メロディックスピードメタルと90年代J-POPの要素を融合させたような音楽性を持つTEARS OF TRAGEDYが、ライブ作品『TRINITY & OVERTURE 15th Anniversary Special』をリリースする。これは『TRINITY』(2020年)と『&』(2022年)の発売後としては初の有観客ライブとなった2022年8月22日の東京・新宿BLAZE公演と結成15周年を記念して神奈川・川崎CLUB CITTA’で行われたイベントの模様を収録したもので、3枚組CDおよびBlu-rayのフォーマットでの作品化だ。
近年、彼らのステージに対する評価が高まっていることもあり、その意味でも絶好のタイミングと言えるが、まだそのパフォーマンスを体験したことのない人たちの期待に応えるものでもあるだろう。本作の制作舞台裏などを、TORU(ギター)、HAYATO(キーボード)、HARUKA(ボーカル)に訊いた。
歓声の代わりに拍手や目力で伝わってきた観客の熱
――まず、今回の『TRINITY & OVERTURE 15th Anniversary Special』というCDとBlu-rayで発表されるライブ作品を制作することになった背景から教えてください。
TORU「元々、単体でBLAZEのほうだけをリリースするつもりだったんですけど、色々な事情がありまして、なかなかそっちが進められなくて。そのまま時が流れてしまい、去年の9月か10月頃にようやく進められそうになったんですけど、そのときにはもう15周年のライブが迫っていたんですよ。
それはそれで撮りたいと思っていたんですけど、ワンマンではないので、演奏するのは10曲ぐらいだろうし、いっそのこと2つのライブを一緒のパッケージにしてもいいんじゃないかなと。だから、結果的に15周年記念盤みたいな感じになりましたね」
――なるほど。CDとBlu-rayをどちらも制作したのは、当初からの考えだったんですか?
TORU「いや、最初は映像だけのつもりでした。でも、音をまとめていくうちに、音だけでも良いものになるんじゃないかなと思ったんですよ。あとは本編が完全にノーカットなので、めちゃくちゃ長いんですね。BLAZEだけで3時間弱ありますし、CITTA’のほうも1時間ある。だから、一気に観ようとすると4時間ぐらいかかるんですよ。だから、CDではMCをカットして構成することもアイディアとして出てきたんですね」
――映像にはMCもしっかりと入っているんですね。
TORU「そうです。カットしたところがないぐらい」
――まさにコロナ禍への対応策として、バンドとしては、2021年1月に無観客ライブの配信をしたことがありましたが、このBLAZE公演は有観客とはいえ、歓声がないという特殊な状況で行われたものでしたよね。
HAYATO「ライブ自体がめちゃくちゃ久しぶりでしたから、〈感覚を取り戻さなきゃ〉みたいな想いもありましたけど、こんなに人がいるのに歓声がないのは、確かにちょっと不気味だなって感じたときもありましたね(笑)。MCで〈声が漏れちゃったら、いいんだよ〉と言ってみたんですけど、みんな守ってくれて。
ただ、それでも熱気が伝わってきたんですよね。たとえば、1曲目が終わった後に長い拍手があったり。その辺はHARUKAさんが一番先頭で見ていたんじゃないですか?」
HARUKA「たぶん、お客さんたちも声が出せないもどかしさを、手拍子や拍手、より強い目力とか(笑)、いつもと違ったところで表現してくれたけど、歓声がないことで、普段のライブより寂しいとは特に感じなかったのが、正直なところです」
TORU「どんな感じかな?って思いながら久しぶりのライブを迎えて、声出しがないのはもちろんですけど、ほとんどの人がマスクをしていて、顔が半分見えない状況だったんですよね。
とはいえ、声が出せないぶん、たとえば拍手にしても、いつもとはちょっと違った、バンドに対しての想いや熱があるような拍手に感じられましたし。その意味では遜色がないというか、いつも通りといえば、いつも通りだったかもしれないですね」