2020年の初共演から4年、2人の名手がいざなう、共に演奏する喜びに溢れた空間
宮田大と大萩康司がチェロとギターの異色のユニットで、1stアルバムをリリースしたのは2020年のこと。それからの4年間、2人は全国でコンサートを重ねていた。当初は、異色ゆえに選曲も難航したという。
大萩康司「チェロとギターのオリジナル曲というのはなかなかない。だから、最初は曲探しから始まりました。僕は以前にチョウ・チンさんとチェロとギターのアルバムを作ったことがあるけれど、その曲をカヴァーするわけにもいかないですからね(笑)。でも、コンサートの回数を重ねることで、プログラムが増えて、さらにやりたい曲もそれぞれあったので、じゃぁ新作を作ろうかということに……」
宮田大「チェロの曲は、本当に多くなくて、オーケストラとの協奏曲か、チェロとピアノの編成か。なので、新たなチェロ作品を開拓していきたいという思いがまずあります。でも、弦をはじくギターと、弓でこするチェロでは音の速度が全然違うんですね。そんなアンサンブルだからこそ、チェロの違った面が見えてくるのがいいんです」
前作はクラシック中心の編成だったが、新作『atelier』は、持ち寄った楽曲が多彩で、ボサノバから始まり、映画音楽、“蘇州夜曲”などの歌もあって、2人の世界観がより明確になっている。そのなかでも意外だったのがリベラの“彼方の光”だ。
宮田「作曲家の村松崇継さんと親交があって、雲の合間から差し込む光をギターでキラキラと、雄大な大地の声をチェロで歌う。そんな風景が見えると思ったのと、リベラの讃美歌のような歌声をチェロとギターの哀愁ある音で表現することで、また違うものを届けられると思ったので選びました」
大萩「この曲のすごく開けるような演奏って音が持続していないと出来ないので、ギターだけでは難しく、チェロと一緒に演奏するからこその1曲。何か光が見えてくるような演奏が弾いていても気持ちいいんです」
多彩な選曲のなかで、同じ作曲家の曲が2曲ある。坂本龍一の“Andata”と“鉄道員(ぽっぽや)”だ。
宮田「“鉄道員(ぽっぽや)”は、以前から好きだったので、哀愁ある楽器同士でぜひ弾いてみたかったんです。哀しいんだけれど、心臓の速度が遅くなってゆっくりとなれる曲。山中惇史さんの編曲がまた素晴らしく、お互いに結構短音で演奏するので、シンプルなんだけれど、ひたひたと雪が降る雰囲気が出ていて。油絵でも、水彩画でもなく、水墨画というか、白地の水に墨汁が垂れた時の波紋だけで表現されているような曲になっています」
大萩「“Andata”は、深みにどんどん沈んでいくような、角田隆太さんの編曲になっていて、そういう演奏もギターでは難しい。でも、演奏するなかで、この曲の美しさを表面的じゃなく、もっともっと感じられるようになったのは良かったです」
さて、アルバムは、前半が親しみやすいポピュラーソングでイマジネイティヴに、後半は英国ウェールズ出身の作曲家スティーヴン・ゴス“Park of Idols for guitar & cello”という編成で、圧倒的な演奏力に耳を奪われて、異世界へと誘われる。
大萩「好きな曲を集めた前半に比べて、ゴスのチェロとギターのオリジナル曲は異質ですよね。この楽譜は、前に購入していたけれど、一筋縄ではいかない曲なので、本気で取り組まないといけないし、アンサンブル的にも複雑なので、何年も一緒に組んでいて、信頼出来る人とじゃないと難しい。僕らはデュオとして6年目かな、タイミング的にもいい時だと思ったので今回選びました」
宮田「初めて聴いた時に難しい曲とは思いましたが、前半はリスナーとディスカッションして、いろいろな景色を見てもらう。聴く時間によっても沸く感情が変わるようなプログラム。そして、後半は僕らのアトリエ的な挑戦。クラシックならではの曲で、僕らが描く絵を見てもらう編成になっています」
LIVE INFORMATION
アルバム発売記念ツアー 2025
2025年1月25日(土)埼玉・松伏町中央公民館
2025年1月26日(日)徳島・小松島サウンドハウスホール
2025年2月1日(土)栃木・那須野が原 ハーモニーホール
2025年2月2日(日)埼玉・所沢市民文化センターミューズ
2025年3月8日(土)愛知・宗次ホール
2025年3月9日(日)広島・広島市東区民文化センター
2025年6月7日(土)岩手・キャラホール(都南文化会館)
2025年6月13日(金)宮城・宮城野区文化センターパトナホール
2025年6月14日(土)福島・けんしん郡山文化センター
2025年6月15日(日)青森・弘前市民会館大ホール
2025年6月27日(金)東京・紀尾井ホール
2025年7月5日(土)・6日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター
2025年7月21日(月・祝)神奈川・神奈川県立音楽堂 ほか
https://columbia.jp/artist-info/miyatadai/