COLUMN

ダニエル・ロパティン『Uncut Gems Original Motion Picture Soundtrack』 OPN=ダニエルによるクライム・サスペンス映画のサントラは、ひとつの音楽作品として存分に堪能できるものに

Photo by Mary Kang

『Uncut Gems』という名のもう一つの音響映画

 OPN名義での活動でも知られるダニエル・ロパティンによる新作が、今年公開されたサフディ兄弟によるクライム・サスペンス映画『Uncut Gems』のサウンド・トラックとしてリリースされた。OPN=ダニエル・ロパティンは2年前にも同じくサフディ兄弟による映画『Good Time』の劇伴を手がけており、映画監督と音楽家の濃密かつ継続的な関係性が数多くの傑作を歴史に残してきたように、彼らもまた一度限りのコラボレーションではなく、そうした共同制作の段階へと入ったことを本盤は示している、とひとまずは言えるだろう。

DANIEL LOPATIN Uncut Gems Original Motion Picture Soundtrack Warp/BEAT(2019)

 劇伴はあくまでも映像ありきで制作され、視覚と聴覚が交わるところにその真価を発揮することは言うまでもないが、たとえば固有の場面を想起させるような1~2分の断片的な楽曲が連なる本盤のなかでも、物語の幕開けに相応しい雄大なオーケストレーションが施されたエレクトロニック・アンサンブル《The Ballad Of Howie Bling》、不穏なアンビエンスを漂わせながらシンセサイザーによるダンサブルな反復フレーズが浮かび上がっていく《School Play》、民族音楽風のパーカッシヴなグルーヴが心地よい《Windows》、あらゆる葛藤を包み込むような慈愛に満ちたシンセ・サウンドが印象に残る《Uncut Gems》など、アルバムの骨子となる楽曲が要所に配置されており、すなわちひとつの音楽作品として存分に堪能できるものとなっている。あるいは『Uncut Gems』という名のもう一つの音響映画がここにあると言えばいいだろうか。

 なお、日本では『Uncut Gems』は来年一月のNetflixでの配信から観ることができるようになる。サントラといえば映画の“感動”を音楽として追体験するものが大半だが、むしろ先に音盤を手にし、そのサウンドを音楽作品として堪能した後に映画を観ることによって、映像の物語には回収し得ない豊穣な聴覚体験をすることもできるはずである。

 


CINEMA INFORMATION

「Uncut Gems (原題)」
監督:ジョシュア・サフディ&ベニー・サフディ
音楽:ダニエル・ロパティン
出演:アダム・サンドラー/キース・スタンフィールド/ジュリア・フォックス/ケビン・ガーネット/ほか
公開:2020年1月予定

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