(左から)Hideki、NaNa

群馬を拠点に2001年より活動するMAHATMA(マハトマ)が、新編成での第一弾作品となるミニ・アルバム『Hybrid Scenery』を完成させた。自身のことをクリエイティヴ・ロック・バンドと呼ぶ彼らのスタイルがより濃密に形になった印象を抱かせる本作について、メンバーは何を思うのか。浜田麻里バンドにも参加するリーダーのHideki(ドラムス)、可憐な歌声を響かせるNaNa(ヴォーカル)が制作の舞台裏を語った。

MAHATMA 『Hybrid Scenery』 Walküre(2020)

 

カギになったのは、Tsubasaの創作意欲の高まり

――『Hybrid Scenery』は、これまでのMAHATMAの作品と比較しても、より聴き応えのある仕上がりになったと思いますが、ミニ・アルバムという形態であることも含めて、今回はどんな考えのもとに制作に臨んだのでしょう?

Hideki「いつも作曲を担当しているのが自分と実弟のTsubasaなんですが、(アルバムを作るのは)そこで曲が溜まったらという感じなんですね。今回は自分が2曲で、Tsubasaが3曲、あと1曲は共作なんですけど、Tsubasaの創作意欲の高まりをとても感じられるものになったと思います。

今、彼はステージを降りているんですが、普段の生活の中で思うことがいろいろとあるみたいで……よりスピリチュアルになってきたなぁという印象があります」

※現在はコンポーザーとして所属。レコーディング時にはギターやベース、コーラスも担当

――それには何か理由がありそうですか?

Hideki「まぁ、うちら兄弟は、結構闇深いところがあって(笑)。些細なことですごく悩んでしまったり。自分はそのピークが20歳ぐらいだったんですけど、Tsubasaは最近またその波が来ているようで、たまに〈眠れないんだよ〉みたいな電話が来たりするんですね。

でも、そういうときに限って曲が出てくるみたいなんです。Tsubasaの場合は、アルバムに向けて作るというより、そのときの自分の感情に沿って、出るときに出てくるみたいな感じはありますね。

自分は、去年“ヒトツ空の下で”を作り始めたときに、これをリード・トラックにしたいなという思いがあったので、そこにある意味、このミニ・アルバムのテーマ的なものを盛り込みました」

NaNa「基本的に私は作曲はしないですし、今回は作詞もしていないので、完全に出来上がってくるのを待っていた形なんですが、Tsubasaは〈コンセプト・アルバム的な感じにしたい〉って言ってましたね」

『Hybrid Scenery』トレーラー

――コンセプト・アルバムという話には納得がいくところですね。実際に聴けば、ストーリー性が感じられますし。

NaNa「そうですね。Tsubasaは〈映画みたいにしたい〉とも話してて。なので、イントロの部分にナレーション的なものを入れてみた曲もありますし。

Tsubasaが作曲したインスト曲の“Anxiety Attack”も、アルバムを一つの流れとなるように構成したいという思いでナレーションを入れたり……この曲は〈眠れぬ夜が続いた〉って始まるんですけど、まさにさっきの〈眠れない〉って話ですよね。たぶん、本人が実際にうなされてるときに出てきた曲なのかなって思うんですよ。

だから、今回はそういったTsubasaの意図を上手く汲めるようにイメージ作りをしましたし、デモの段階から、どういうふうにやろうかなと、すごくいっぱい考えましたね」