(左から)ISAO、星野沙織

昨今は浜田麻里バンドのメンバーとしても知られる、8弦ギターを駆使するISAOと、国立音楽大楽を首席で卒業した才能で、バイオリニストとして多方面で活躍する星野沙織によるsoLiが、2020年1月にリリースした『soLi』に続くセカンドアルバム『My Garden...』を完成させた。

二人に共通するバックグラウンドにコンピュータゲームがあるのが興味深いが、ギターとバイオリンという異なる弦楽器の特性を絶妙に融合させながら、優美で劇的な物語を多彩に描いていくキャッチーなインストゥルメンタルは聴き応え充分だ。

今回もリズム隊にはお馴染みのBOH(ベース)と原澤秀樹(ドラムス)を起用。加えてグローバルに活動してきた大村孝佳(ギター)やGRANRODEOのe-ZUKA(ギター)、様々なフィールドで活躍するIKUO(ベース)らの客演も注目すべきポイントだろう。メロディアスなフレーズを前面に押し出し、バンド編成でプログレッシブな感性も巧みに織り込んでいく様は、敏腕ミュージシャンならではだ。

『My Garden...』はどのように制作されたのか。その背景や各曲に込められた思いなどを、ISAOと星野沙織にじっくりと語ってもらった。

soLi 『My Garden...』 Walküre(2021)

 

ギターとバイオリンの融合はさらなる高みへ

――前作の時点では、こんなに早くセカンドが出るとは思いませんでした。多忙なお二人によるプロジェクトですから。

ISAO「ファースト後はツアーもやったんですけど、コロナ禍の影響で、普段の活動がまったくできない状況になりましたよね。では、どうするかと考えたときに、思い浮かんだのが制作だったんです。そこでシングルで、配信や会場限定CD-Rで販売して、最終的には6曲をリリースしたんですね」

――その6曲は『My Garden...』のデラックスエディションのボーナスディスクに収録されることになりました。

ISAO「スムーズに曲もできて。そんな中で、国内でもウィズコロナみたいな動きになってきて、soLiとしてもまたライブができるんじゃないかと思えてきた。エンターテインメント業界が動き出すのは2022年かなと。

ただ、活動を再開することを考えたとき、2年前の曲ばかりを演奏するのもどうかと思うじゃないですか。やっぱり新しい作品を残したいなと」

――そう思ったタイミングはいつだったんですか?

ISAO「(2021年)8月です。ちょうど世の中も上向きになってきた時期ですよね。その辺を総合的に見たときに、年内にアルバムを出したほうがいいなと」

――とすると、そこからの展開は驚くほど早かったということになりますね。

ISAO「地獄のような日々でした(笑)」

星野沙織「9月10日にドラムレックが決まったので、死にもの狂いで曲を作って(笑)」

ISAO「もともと僕は2日で1曲書くタイプなんですね。だから、2週間あれば大丈夫でしょうと」

星野「私はピーピー文句を言ってましたけど(笑)」

ISAO「でも、クラシック上がりの沙織ちゃんとロックや何やかんやの生粋の叩き上げみたいな僕がsoLiとして活動する中で、ファースト制作時はモヤモヤしていたギターとバイオリンの融合が、より明確になってきたんですよ。そうなると、世界観も構築しやすい。曲作りにおけるバランス感が進化したからこそ、2週間でいけるという確信を得ましたね」

星野「私はISAOさんより曲作りに時間がかかるので、今回も3曲だけなんですが、それでもドラムレックに間に合わせるために、できた瞬間にデモを(原澤)秀樹さんに投げて。今回は秀樹さんとのやりとりに時間をかけさせていただいたんです」

――思い描くドラムになるよう、細かく擦り合わせていったんですね。

星野「私がドラムパターンを説明しようとすると、国語の教科書の文章みたいになっちゃうんです(笑)。それを秀樹さんが読み解いて音にして送ってくれるんですが、それをまた私が〈国語〉で返すみたいな(笑)。アレンジャー、原澤秀樹のおかげですね(笑)」

ISAO「クラシックとロックで使う用語が違うのもありますよね。〈16ビート〉なんて使わないでしょ?」

――〈ここはツーバス連打で〉というのもないでしょうね(笑)。

星野「言わない(笑)。ISAOさんはすべてのパートを打ち込んだ状態でみなさんに聴かせるんですけど、私の曲はギターのメロディーとバイオリンとコード感しかないものなので、どうしても時間を要するんですね。でも、ホントによかった、間に合って(笑)」

『My Garden...』トレーラー

――先ほどISAOさんが話していた、ギターとバイオリンの融合という点についてはどうでしょう?

星野「先日、ある取材で、私の曲が、ロックやISAOさん側の音楽を少しわかってきた曲調になっていると言われたんですね。ISAOさんは作曲をなさるとき、リズムパターンから考えると聞いてたんです。なので、今まではメロディーやコード感から考えてたんですが、今回はリズムを意識して作った曲もあるんですね。

その一方で、“Snatcher”や“Tyrant”などISAOさんの曲はシンフォニックなオーケストレーションにしてくださっていますし、双方が反対側にチャレンジしている曲もあるかなと思いました」