わずか5秒で恋に落ちる新世代バンドから、当代きってのモンスター・バンドへ。変化を恐れず若き血を燃やしてきた4人が4枚目にして得た〈CALM〉とは……

幸福と一体感

 「バンドが4枚目のアルバム・リリースまでバンドとして活動し続けることは、決して容易いことではない。僕たちは常に、自分たち自身を見つめ直したり、〈前作よりも良い曲を作らなきゃ〉というプレッシャーのなかで楽曲制作をしてるわけだけど、〈この曲を超えられる曲はない!〉と思える新曲が完成した瞬間、5SOSのメンバーで良かったと思うんだ。『CALM』は、若い男の人生についてのアルバムなんだ。僕たちはみんな人間だから、そりゃ時には間違うこともあるし、愛する人や自分自身を傷つけることだってある。『CALM』が作れたおかげで、僕たちバンドの間にはいま大きな幸福感と一体感、そして落ち着き(calm)があって、この先何年もアルバムを作り続けられると思うよ」。

5 SECONDS OF SUMMER CALM Interscope/ユニバーサル(2020)

 こうコメントするのはファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(以下5SOS)のフロントマン、ルーク・ヘミングス。彼が語る『CALM』とは前作から2年足らずで届くことになったバンドにとって4枚目のアルバムだ。これまで2枚目のジンクスも乗り越え、3度目のチャレンジも正解にしてきた5SOS――何しろ、デビューから3作連続で全米1位を獲得した世界で唯一のバンドである――だが、成功に継ぐ成功がさらに大きなプレッシャーやメンバー間の緊張をもたらすことも少なくなかったのかもしれない。それでも結成以来の仲間となる4人は、さらなる進化を図りながらより良い関係性を模索して力強い新作を作り上げたというわけだ。『CALM』という表題は、彼らの現在の精神状態を表した〈calm〉を意味すると同時に、カラム・フッド(ベース/シンセサイザー/ヴォーカル)、アシュトン・アーウィン(ドラムス/ヴォーカル)、ルーク・ヘミングス(ヴォーカル/ギター)、マイケル・クリフォード(ギター/ヴォーカル)というメンバー4名の頭文字を繋いだワードでもある。彼らの本作に寄せる思いはこれだけでも一目瞭然ではないだろうか。

 そもそもオーストラリアはシドニー郊外のリヴァーストーンで2011年に結成された5SOS。同じ高校に通っていた3人に年長のアシュトンが加わる形で活動を始め、YouTubeでのカヴァー動画公開などSNSを基盤にファンベースを拡大するなか、当時人気絶頂だったワン・ダイレクションの面々に〈発見〉される形で一気に知名度を世界へと広げ、1Dのツアーでオープニング・アクトを経験して、キャピトルと契約するに至っている。そこからの足取りは説明するまでもないかもしれない。2014年に“She Looks So Perfect”で世界デビューするや、本国オーストラリアやニュージーランドはもちろん全英チャートでも1位を獲得。スポットライトを浴びた経緯もあって当初こそ〈バンド版ワン・ダイレクション〉という見え方が大勢を占めていたものの、リリースを重ねるなかでパンク/ラウド系のメディアでも評価を高めていき、ファースト・アルバム『5 Seconds Of Summer』はUSを含む世界中のチャートを制することになった。

 その中身を見れば、アシュトン&マイケルが共作した“She Looks So Perfect”の時点でジェイク・シンクレア(ウィーザー、フォール・アウト・ボーイ他)が制作に起用されており、他にも“Amnesia”にはグッド・シャーロットのマッデン兄弟が参加、“Kiss Me Kiss Me”はアレックス・ガスカース(オール・タイム・ロウ)の共作、そして大半のプロデュースはメンバーたちが好んできたポップ・パンク作品の多くに関与してきたジョン・フェルドマンが手掛けていて、メンバーたちの音楽的なヴィジョンがそのまま作品に具現化されていたわけだ。サウンドのアウトプットが変化こそすれ、そこは5SOSの変わらない部分と言えるのではないだろうか。

 

欠かせない4人の絆

 続く2015年の2作目『Sounds Good Feels Good』では、続投のフェルドマンを核にマイク・グリーンらも制作に関わり、アリーナ・ロック調のアレンジやエレクトロニックな意匠などを取り込んでポップ・パンクに止まらない多様なサウンドへ舵を切り、バンドとして独り立ちするどころか大きく進化した姿を早くも見せつけた。その後は初の武道館公演や〈サマソニ〉出演も含めて世界中をツアーで回った彼らだが、続く3作目『Youngblood』で4人は大きな転換点へ向かった。キックオフとなったシングル“Want You Back”でのリズム・アプローチは同時代のメインストリームなポップスやダンス・ミュージックを意識したもので、大雑把に言えばマルーン5やワンリパブリックらにも通じるポップな新境地を拓いたわけだ。続くシンセ・ポップ仕立ての表題曲“Youngblood”はデビュー以来のビッグ・チューンとなり、マイク・エリゾンドやカール・フォーク、ラミ・ヤコブらヒットメイカーを多数起用したアルバムもひと回り大きな成功をバンドに与えることになったのだった。

 今回の『CALM』はそれに続くチャレンジングな一作となる。2019年に先行したシングルのうち、チャーリー・プースが共同制作/コライトした“Easier”はルークのファルセットも印象的なニューウェイヴ色の濃いポップ・チューン。もう一曲の“Teeth”は初めてインダストリアル的な感触を採り入れた硬質なビート・ナンバーで、いずれもアンドリュー・ワットとルイス・ベルのプロデュースだ。最近だとオジー・オズボーン『Ordinary Man』を手掛けていた前者と、ポスト・マローンのブレーンとして知られる後者、いずれも旬のクリエイターとして多くのヒット作を手掛けるビッグネームだが、そもそも“Youngblood”で転機をもたらしたのもこのコンビだった。

 他にもアルバムには、ミゲルやアリアナ・グランデらを手掛けるアーバン系ヒットメイカーのネイサン・ペレス(ハッピー・ペレス)が初登板し、ラミ・ヤコブらも引き続き参加。壮大なスケール感のある“No Shame”や緩急のある展開で惹き付ける“Old Me”のようなナンバーもあり、飽きさせない作りになっている。かように、まだ20代前半ながらも時代を掴んで4枚目の力作を完成させ、世界を代表するモンスター・バンドとなった5SOS。それでも穏やかな気持ちとCALMの絆がある限り、彼らはこの先も飛躍していく姿を見せてくれるに違いない。その意味でもこの『CALM』は重要な作品なのだ。

 

ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーの作品。

 

ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーの参加作を一部紹介。

 

5SOSの歩みと『CALM』をもっと楽しむためのあれこれ!

かつて5SOSが“I Miss You”を歌ったように、世界中のキッズを夢中にさせてきた大御所の最新作。5SOSと縁深いジョン・フェルドマンが全体を指揮しているが、そのうち“I Really Wish I Hated You”は今回『CALM』を仕切るアンドリュー・ワットとネイサン・ペレスが共作している。

 

もともと2000年代末から活動していたチェリー・ボムを前身に、5SOSのレーベルでよりポップに生まれ変わった男女混合バンド。このファースト・アルバムのリリース後にメンバー脱退を経験して現在はトリオ編成ながら、次作に向けてシングルはコンスタントにリリース中だ。

 

オハイオのグラム・メタル・バンド、ブラック・ヴェール・ブライズのフロントマンによるソロ作。ジョン・フェルドマンが制作する縁から本隊の近作にもカラムとマイケルが駆けつけていたが、こちらでもアシュトンが“The Promise”を共作し、ドラム演奏にも参加している。

 

JONAS BROTHERS Happiness Begins Republic/ユニバーサル(2019)

昨年の話題となった3兄弟のリユニオン作。バンドのフォーマットに縛られないポップ・サウンドは『Youngblood』とも重なる多くの制作陣によって生まれたものだが、全米No.1ヒット“Sucker”と“Used To Be”は今回『CALM』のキーマンの一人となるルイス・ベルが手掛けていた。

 

多様なラウド勢の裏方として名を馳せて5SOSの初期2作を世界のシーンと繋いだ立役者、ジョン・フェルドマンの率いたスカ・パンク・バンドの復活作。マーク・ホッパスやTAKAら縁のある面々が参加するなか、5SOSからはルークが“Who's Laughing Now”を共作している。

 

NEW HOPE CLUB New Hope Club Virgin EMI/ユニバーサル(2020)

ヴァンプスに見い出されてブレイクを果たした英国の3人組バンドのファースト・アルバム。カヴァー動画時代には5SOSの“Girls Talk Boys”や“Amnesia”を披露していたこともあるが、アイドル性と音楽性の高いバンドという共通項以上に柔軟な姿勢の部分に近いものがあるはず。

 

ジョン・フェルドマンと並んで5SOSの躍進を支えてきたのはマイク・グリーン(オール・タイム・ロウ他)。彼が手掛けるこのフロリダ産の4人組はR&B/ヒップホップの要素を柔軟に取り込んだポップなバンド・サウンドを聴かせ、5SOSの近作とも遠からずな音楽性が楽しめる。

 

WATERPARKS Fandom Hopeless/KICK ROCK INVASION(2019)

ポスト・フォール・アウト・ボーイの座を狙う注目株で、そもそもはグッド・シャーロットのベンジーとコートニー・バラード(5SOS、オール・タイム・ロウ他)に後見される形で世に出たヒューストン産バンド。ダンサブルで楽しいパーティー・ロックは5SOSファンにもオススメ。

 

ALL TIME LOW Wake Up, Sunshine Fueled By Ramen/ワーナー(2020)

キャリア初期には“Jasey Rae”をカヴァーするなど、5SOSが敬愛してきたポップ・パンクの重鎮バンド。フロントマンのアレックスが5SOS作品にソングライターとして参加したこともあったが、奇しくも『CALM』と時を同じくして登場したこちらの新作にももちろん注目だ。