(左から)HAYATO、HARUKA、TORU

J-POPとメロディックスピードメタルを融合させたような個性的な音楽性を持つTEARS OF TRAGEDYが、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとなる『Wonder Arts』をリリースした。名作の誉れ高い前作『TRINITY』(2020年)とはまた異なる感触を抱かせつつ、TEARSならではのスタイルに帰結する完成度の高さには、誰しも驚かされるはずだ。TORU(ギター)、HAYATO(キーボード)、HARUKA(ボーカル)は本作の制作において、どのようなことを思い巡らせていたのか。各曲について詳しく語ってもらった。

TEARS OF TRAGEDY 『Wonder Arts』 Walküre(2024)

 

速く激しい曲と〈赤〉のイメージを打ち出した『Wonder Arts』

――『Wonder Arts』の制作に向けて、どんなことを考えていたのでしょう?

HAYATO「激しめでいこうという話はあったんです。TORUさんと言ってたのは、原点回帰しようということ。確かにそういう曲は多めにはなったんですけど、結果、それだけになっていない。俺はバラードから作ってましたし(笑)」

TORU「前作の時にHAYAちゃんから、〈久しぶりに速い曲を書いてもいいんじゃないの〉と言われたんですよ。以前も書いてなかったことはないんですけど、曲の傾向的にということですね。それでできた“時に鏡は嘘をつく”をきっかけに、速くて難しい曲を作るのも楽しいなって思うようになったんです。

でも、コロナ禍もあってライブができない状況が続く中でアコースティックアルバム(2022年作『&』)を出して。その反動というわけでもないですが、その後に“Epitaph”(2022年9月配信)ができたという第2段階があって。“Epitaph”を作ったら楽しくて、その勢いのまま、こういう曲をもっと作ってみようと。だから、今回の作曲期間の最初の頃は、〈速い、難しい〉という曲が多かった気がしますね」

――最初に手掛けた曲はどれだったんですか?

TORU「最も古いのは“The Sweet Scent of a Woman”で、それが2022年10月中旬。それから3ヶ月ほどで自分が原曲を作ったものはほとんど書いてますね。

ただ、その後、2023年8月に“SONIC DRIVE!”を作ったんです。激しい曲は曲単位で見たらいいと思うけど、複数あると互いによさを打ち消すこともあるし、バランス的に違う系統の曲もあった方がいいと思う、というHARUKAの意見があって」

HARUKA「最初にまとめて送られてきたデモを聴いたときに、クラシカル要素が強めで、“rosé”とか“Mörder”みたいな曲が多い気がしたので、もうちょっとTEARSらしい明るいロック、爽やかな曲があってもいいんじゃない?って言ってリクエストしてできたのが“SONIC DRIVE!”でした。

アルバムって一つの作品なので、全曲聴いてほしいじゃないですか。アートワークやアーティスト写真も、今回は5枚目のアルバムということで、いつもと違う雰囲気にしたいなと思ってたんですね」

――ビジュアルの構想はどの時点で固まったんですか?

HARUKA「今までのテーマカラーは青でしたけど、青の逆というと赤ですし、個人的に一番好きな色も赤なんですね。なので、赤に関係するものがいいなとは思って。どんなアートワークにしようかと考えるとき、アート作品を見たりするんですよ。今回はパッと目に入ってきたのも赤い絵が多かったんです」

――TEARSはビジュアル的にいろんな見せ方をしてきましたよね。シリアスなものは当然として、たとえば狭山のお茶畑で写真を撮ってみたり。ただ、今回のアーティスト写真は衝撃的でした。衣装もすべて赤でしたから。

HARUKA「そう感じてもらえたなら、狙い通りかも(笑)。まず見た目で〈今回は違うな〉と思ってほしかったので。先に出来上がったジャケットがガッツリ目に飛び込んでくるものだったので、アー写が負けちゃいけないなって思ったんです。白バックだと弱いかなと思って、背景も赤にしました」