『Carrie & Lowell』の頃までのような優しいタッチのフォーク・ロックをスフィアンに求めているそこのアナタ! その期待、どうぞ裏切られてください。さまざまなミュージシャンと共作でアルバムを出し、活動の幅を広げた彼がどんなアルバムを出すのかドキドキしていたら、蓋を開けてビックリ。そのほとんどがシンセやドラムマシーンで構成され、暗めのシンセ・ポップやクラブ・ミュージックに接近しはじめたような様相を呈する攻撃的な内容で、レディオヘッドを聴いている時に感じるダウナーさが、そこにはあった。アルバムや先行曲のコンセプトが〈崩壊しつつある世界への告発〉や〈アメリカのカルチャーが持つ病に対する抗議の歌〉であることを理解すれば〈そりゃそうもなるか……〉と、納得してしまった。