(左から)ZARY、Manami、MASUMI、Act.

DRAGON EYESをはじめ、さまざまなメタル・プロジェクトでヴォーカルを務めてきたManami。彼女が、CROSS VEINのMASUMIをギタリスト兼コンポーザーに迎え、自身が率いるプロジェクト〈Innocent Material〉を始動させた。

「自分が歌うのであればメタルチックなものが良かったし、なおかつアニメやゲームの楽曲が好きな人に作ってもらいたかったんです」。そうManamiが話しているが、彼女がサポートでライヴに参加したDRAGON GUARDIANとCROSS VEINの対バン後の打ち上げで、2人は日頃プレイしている〈メタル〉ではなく〈アニソン〉談義に花を咲かせ、距離を縮めたそう。そしてこれをきっかけに、後日PCゲームのエンディング曲を歌うことになったManamiが、MASUMIに楽曲制作をオファー。それがInnocent Material発足に繋がった。彼らはそのPCゲーム曲“My Little Stars”を収録したファーストEP『everlasting rain』(2017年)を経て、このたび初のフル・アルバム『Fragments of Memories』を、2018年10月24日(水)にリリースする。

同作は、ファーストEPに引き続き、レコーディングにはCrush40のサポートなどで活動するAct.(ドラムス)や、Tsui(ベース、ex-Galneryus)といった凄腕メンバーが集結。エレクトロニクスを効果的に散りばめたメロディック・スピードメタルのタイトル曲に、重厚なグルーヴで攻め立てるモダン・ヘヴィネスな“Falling”。また、ファンタジックな趣きのある“Remember Me”では優麗かつパワフルに、シャッフルビートが官能的な雰囲気を増幅させる“EX-tatic Trap”では甘くキュートにと、さまざまな歌声を使い分けるManamiのヴォーカリゼーションも見事! メタルに軸足を置きながらもヴァラエティー豊かな全10曲を収録している。そして、どの楽曲にもしっかりとしたキャッチーさがあることから、2人の共通項であるアニソンのファンにもリーチし得る作品に仕上がった。

今回のインタヴューでは、主にアルバムのコンセプトや制作時のエピソードについて話してもらったのだが、まずはManamiとMASUMIを結びつけた〈アニソン〉について、話を訊いてみた。

Innocent Material 『Fragments of Memories』 Walküre(2018)

 

アニソンっぽい雰囲気 × メタルの激しさ

――打ち上げでアニソンの話で盛り上がったそうですけど、どんな内容だったんですか?

MASUMI「結構酔っ払っていたので内容まではあんまり……(笑)」

Manami「そのお話をしたのは2軒目でしたからね(笑)」

MASUMI「でも、水樹奈々さんとかfripSideが、ギターが激しめなハード・ロック・テイストなアニソンのカヴァー動画をアップしているんですけど、そこにManamiちゃんの歌を乗せたらおもしろそうだね、みたいな話をしたのは覚えています」

※八木沼悟志プロデュース、南條愛乃がヴォーカルを務めるプロジェクト

Manami「あとは〈今度こういうものも弾いてみたい〉ってMASUMIさんが話していましたね。林原めぐみさんとか」

MASUMI「言ってた! あとは大黒摩季さん。『SLAM DUNK』のエンディング曲とかね」

Manami「リアルタイム世代ではないんですけど、90年代前半のアニソンも好きなのは、私たちの共通点としてありますね」

――Manamiさんがアニソンを好きになった理由というと?

Manami「幼い頃からアニメが好きだったんですが、昔は曲にまではあまり興味がなかったんです。オープニングのあいだに用事を済ませておいて、本編が始まったら観る感じ。

そこから楽曲にまで興味がいくようになったきっかけは、それこそ林原めぐみさんでした。『シャーマンキング』のオープニング曲を聴いたときに〈かっこいい!〉と思って。それが音楽を好きになったきっかけでもあったんです。

それから今まで観ていたアニメの曲も、友達からCDを借りて聴きはじめたんですが、アニソンに関しては作品ありきで好きになることが多いですね。〈この曲が好き〉〈このアーティストが好き〉というよりは、〈この作品のこの曲が好き〉ということが多いです」

林原めぐみの2002年のシングル“Northern lights”。TVアニメ「シャーマンキング」後期オープニングテーマソング

――MASUMIさんはアニソンのどんなところに惹かれますか?

MASUMI「僕ももともとアニメがすごく好きだったんですが、例えばオープニングという短い時間内で、その作品のイメージに合う曲調や歌詞の内容であったり、歌い方であったりで、そのアニメを表現しているのがアニソンのすごいところだと思っていて」

――確かに89秒で内容をきっちり伝えるという意味では、アニソンは作品にとって究極の〈名刺〉というか。

MASUMI「そうですよね。ドラマに比べてアニソンはそういう要素が強いので、好きな人とそうでない人の両極端になると思うんですけど。

ただ、『(新世紀)エヴァンゲリオン』って、内容を知らなくても曲は知っている人は多いじゃないですか? 『SLAM DUNK』とかも。それって曲として素晴らしいなと思っていて。アーティストとか関係なく、曲を聴いただけでどういうアニメなのかがわかる。アニソンのそういうところに惹かれますね」

――そんなお2人が始動させたInnocent Materialですが、今回リリースされる『Fragments of Memories』を制作される際に、構想やコンセプトはありましたか?

Manami「今回収録している“Acid ~Until the End of Time~”“EX-tatic Trap”“UTSURO”は、すでにライヴでやっていたんですよ。その曲は入れたいと思っていたんですが、その3曲はそこまでメタルな感じではないので、もうちょっとそういう方向に寄ったものがほしいというお願いを、MASUMIさんにはしました」

『Fragments of Memories』収録曲“Remember Me”

――そのオーダーを受けて、MASUMIさんが楽曲を制作されたと。

MASUMI「曲自体は、昔作ったものと新しいもの半々という感じなんですが、曲をすべて並べてみて、最終的にどういうふうにバランスを取るのかすごく考えましたね。これが1枚目になるので、それこそ名刺になるようなもの。道しるべというか、この作品がInnocent Materialのスタート地点になればいいなと思っていました」

Manami「あとは、EPの印象を持っている方もいらっしゃると思うので、そこは崩したくなかったんです。だから、EPでのアニメチックな雰囲気も残しつつ、プラスもうちょっとメタルっぽい激しいものをというイメージがありました」

――その〈アニメチック〉というのは、アニソンが好きなお2人によるInnocent Materialにとって重要な要素なんでしょうか?

Manami「いわゆるアニソンみたいなものを作りたいわけではないんですが、日本のメタルって、歌のメロディーが日本の歌謡曲的な感じがあったりするじゃないですか。アニソンにもそういう部分が共通点としてあると思うんですけど、ああいった日本らしさを出したいなと思っていたんですよね。MASUMIさんが作る曲は、まさにそういう感じの歌メロですし。だから、アニソンが好きな人にも聴いてもらいたいし、日本のメタルが好きな人にも聴いてもらいたいという、欲張りな思いからこのバランスになりました」

『Fragments of Memories』トレーラー

――収録曲はヴァラエティー豊かでどれも個性的ですが、その中で“Fragments of Memories”をタイトル曲にした理由というと?

Manami「“Fragments of Memories”をタイトルトラックにしたのは、速くてメロスピ的というところもあるんですけど、アルバムタイトルを『Fragments of Memories』にしたかったからなんです。

個人的には“眠れる森のロザリア”をタイトルトラックにするのもいいなと思ったんですよ。2曲目ですし、ジャケットでイメージしたのはこの曲だったので」

『Fragments of Memories』ジャケット

――確かに、まさにそのものといった感じですね。

Manami「でも、〈Fragments of Memories〉って、要は〈記憶の欠片〉という意味じゃないですか。1枚目のアルバムなので、この作品が聴いていただいた方の記憶の欠片として残ってもらえたらいいなという想いや、収録曲の歌詞も〈出会いと別れ〉を書いたものが多いんですが、それぞれの曲が記憶の欠片みたいなイメージもあって。そういったことをまとめて、このタイトルに決めたところもありました」

『Fragments of Memories』収録曲“Fragments of Memories”