INTERVIEW

GUIRO、時を遡り海と波の記憶を伝えるために

髙倉一修が語る『ABBAU』新装盤のすべて

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4分の4で割り切れないリズムにしたい

――“アバウ”で気になっているのは、複雑なリズムについてです。どうやってできあがったのでしょう?

「まず、サビあたりの〈タッタッタッタッタッ〉っていうドラムのリズムの発想のもとは、(ドクター・バザーズ・オリジナル・)サヴァンナ・バンドなんです(笑)。サヴァンナ・バンドのあの感じを思いながら、僕はずっとここの部分を反芻していたんだと思います。でもバンドに持って行ったら、やっぱりサヴァンナ・バンドみたいにはならない(笑)。その〈ならなさ〉がこの形になったっていう感じです。

あとは、『Album』の頃にも試しつつあった4分の4で割り切れないリズム。意識してっていうよりも、なぜかそうしたい気持ちがあるんですよね。自分でも何拍子なのかよくわからない。わからないけど、思っているものに近い形になるようにとにかくもがくんです。特に〈鷦鷯〉のくだりのあたりは本当によくわかりません(笑)。

このときのドラマーは(松石)ゲルさんなんですけど、彼は自分のドラマー的アイデンティティーをゼロにして取り組んでくれるんです。自分が叩ける/叩けないとかっていうより、それで曲ができるんだったら付き合おうとしてくれるタイプの奇特な、ありがたいひとで。何拍子なのかもわからないものに必死で付き合って、形にしてくれるんですね」

ドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンドの76年作『Dr. Buzzard's Original Savannah Band』収録曲“Cherchez La Femme / Se Si Bon”。ビッグ・バンド・ジャズ、スウィング・ジャズ、ディスコにカリブ海音楽などを織り交ぜた音楽性は、日本の歌謡曲やシティ・ポップでも参照された

――4分の4で割り切れない拍子、リズムに取り組みたいという気持ちは、どこから出てくるんですか?

「僕が思っているメロディーが……」

――メロディーとリズムが一緒に出てくるんですか?

「そうそう。思っている段階では拍子を意識していないんですけど、実際に4分の4(拍子)でやってみると間延びしてしまう。間延びしているから〈ここはいらない〉と削っていくと、結果的に変な拍子になってしまうんです」

――アウトロでは5拍子になっていませんか?

「あれは、僕が〈♪タラタタッタタ〉っていう(ギターの)フレーズを、とにかくただ弾いていたんです」

――そのフレーズが先にあって、それに合わせたらああなった?

「思えば、あの部分も別でできていたんです。もともと、あそこを曲の真ん中に入れ込んだ設計図みたいなものも思い浮かべていました」

――いろいろなものが継ぎ接ぎされて、“アバウ”というひとつの曲になっているのがすごいですね。

「よく形になったなって思いますね(笑)」

 

北園みなみのストリングス・アレンジについて

――北園みなみさん(現・大沢建太郎)がストリングス・アレンジで参加したのは?

「録音しようっていう段階で、ストリングスを入れることを思い浮かべていたんです。でも伝手もないし、できるんだろうかと。そこでまず、あだち(麗三郎)くんの知り合いの田島(華乃)さんと関口(将史)さんに演奏をお願いしました。

あとは、以前から面識のあったLampのアルバム(2014年作『ゆめ』)で北園さんがストリングスのアレンジをされていて、ちょうどその頃、彼自身の曲もSoundCloudで話題になっていました。〈もしかしたら……〉って思って、よく知りもせずに唐突に連絡をしたら、返事が来たんです。だから、本当に思いつきでアタックしました」

Lampの2014年作『ゆめ』収録曲“シンフォニー”。ストリングス&ブラス・アレンジを北園みなみが担当している

――北園さんの編曲や曲にピンとくるものがあった?

「そうですね。“アバウ”はちょっと変わった曲だから、それを理解してくれる人にお願いしたいなって思っていました。もしかすると、北園さんならそのへんを汲んでくださるんじゃないかって。

やりとりをしているなかでも〈頼んでよかった〉って思うようなことがあったんです。GUIROを休んでいた期間はクラシックもけっこう聴いていたんですけど、北園さんのほうから〈印象派的〉っていう言葉が出てきたんです。僕はラヴェルやドビュッシーの小編成のカルテットとかを好んで聴いていて、“アバウ”でもそういうものを想定していたので、わかってもらえているなって。たぶん、コードの動きとかから汲み取ってくれたんだと思います」

 

ポップス的でない曲想を探るために

――当初は“アバウ(Pt. 1)”と“アバウ(Pt. 2)”として収録されていたのが、今回は“アバウ”と“アバウ(Welle)”となっています。これはどうしてなんですか?

「1曲目(“アバウ”)と2曲目(“旅をするために”)はそんなに変わっていないんです。3曲目(“アバウ(Welle)”)だけは歌を録り直したり、バランスを変えたりしたので、いちばんちがうのは3曲目ですね。もともと〈Pt. 1〉〈Pt. 2〉というのも便宜的につけたもので。最初はタイトル自体が決まっていなかったんです」

――曲名についてもお訊きしたかったんですよね。

「“アバウ”はこの曲のために考えていたことではなくて、再開したGUIROの音楽的コンセプトとして出てきた言葉だったんです。それが結果的にタイトルに転じたと。最初は聴き慣れない言葉を曲名にするのに躊躇があって、〈波のアバウ〉とか言ったりしていました。だけど、リリースするにあたっては〈アバウ〉に落ち着いて、区別するために〈Pt. 1〉〈Pt. 2〉というふうにして。〈Pt. 2〉は副産物的にできたヴァージョンなんですけど、〈Pt. 1〉より波を想起させる気がします。なので〈波のアバウ〉を思い出して、今回〈Welle(ヴェレ)〉としました」

『ABBAU (Neue Welle)』収録曲“アバウ(Welle)”

――新装盤につけられた〈Neue Welle(ノイエ・ヴェレ)〉はドイツ語で〈新しい波〉という意味ですよね。また、〈アバウ(Abbau)〉は〈解体〉や〈分解〉を意味するドイツ語で、ジャック・デリダの〈脱構築(déconstruction)〉のもとになった言葉でもある。つまり“アバウ”という曲には、もとあったGUIROを解体したり、脱構築したりするイメージがあった?

「そうですね。もっとポップス的ではない曲想を探ってみたいっていう気持ちがあったんです。だから、前のものをやるにしても、換骨奪胎したり、そういうものを入れ込んだりしたい――そう思っていたときに出会った言葉でした。たとえば〈デコンストラクション〉とか、そういう長ったらしい言葉だったら使わなかったと思うんだけど。“アバウ”は日本語話者にとってもなんとなく……」

――すっとくる感じがある。

「〈アバウト〉っていう言葉があったりするからね。でも馴染みがあるわけじゃなくて、どこかひっかかりがある。思っていたことを少し提示できた曲になった気がしたので、〈これをタイトルにしよう〉って思ったんです」

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