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インタビュー

イェジ(Yaeji)ってどんな人? 盟友YonYonが語る、韓国と世界を繋ぐDJの生き方

イェジ『WHAT WE DREW 우리가 그려왔던』

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YonYonが“SPELL 주문”に込めた現代日本への警鐘

――そのなかで、YonYonさんは友達の一人として本作に参加しているわけですけど、“SPELL 주문”という曲を一緒にやるまでにどんな経緯があったんでしょう?

「最初はまず、私の〈The Link〉プロジェクトにイェジちゃんを誘ったんです。去年の夏にその話をしたら、〈今回は参加できないけど、いつか私の曲にYonYonちゃんに歌ってもらいたいと思ってるから待っててね〉と言われて。それでしばらくしたら、去年の秋頃に本当に連絡がきたんです。〈YonYonちゃんに似合うトラックができたから一緒にやらない? YonYonちゃんが歌ってる、あの曲のあの感じが絶対に合うと思うから〉って。

そのときはアルバムの収録曲とは言われてなくて、デモの時点で(トラックは完成刑と)ほとんど変わらない感じだったんですけど、最初に聴いたとき、すごくいま風で新鮮だなと思いました。当時、DJ界隈ではBPM130を超えるテンポの早いハウス・ミュージックが流行っていて、“SPELL 주문”もBPMが130になるんです。これはぜひやらせてくださいって」

――〈あの曲のあの感じ〉というのは、どの曲のことですか?

「“Period”(2018年)という向井太一くんと一緒にやらせてもらった曲で、そこでの優しい感じのラップがいいな―って言われました」

YonYonと向井太一との共作曲“Period”
 

――“SPELL 주문”では、どんなことをラップしようと考えました?

「これに関しては、実は最初にイェジちゃんから注文があって。この曲のトラックを作ったときに、浮かんだ彼女のアイデアをまず共有してくれたんです。それはアルバム全体にも繋がる話なんですけど、〈自分がライブしているときって、お客さんの前で、自分の日記帳をおまじないのように唱えてるみたいなんだよね。その感じを歌詞にできたらいいな〉と言われて。それについては、私も共感するものがあった。

歌詞はあるとき一瞬で思いつくものだけど、その一瞬を迎えるまでに自分が歩んできた人生のすべてが歌詞に反映されるわけじゃないですか。私も普段、歌詞を書くときのために、何か印象的な出来事があった日には、具体的にどういうことがあってどういう感情を感じたのか、iPhoneのメモ帳に書き留めるんですけど、それってある意味、日記に近いところがある。彼女はたぶん、それを言葉にしたかったんだと思う」

『WHAT WE DREW 우리가 그려왔던』収録曲“SPELL 주문”
 

――なるほど。YonYonさんのリリックは、いまの社会について思うことから出てきた言葉なのかなと勝手に想像してました。

「普段から日記やメモ帳に書き留めてる言葉をもとに、いま私がライブするならこういうことを伝えるだろうなとイメージして書きました。この曲の歌詞は2種類の視点があるんですよ。まずイントロの部分では日記を書くまでの経緯、ライブ会場に向かうまでの心境を描いていて、ヴァースのラップの部分では私が日記に記していた、いま伝えたいことをそのまま表現してるんです。イェジちゃんの注文も上手く取り入れつつ、自我も出したかったので。アウトロの韓国語の部分は、ライブをしているその〈瞬間〉。オーディエンスと時を共有するということを描写しています」

――〈そもそも歪んだ価値観 確かめる夜/みんな閉じ込められてること そもそも気づいてない/ひとりの小さな一歩で 誰かの大きな道を 照らすことできるなら 真実を伝え続ける〉というヴァースの言葉がどこから出てきたのか、教えてもらえますか?

「いままでは何気なくニュースを見ていて、そこで伝えられたことをそのまま鵜呑みにしてたんですけど、新しく出会った友達の影響もあって、いろいろ掘れば掘るほど〈メディアの情報ってめっちゃ偏ってるじゃん、でも誰も気づいてない!〉と思うようになったんです。もしかしたら、そのことを気づかせるのが自分の役割じゃないかと考えはじめたときに、そういう言葉が出てきたんだと思います。

目の前のことにいっぱいいっぱいになってしまいがちだけど、もっと大きな視点で物事を見ていかないといけないなと思って。生きていくうえで本当に大事なものとは何か。大事なものを守る為には、どういう行動をしていくべきなのか。真剣に考えるようになったんです」

――この日本語でのラップが世界にどう届くのかも興味深いし、日本に住む人々にとってもしっくりくる言葉だと思います。

「特にいまがそうかもしれないですね。この時期にこの曲が世に出たことには何か意味があるのかもしれない」

 

イェジとYonYonの未来

――この『WHAT WE DREW 우리가 그려왔던 』を出したあと、イェジさんはこれからどうなっていくんでしょうね。

「XLという名門レーベルからのリリースって相当凄いことですよね、よりオフィシャルな形で世界に認められたってことじゃないですか。だからきっと、彼女はこれまで以上に忙しくなるだろうし、大変になってくると思う。だけど、さっきも言ったように、彼女のなかにしっかり芯があるので全然心配してないです。むしろ、(存在感が)大きくなればなるほど、彼女が伝えたい家族や友達の大切さというのが、よりたくさんの人に響くわけですから。イェジちゃんは自分の役割を全うすると思います」

――その一方で、YonYonさんはどんな活動をしていきたいですか?

「私はこれまでずっと〈BRIDGE〉――架け橋のような人生を歩んできたんですよ。生まれは韓国、育ちは日本という時点でトリッキーというか。DJとしても、最近は韓国で活動していたときとだいぶ選曲の雰囲気が違ってきていますけど、アンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドを繋ぎたいと常に思っているし、シンガーとしても日韓のみならずアジアを繋いでいきたい。さらに、裏方としてイベントの企画・制作もやりながら、何かひとつに特化するというより、そのときに必要なやり方で、人々と音楽を繋いでいきたいです。その気持ちはたぶん、ずっと変わらないんじゃないかな」

――では最後に、この記事を読んで、もっと韓国の音楽を聴いてみたいと思った人にオススメを教えてもらえますか。

Honey Badger Recordsかな。ソウルとロンドンを拠点に活動するJNSというDJ兼プロデューサーのお兄さんがやってる超クールなエレクトロニック・ミュ―ジックのレーベルで、まだ知られていない新鋭アーティストをピックアップし、韓国のアンダーグラウンド・シーンに発信しているレーベルなんです。私と同世代のプロデューサーの子たちが主に参加していて、どれもカッコイイし、ここからリリースしたアーティストたちが、ワールドワイドに羽ばたいていったりしています。テクノがメインですけど、ノイズ系もあったりでおもしろいんですよ。日本でも最近ディスク・ユニオンなどでコンピLPを買えるようになっています。ぜひチェックしてほしいです」

Honey Badger Recordsが2020年にリリースしたコンピレーション『HBRTRX Vol​.​3』
 

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