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音楽を仕事にするということ

日置「辻さんがLFRをやってることには大きい意味があると思うんです。現役でバンドをやって、第一線で活躍して、自分のレコード屋で好きな音楽を紹介して――すごいし、かっこいいなって思ってます。

どんなに知識やスキルがあっても結局、繋がりがなかったら仕事ってできないじゃないですか。僕はいまレコーディング・エンジニアをやってるんです。そもそものきっかけは自分で音源を録るようになって、友だちの録音の手伝いもやるようになったことでした。それで、いつも使ってたスタジオの部屋が空いたとき、一部屋貸してもらえるようになったんです。

最近は、〈プリプロを手伝ってほしい〉って気軽に言ってくれる友だちもいれば、僕らのバンドを知ってくれててお願いしてくれる人もいて。バンドをやってなかったらこの繋がりも絶対なかったんですよね。そういう意味で、自分の生活や心を豊かにしてくれるから、ずっと続けたいと思ってるんです」

「その若さでそんな繋がりを持ててるのは、うらやましい(笑)」

日置「辻さんはそもそも、どういう経緯でLFRを立ち上げたんですか?」

「僕は音楽に目覚めるのが遅くて、大学生になって完全にハマったから、それがすごいコンプレックスだったの。それからずっと名古屋でSS(Stiff Slack)に通って、ディグってたのが店を始めるきっかけだった。

音楽に詳しい人なんて周りにいっぱいいるから、レコード屋をやるってハードルが高いなとは思いつつ、〈でもなにかできそう〉〈やったらおもしろいことになるんじゃないかな?〉って思って。

あとはもう、ノリだね、全部(笑)。たまたまここが空いて、開店資金すらなかったけど〈借ります!〉って言って。お金を払う1週間前にまだ審査が降りてない、みたいな感じだったし(笑)」

※Stiff Slackは名古屋・栄にあったレコード・ショップ。2020年に清水に拡大移転し、イベント・スペースも併設。ポスト・ロックやエレクトロニカ、エモなどを中心に扱い、レーベルも運営している

日置「あはは(笑)」

「でも一回そういうのを経験してると、ちょっと余裕ができる。怖いものがないっていうか、なにがあってもなんとでもなるかなって。だからやれてるのかも」

日置「僕もエンジニアを始めるときにめっちゃお金を貯めて、サウンドハウス(楽器や機材の通販サイト)で見たことのない金額のカートをポチりました(笑)。

でも全部、自分にとってすごくプラスになってるんですよね。エンジニアをやると絶対的に耳もよくなるし、客観的な判断もできるようになる。エンジニアをしながら〈このバンドのよさってなんだろう?〉って考えることが、自分の音楽を作ることにおいてもすごくプラスにはたらいてる」

EASTOKLABの新しい音源(『Fake Planets』)を聴かせてもらったけど、音作りとかに相当こだわってるのがめちゃくちゃわかる。あの音像を作るって、なかなか難しいと思うからさ」

EASTOKLABが2020年6月3日(水)にリリースする『Fake Planets』収録曲“Contrail”

日置「でも僕ら、そんなにこだわってないんです。〈こだわってない〉っていうか、めっちゃ直感的な判断しかしてなくて。体感的に気持ちよかったら、もうそれでOK。

〈自分たちはこうだ〉っていうのが、前のアルバム(2019年作『EASTOKLAB』)を作ったときに見えたので、けっこうすんなりいくんですよね」

「へー! それはいいことやね」