2. Travis Scott “The Plan (From The Motion Picture “TENET”)”
田中「そして、2位はトラヴィス・スコットの新曲“The Plan“。クリストファー・ノーラン監督の新作映画『TENET テネット』に提供した楽曲とのことで、大きな話題になっていますね。本当は先週取り上げたいと思っていたんですが、配信のスタートが日本時間で夜だったこともあり、泣く泣く断念した曲でもあります。といっても天野くんとしては、いざ聴いてみたら〈かなり微妙〉だったようで……。あんなに楽しみにしていて、なんなら前回の1位を〈この曲にするかも〉と掲載直前まで空けていたのに!」
天野「うーん……(苦笑)。ぶよぶよ鳴っているベースの響きとか、もったいぶっているけどたいして盛り上がらない展開とか、いかにも〈ブロックバスター映画のエンディング・ソングです!〉って感じで。あんまりトラヴィスの個性やクリエイティヴィティーが活かされていないし、〈そもそもこれ、ノーランの映画に合う?〉と思いました。こういう企画ものって、あんまりいい曲ないですよね(笑)。現代アメリカのエンターテインメントの弱点です。Pitchforkも酷評していました」
田中「なるほど~。僕はかっこいい曲だと思いましたけどね。まず、地を這うどころか地中に潜っていくような重たいサブベースが強烈。オートチューンを使ったヴォーカルには不穏さが漂っていて、まるでバッド・トリップに入っちゃったときみたいだなと。まだ謎の多い映画『TENET テネット』ですが、どうやら〈時間を逆行すること〉が中心的なファクターのようなので、その時空がグニャリと歪む感覚をうまくサウンドに落とし込んでいる印象です」
天野「コーラスでは〈お前はどこに立っているのかもわからない/本当さ/計画(the plan)を知るんだ〉と歌っていますしね。〈ボーイング・ジェットを着陸させるんだ〉など、映画のストーリーを反映したラインもあります」
田中「この曲のプロデューサーは、映画『ブラックパンサー』(2018年)の音楽やチャイルディッシュ・ガンビーノとの共作などで知られるルドウィグ・ゴランソン(Ludwig Göransson)と、トラヴィスとたびたび組んできたワンダーガール(WondaGurl)。ゴランソンは『TENET テネット』のスコアも手掛けています。というか、ノーランがハンス・ジマー以外の作曲家と組むのは、相当ひさしぶりなんじゃないでしょうか。スコットは『TENET テネット』について、〈観てもらわないと説明できないんだけど、とにかく素晴らしいんだ〉と言っています。映画は9月18日(金)に日本で公開予定。楽しみです」