年末の恒例になっているOGRE YOU ASSHOLEによるワンマンライブが、2022年も行われた。昨年の〈OGRE YOU ASSHOLE LIVE 2022 TOKYO / KYOTO〉は、12月11日に京都の磔磔で、12月17日に東京・恵比寿のLIQUIDROOMで開催。東京公演では、2セットを演奏した出戸学(ギター/ボーカル)、馬渕啓(ギター)、清水隆史(ベース)、勝浦隆嗣(ドラムス)の4人。新曲の披露もあり、〈次〉に向かいつつあるオウガのセカンドセットの様子を松永良平(リズム&ペンシル)が伝える。 *Mikiki編集部


 

次に向かうための実験と地固めの3年

12月の恵比寿LIQUIDROOM。OGRE YOU ASSHOLEのワンマンが定例となってもう何年なんだろう? ぼくがレポートを書くようになってからはもう4年。最初の年(2019年)はまだコロナ禍の前だった。オウガの演奏が終わって幕が降りたのに、悪魔の沼によるDJとのつながりがあまりにシームレスで、アンコールを求める拍手が何分も続いていた。あれは執拗にアンコールを求めるあきらめの悪さとかではなく、フロアを埋めた全員が現実と夢の境目を見失ったような体験だったのかもしれないと、今でも思い返す。

新型コロナウイルスが世界を覆ったのは、あれから3ヶ月もしないうちだった。

あれからまる3年が経ち、さまざまな制限があったとはいえ、12月のリキッドでオウガはライブを続けてきた。2019年9月にリリースされた『新しい人』に続くアルバムは、まだ出ていない。だが、アルバム収録曲“朝”がコロナ禍の不穏と不安のなかでどんどんモンスター的な長尺曲に進化していったように、誰もが停滞を感じずにはいられなかったこの長い時間は、彼らにとってはマイナスばかりではなかったと感じる。表に出る機会が限られたことが、それだけの緊張感をバンドに与えた。結果、それぞれのライブが次のオウガに向かうための実験と地固めの時間になった。

 

〈進行中〉の新曲、開放/解放のグルーヴを響かせた“見えないルール”

そう感じたのは、この日の2回公演のセカンドセットでの彼らから放たれた音の強さだった。1曲目は新曲。闇のなかから聴こえてきたハンマービートはステディーで推進力がある。だが、曲を構成している要素はまだ流動的に思える。未完成というより進行中。英語で言う〈Work in progress〉に近い感覚で、次のバンドのかたちがどうなるのかを彼ら自身も決めてしまわずに放出しているよう。続いて“ムダがないって素晴らしい”に曲が切り替わっていく時点で手元の時計を確認したら、〈新曲〉という名の演奏は10分以上を優に超えていた。

スタジオでのセッションをそのまま見せている、というのとも違う。なぜならこの日のセカンドセットでは、最初からフロアの反応もとても敏感だったからだ。〈おなじみの曲〉の〈あのクライマックス〉という要素をすべて取り払ったような新曲を、観客たちはまるでこれこそを待ち望んでいたように浴びて揺れて小刻みに体を震わせていた。その反応も含めて、ハコ全体がふつふつと熱を帯びていくのがわかった。

あるいは、あの新曲はそのあとノンストップで続いた演奏へのイントロダクションのような役割を果たしていたのかもしれない。“ムダがないって素晴らしい”“素敵な予感(Album Ver.)”“フェンスのある家”と曲は続き、はっきりしたブレイクがなく、拍手が入るこむ隙間もない。

もっと衝撃的だったのは、よりテクノ的な律動と興奮をさらにまとい、また進化した“朝”からの“見えないルール”で見た光景だった。清水隆史がシンセベースにまわり、グルーヴの方向を明確に〈縦〉に変化させた前半で長時間の溜めを作ってゆく。後半エレクトリックベースに持ち替えたのを合図にオリジナルのグルーヴが鳴り響いたその瞬間の観客の興奮はすさまじかった。あれは開放であり、解放でもあった。