウィンの『パリのアメリカ人』だ。「将来的には、ラヴェルの歌劇『子供と魔法』や『ドラクエ』の音楽も取り上げたいですね」

 


宮田大 (Dai Miyata)
1986年7月5日生まれ、栃木県宇都宮市出身のチェロ奏者。音楽教師の両親のもと3歳よりチェロを始める。幼少よりその才能は注目をあつめ、9歳より出場するコンクール、第74回日本音楽コンク ールを含むすべてに第1位入賞を果たす。2009年、第9回ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人として初優勝。桐朋学園音楽部門特待生、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースを首席で卒業。2009年にジュネーヴ音楽院卒業、2013年6月にクロンベルク・アカデミー修了。国内外の音楽祭やソロ活動を活発に行っている。

 


LIVE INFORMATION

BBCプロムス
○11/3(日・祝)14:00開場/15:00開演
【会場】渋谷オーチャードホール
【曲目】エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 Op.85
【出演】宮田大(vc)トーマス・ダウスゴー(指揮)BBCスコティッシュ交響楽団

EX SPARKLING CLASSICS 宮田大×大萩康司
○11/8(金)19:00開演 【会場】六本木EXシアター

宮田大チェロリサイタル
○11/24(日)15:00開演 【会場】三井住友海上しらかわホール

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