いわゆるワン・ダイレクション以降のボーイズ・センセーションが完全に定着したことに伴い、2014年はファイヴ・セカンズ・オブ・サマーやリクストンのように楽器を持ってロック・バンド形態を採るグループの台頭が目立ってきたと感じている人も多いことでしょう(日本ではI Don't Like Mondays.が登場しましたね)。そうしたバンドの流れは本誌でも以前お伝えした通りで、特に今年のホープと言えるのが、ファースト・アルバム『Meet The Vamps』を大ヒットさせたヴァンプスでした。彼らもソングライティングや演奏能力とアイドル性の高さを兼ね備えた存在ですが、少し年季の入ったリスナーならそうした面々の先駆けとしてバステッドやマクフライの名を挙げるに違いありません。
2001年にジェイムズ・ボーン(ヴォーカル/ギター/ピアノ)とマット・ウィリス(ヴォーカル/ベース)が出会い、メンバー募集でチャーリー・シンプソン(ドラムス)を加えてデビューしたバステッドは、親しみやすいポップ・パンク調のサウンドとルックスですぐ人気者となり、2003年の大名曲“You Said No”を皮切りに全英No.1ヒットを連発。ウェンブリー公演も成功させてUS進出へ踏み出す直前、チャーリーの脱退表明に伴って2005年に解散……という、凄まじい瞬間最大風速を誇ったUKの国民的バンドだったのです。解散後は個々に新バンドやソロで活動しつつ、ジェイムズはソングライターとして5SOSやピクシー・ロット、サタデイズらに楽曲を提供してきました。
一方、そのバステッドのオーディション落選後に同じ事務所に入ったトム・フレッチャー(ヴォーカル/ギター/ピアノ)がダニー・ジョーンズ(ヴォーカル/ギター)と意気投合して結成されたのがマクフライ。ダギー・ポインター(ヴォーカル/ベース)とハリー・ジャッド(ドラムス)を加えたバンドは、バステッドのジェイムズと共作した翌年のデビュー曲“5 Colours In Her Hair”(後にヴァンプスがカヴァー)で全英1位を獲得。ビートルズから初アルバムの最年少No.1記録を奪って以降、10年以上も破竹の進撃を続けてきました。アルバムはご無沙汰ながら、1Dをプロデュースしたり、5SOSやヴァンプスに曲を書いたり、昨今のボーイズ・ロック界隈にとっても大きな影響源なのです。
で、前置きが長すぎですが……そんな両バンドが合体したのがマクバステッド。昨年のマクフライ10周年記念ライヴにジェイムズ&マットが飛び入りしたことから結成されたこの6人組(チャーリーは不参加)は、6万人を集めたハイド・パークをピークに35公演を敢行。そして、ツアーの間に進められていた曲作りの成果が、今回の『McBusted』に結実したというわけです。
事前に〈期待値が高いから、新曲を出すとしたら、それが超イイ場合を除いてありえない〉と宣言していた通り、トムのペンによる先行シングルの“Air Guitar”を筆頭に、それぞれが制作に貢献して出来上がったナンバーはどれも超キャッチー! 屈託なく1Dライクなシンガロング系の“Get Over It”から得意のメロディックなパンクまでエネルギッシュな大合唱ポップがドカドカ連発されます。マーク・ホッパス(ブリンク182)を“Hate Your Guts”に招き、リヴァース・クオモ(ウィーザー)とド直球のパワー・ポップ“Getting It Out”を共作するなど憧れの存在ともちゃっかりコラボ。実力も楽しさも男ぶりも段違いなのはアルバムを聴けばスグわかるはずです、マジで!
▼関連作品
左から、ヴァンプスの2014年作『Meet The Vamps』(Virgin EMI)、ファイヴ・セカンド・オブ・サマーの2014年作『5 Seconds Of Summer』(Capitol)、ワン・ダイレクションの2013年作『Midnight Memories』(Syco)
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