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自分が満足したいという欲求

 以上、3つのポイントを踏まえてプレイボタンを押そう。短いインスト“おばけ”をイントロ代わりに、実質的な1曲目“化けよ”から、新感覚のドミコがいきなり顔を出す。サイケデリックに揺れるエフェクティヴなギター、重いベース、そしてダブステップにも通じる特徴的なリズム・パターン。歌は前半だけで、後半は怒涛のリフ合戦からジャム・セッションに突入する展開。すべてがかっこいい。

 「“化けよ”ではポスト・ロックをやりたかったんですよ。ポスト・ロックは避けてたというか、ドミコがやんなくてもいいだろうと思ってたけど、もともといっぱい聴いてたし、いまやったらどういうふうに映るんだろう?と思ったんで。結局、変更変更を重ねて、トラックっぽい感じで、ビートに力を入れた感じになったけど、どこまで許容範囲を広げられるか?という挑戦でしたね。ちょっとした驚きを与えるなら、こういうことかなと思ったし、わかりやすい曲ではないけど、変化を見せる意味ではわかりやすいんじゃないかな」。

 わかりやすいと言えば、6曲目“さなぎのそと”。誰もが知る有名な“Marquee Moon”のギター・リフをちょいと拝借した、適当にルーズでほんのりファンキーなミッド・チューン。〈オマージュはやらない〉と公言してきたさかした、これはテレヴィジョンへのオマージュでは?

 「オマージュして同じ雰囲気の曲を作ってもつまんないけど、そうじゃなくて、DJのミックスみたいに、逆に〈元の曲はこれなんだ〉と思ってもらうとか、そういう楽しませ方はいいと思うんですよ。〈ここでこれ来る?〉みたいな、クスッとさせる感じを一回やってみたくて、そっちのほうがオツだなと思ったんで、やってみました。クスッとさせたくて、誰でもわかるようなフレーズにしたんですよ。“Marquee Moon”がめっちゃ好き、がいちばんじゃなくて、クスッとさせたいがいちばんにある。逆に、引用するために原曲を聴き直しましたもん。ドラムどうなってたっけ?って確かめて、あえてそっちに寄せたりとか。4曲目“噛むほど苦い”の、エアロスミスっぽいリフも、そういう感じです」。

 今作の4つめのポイントとして、〈クスッっとさせる〉を付け加えよう。初リリースから5年以上、積み重ねてきたキャリアと知識、センスが生んだ新境地。攻めと余裕を両立させた、ここがドミコの最前線。

 「今回そういうところで、ちょっと笑わせたいなと思ったんですよね。いままでは自分にそういう余裕がなかったから、〈これ、かっこよくね?〉と思ったら、すぐにビートも付けて、〈出来たよ、聴いて〉っていう感じで、サウンドはどんどんダイナミックになっていったけど、宅録でやってた頃のノリが、ずっと続いてたのかもしれない。〈曲が出来たから今夜Bandcampに上げます!〉みたいなノリだったのかな、いま思うと。でもいまは、作り込んで作り込んで、しっかり自分が満足したいという欲求がすごく強くなったんで」。