(左から)堀込高樹、千ヶ崎学

KIRINJIの勢いが止まらない。約1年半の短いスパンで、通算14枚目のニュー・アルバム『cherish』がリリースされる。弓木英梨乃がリード・ヴォーカルを務めたシングル“killer tune kills me”で〈ひらめきは刹那 かがやきは永遠〉と歌っているように、アルバム全9曲は同時代の音楽から〈ひらめき〉を得ながら、ゲスト参加したYonYonと鎮座DOPENESSのラップも交え、シリアス〜コミカル〜セクシャルと横断しつつ、このバンドにしか作れないポップスの〈かがやき〉を手にしている。

前作『愛をあるだけ、すべて』(2018年)のインタヴューでも、今日のポップ・ミュージックへの好奇心を語っていた堀込高樹。半年前に50歳を迎えながら、〈昨日よりも若く〉を体現している彼の音楽観と詞世界はどのようにアップデートされたのか。ベーシストの千ヶ崎学と共に語ってくれた。

KIRINJI cherish ユニバーサル(2019)

 

堀込家に鎮座DOPENESSがやってきた

――高樹さんとは昨年、〈フジロック〉の会場でバッタリお会いしましたよね。息子さんがケンドリック・ラマーを観たいからと。

堀込高樹(ヴォーカル/ギター)「ケンドリック・ラマーもそうですし、ファレルとアンダーソン・パークも来ましたよね。ただ、3組どれも(出演日が)バラバラだった。3日間行くのは無理だから〈1日だけならいいよ、どこがいい?〉って訊いたら、〈ケンドリック・ラマーにする〉って言うので連れていきました」

――ヒップホップづいてるのは、ご長男?

堀込「そうです。今はどうなのかわからないですけど」

――ここへ来る前にインスタを覗いたら、次男が描かれた絵日記がアップされてましたね。〈今日うちにラッパーが来ました〉って(取材は10月30日に実施)。

千ヶ崎学(ベース)「あれ最高ですよね(笑)」

――堀込家はヒップホップ大好きファミリーになりつつある?

堀込「いえ、次男はよくわかってないはずです。彼はシャ乱Qが好きみたいで。友だちのお母さんとカラオケに行ったらしくて、“ズルい女”が大好き。あと『北斗の拳』のテーマ。〈YouはShock〉(クリスタルキング“愛をとりもどせ!!”)が好きらしい」

千ヶ崎「古い!」

堀込「今ってほら、YouTubeやAmazonプライムで昔の映像が見れるから」

――まあ、いきなり家に鎮座DOPENESSさんが来たらビックリしますよね(笑)。ご自宅のスタジオで録音されたんですよね。

堀込「下の子(次男)はよくわかってないけど印象的だったんでしょうね。あの絵は写真を見ながら描いたわけじゃないから。よっぽどインパクトがあったのか、〈今日すごい人が来た!〉って書いていました(笑)。上の子(長男)はヒップホップとか好きだから興奮していましたね。いつになく〈やべー、やべー!〉と連呼して(笑)」

 

エロい歌詞はイマジネーションが貧困な人が陥りがち?

――どうやって共演することになったんですか?

堀込「鎮座くんのことはもちろん、前から知ってました。あの本物感はなかなか他にいない。声とか、発音の仕方とか。だから何かやってもらいたかったのですが、ヒップホップに寄り切ってるイメージもあって、躊躇していたんです。

でも、環ROYさんやU-zhaanさんとやってる時みたいにユーモラスな感じもあるし、最近始めたFNCY(ZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESSによるユニット)は上手く言えないけど……80年代のブラコンっぽい感じ。しかも歌っている。別にヒップホップ一辺倒ってわけじゃないんだなと。であれば、KIRINJIでお願いしてもやってもらえるのかなと思って。

その矢先に“Almond Eyes”のデモが出来て、この曲だったらカッコ良くなりそうだとお願いしてみました」

――鎮座DOPENESSさんが参加した“Almond Eyes”はエッチな曲ですね。歌詞もそうだし、ベースもエロい。

千ヶ崎「ありがとうございます(笑)」

――演奏するうえで〈エロさ〉は意識しました?

千ヶ崎「そうですね。鎮座さんの声がいいから……」

『cherish』収録曲“Almond Eyes  feat. 鎮座DOPENESS”

――高樹さんはサビで〈Can’t you feel me? 身体中の血が集まってきてる〉と歌ってますが、これはどういう意味ですか?

堀込「それはまあ、身に覚えがある人はわかると思いますが(苦笑)。そういう方向にしか行きづらい曲調っていうか……よくないなとも思うんですよ。

エロい歌詞って、イマジネーションが貧困な人が一番陥りがちなものとも言える。他のアイデアが浮かばないとそっちに流れちゃう。だから、安易にそういう方向にいかないようには心がけてるんですけど……」

千ヶ崎「心がけてるわりには、割と……(笑)」

堀込「この曲もはじめはトロ・イ・モアみたいにクールなファンク、ニューウェイヴ感を感じられるようなものを作っていたのですが、だんだん人間っぽくなって。そうしたら、セクシャリティーから逃れられなくなって、こうなりました」

――またバタフライ・エフェクトの話をしてますよね。いつぞやに続いて。

堀込「それは鎮座くんが盛り込んできました(笑)」