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コラム

グライムス(Grimes)はなぜ日本のアニメ/ゲーム文化を偏愛する?

エヴァやAKIRAと共鳴する〈マンガ・ヒロイン〉の新作『Miss Anthropocene』

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AKIRA、ゼルダ、セーラームーン、トトロ、攻殻……幼いころから日本カルチャーを愛好

多彩な表現で知られるグライムスが日本のアニメや漫画をフィーチャーしたことは、そう驚きではない。88年カナダに生まれた彼女の本名はクレア・バウチャー。幼いころ「天空のエスカフローネ」と出会って以来、さまざまな日本カルチャーを愛好してきたことで知られる。「AKIRA」を代表作とする大友克洋を敬愛し、イラストレーターを志す時期もあったという。また、ビデオ・ゲームへの愛も強く、とくに「ゼルダの伝説 時のオカリナ」に関しては、トライフォースのタトゥーを兄弟や親戚とお揃いでいれるほど思い出深いオールタイム・ベストだと語っている。

グライムスとリヴ・ボエリーが小島秀夫のゲーム「DEATH STRANDING」について語る映像

さまざまなコンテンツに囲まれて成長したグライムスは、ヴィジュアル・アート製作も行うDIYアーティストとして頭角をあらわしていき、2012年にはサード・アルバム『Visions』によって世界中から称賛を集める存在となった。

西洋では奇抜にうつる日本のアニメ・カルチャー的表現もアートワークの特色だ。たとえば、Pitchforkの〈2010年代ベスト・ソング〉第2位に選出された同アルバム収録“Oblivion”のMVでグライムス演じる女性は「セーラームーン」や「となりのトトロ」の小柄でパワフルな主人公をイメージしたものである。

2012年作『Visions』収録曲“Oblivion”

2013年当時、The Japan Timesにて〈日本のオーディエンスと共鳴する理由〉を問われたグライムスは、以下のように語っている。

たぶん、かわいらしさの定義がある。いい言葉が見つからないけど、それらは(かわいいと同時に)パワフルで、意味深いものだから。そのコンセプトは、つねに私とつながっているし、私という人間や私がつくるアートの大きな部分を占めるものでもある。(そうしたかわいらしさの概念は)北米の人々を混乱させることもあるんだけど、日本では一般的なものなんだよね。

同記事において「攻殻機動隊」シリーズに参加した作曲家、川井憲次と菅野よう子を称賛したグライムスは「今取り組んでる作品はさらに(彼らからの)影響が強い」と語っている。それは有言実行されたと言ってよいだろう。

 

グライムス=マンガ・ヒロイン?

2015年にリリースされた4作目のアルバム『Art Angels』は、ヴィジュアル面をとってもアニメ・カルチャーの要素にあふれている。カヴァー・アートからして「エヴァンゲリオン」からのインスパイアであるし、不良少女たちが都市で暴れまわる“Kill V. Maim”のMV「AKIRA」の影響が色濃い。2018年にドロップされた“We Appreciate Power”のMVにいたっては、明確に「エヴァンゲリオン」に登場するプラグスーツやNERVのモチーフを見ることができる。

2018年のシングル“We Appreciate Power”

2010年代後半、北米ポップ・カルチャーにおいて、グライムスの日本アニメ・カルチャー的表現は彼女の作家性としてすっかり知れ渡ることとなった。「エヴァンゲリオン」をモチーフとしたルイ・ヴィトンのコレクションを衣装にしたMANIFESTOのインタビューでは、グライムスのファッション・スタイルを〈マンガ・ヒロイン〉と形容してみるのはどうか、といった問いかけがなされている。

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