音楽性さえ担保できれば、東京にいなくてもいい
冨田「Orangeadeのアレンジは、どんな分担になっているんですか?」
Orangeadeスタッフ「前作『Broccoli is Here』では、曲を作った人がアレンジをして、レコーディングのディレクションもしています」
冨田「曲ごとのアレンジのちがいは、そんなにない気がしました。みんな、わりと志向が似ていると思います。北園(みなみ)さんのCDは聴いていたから、音がビジーな曲は大沢さん作かなと思いました。でも、和声の感じはそんなにかけ離れていない。
例えばキリンジの(堀込)高樹くんと泰行くんの場合は、和声のちがいでも、どちらの曲かはわかりやすかったですよね。でもOrangeadeは、複数の作者というよりバンドとして一個に聴こえている。そこがおもしろかったけど、作者が一人減っちゃったんですよね」
岡村「いや、シンリズムくんが加入するからまた〈プラス1〉になりますよ」
冨田「そうか、それが楽しみですね」
岡村「そもそもそれぞれに活動してきたミュージシャンが手を組んだユニットで、そこにやはりソロをやってきた、スター性のあるメンバーが入ることで、ちょっとしたスーパー・バンドに近くなりそうですね」
冨田「北園さんの名前は、最初ネットで知ったんです」
岡村「ネットは大きかったですね。ネットやYouTubeをプラットフォームにする人たちは、2000年代後半から急激に増えていくじゃないですか。そのなかには、tofubeatsくんのようにヒップホップやクラブ・ミュージックを経由してポップにたどり着いた人たちと、北園さんのように宅録やスタジオありきの音作りでポップスを作っていた人たちがいた。いくつかのルートがあったと思います」
冨田「ネットがベースだと、東京住みである必要がないですよね。僕は東京にこんなスタジオを作っちゃったんですけど、いまになってみれば、もっと田舎で広くするという選択肢もあったなあと思います。データのやりとりだけで、スタジオから一歩も出ない仕事もあるわけですから」
岡村「冨田さんはメジャーの仕事が圧倒的に多いので、東京にいる必要はあるんじゃないですか?」
冨田「そうですね。ミュージシャンに来ていただくときも、ここなら利便性はある。けど、これから録音作品を発表していこうと思っている人は、音楽性さえ担保できれば、どこにいてもいい。でも考えさせられるのが、結局みんな東京に来るっていうことなんです。ある程度キャリアが順調になってくると、いまでも東京に来る人は多い。今後はわかりませんけど」