無敵の三本マイクが織り成す奇跡の新曲たち――色褪せないクラシックの連なりに新たな珠玉の楽曲群が加わることとなった。D.Lのレガシーに絶えることのない愛と敬意を!

 m-floの新作『KYO』を聴いて今も昔も憧れを隠さないVERBALの引用ぶりにニヤリとさせられたり、韻踏合組合の新作『マラドーナ』にNIPPSの客演した“イカれてる イっちゃってる 異ノーマル”があったりして、ともかくBUDDHA BRANDを思い出す機会が多くなっているという人も多いのではないだろうか。その伝説の伝説たる所以をダラダラ書き連ねるのは野暮なことだが、そうした説明を要さずともいよいよ公開された楽曲たちは恐ろしく雄弁だ。BUDDHA BRANDとしては19年ぶりの新作となる文字通りの『これがブッダブランド!』がここに届けられたのである。

BUDDHA BRAND 『これがブッダブランド!』 Bad News(2019)

 前作にあたる『病める無限のブッダの世界~BEST OF THE BEST(金字塔)~』は2000年3月のリリース。その後にグループでの活動は途絶えていき、DEV LARGEことD.L、CQ、NIPPSという無敵の三本マイクはそれぞれの活動を主軸にしていくことになった。D.Lはプロデューサーとして活躍しながらDEV LARGE THE EYEINHITAE名義のビート・アルバム『KUROFUNE 9000』(2005年)やメジャー作品『THE ALBUM』(2006年)を発表。CQはMAKI THE MAGICと組んだキエるマキュウの活動に本腰を入れはじめ、NIPPSは『MIDORINOGOHONYUBI MUSIC/ONE FOOT』(2002年)発表後、TETRAD THE GANG OF FOURなどのユニット活動や後進たちとの絡みで存在感をキープし続けてきた。

 その間にはILLMATIC BUDDHA MC’S名義で3人が揃い、ウルトラマグネティックMC’sのカヴァー“BAIT 2005”(2005年)やアニメ「TOKYO TRIBE 2」の主題歌“TOP OF TOKYO”(2006年)を発表したこともあったし、2011年には公式ミックスCDの『D.L presents : Official Bootleg Mix-CD “ILLDWELLERS” a.k.a ILLMATIC BUDDHA MC’S Mixed by MUTA』が発表されてもいて、もしかしたら折々に何かしらの計画はあったことは想像できるものの、残念ながらそれらが実を結ぶことはなかった。なぜこのタイミングで新作リリースが実現したのかは知らないが、逆に言うならばいつ耳にしても構わない本作のタイムレスな性質に相応しいとも言える。

 このたび陽の目を見たのは6曲。幕開けの“Kushokan”は、95年の自主制作12インチ『ILLSON/FUNKY METHODIST』のプロモ盤B面にのみ収録されていた同名のインストに、2019年のNIPPSとCQがラップを乗せたものだ。残る5曲は蔵出しされた音源となり、今年の6月に〈新曲〉としていきなり7インチ・カットされた“Codeな会話”とそれに続く“Punch(仮)”、さらには“FUNKY METHODIST”の次のシングルにするプランもあったという“Matador”、そして初作に収録される予定がリリックの卑猥さゆえに叶わなかった“BUDDHA PORNO ALL STARS(女体の狩人のテーマ)”のラップ入りヴァージョン(7枚だけ世に出された“HI-JACK(のっとり)”のテストプレス盤12インチに収録されていた)と、いずれも最高のD.L製ビートに各々のマイクの絡んだブッダ印の楽曲たちが並んでいる。なかでも意外に思えるのが、BTエクスプレスのダンス・クラシック“Have Some Fun”をそのままジャックしたような“生きる”で、これはD.Lがアルバム制作のディールをレーベルと結ぶために作った2004年頃の曲だという。

 とかく説明過多なあれこれが良しとされる昨今、この謎めいた輝きは孤高の存在感を放っていて、それこそが楽曲自体の魅力と並ぶ彼らの価値なのは言うまでもないだろう。この12月にはD.L a.k.a. BOBO JAMES名義での『OOPARTS(LOST 10 YEARS ブッダの遺産)』(2011年)がリイシューされ、それと同時にCQ初のソロ作『NAUTILUS ~恋する潜水艦~』も登場する予定だ。BUDDHA BRANDはもう歴史だが、彼らの伝説は今後もさまざまな形で更新されていく。

 

関連盤を紹介。

 

2015年以降もさまざまな角度から輝きを放ってきたBUDDHAのブランド

鎖のサウンド面を支える音職人の初作では、CQとNIPPSがBUDDHA MAFIAとしてチルな名曲“IT'S COOL ~Mafiaの休日~”を披露。伝承者たるGOCCIとMEGA-Gの“ILL 生存者”も隅々まで聴きモノだ。

 

DJ PMX 『THE ORIGINAL III』 BAY BLUES/HOOD SOUND/ビクター(2017)

活動初期に“人間発電所”のマニピュレーターを務めたことも知られるPMX。このリーダー作では“Don’t Push Me”にCQとNIPPSをBUDDHA MAFIAとして招き、メッセージをドープに響かせている。

 

2000年代にD.Lのフックアップで注目されたラッパーが発表した初のアルバム。端々に滲むメッセージに加えて“There is”にはNIPPSも招き、“SUPER EMCEE'S PT.3(LETHAL WEAPON PT.4)”も披露!

 

MANTLE as MANDRILL 『365 of MANTEE THE SEXORCIST』 MAD13(2013)

THE SEXORCISTのメンバーによるソロ作で、飛葉飛火などの多名義を用いつつほぼ全曲にNIPPSが参加している。なかでも“ブッダの日記”はBUDDHA MAFIAとしてCQも駆けつけたひときわ不穏な逸曲だ。

 

D.L a.k.a. BOBO JAMES 『OOPARTS(LOST 10 YEARS ブッダの遺産)』 Bad News(2011)

D.Lのソロとしては通算3作目となる杉並アンダーグラウンド秘宝館。表題が示す通り、長年に渡って作り溜めてきたドス黒いサンプリング・トラックを開陳したインスト集で、このたび待望の復刻に!

 

OMEN44, NIPPS, VIKN 『25:17』 THE PLUG INTERNATIONAL(2019)

NIPPSの絡んだ近作EP。冒頭から激しく“Bring Back D.L”とブチ上げる様も気になる一方、MARINがジョニ・ミッチェル風に〈遠い国からはるばる殺しに来た〉と歌う“CFFTK Remix”にはCQも客演。