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坂本慎太郎の3枚

『Popular Songs』(2009年)
『I Am Not Afraid Of You And I Will Beat Your Ass』(1997年)
『Yo La Tengo Is Murdering The Classics』(2006年)

ヨ・ラ・テンゴは随分長い間活動しているバンドだが、フレッシュな感覚が常にある気がする。特に毎回新しい音楽スタイルに挑戦したり、流行のサウンドを取り入れたりするわけではないのに、不思議とカレッジバンドのような新鮮さを失っていない。それは彼らが本当に音楽が大好きで、心から演奏を楽しみ、それが生活に根ざしているからだと思う。2009年、ゆらゆら帝国で彼らのアメリカツアーのオープニングアクトをやった時の体験は素晴らしかった。ヨ・ラ・テンゴの演奏がよかったのはもちろん、彼らのファンや会場のムードが最高だったのだ。いかにも音楽が好きそうないい感じの大人達が集まり、それぞれが思い思いにビール片手に踊っていた。その光景は本当に平和で皆楽しそうで、なんだかおとぎ話の世界のようだった。アメリカのロック文化の奥深さを感じるとともに、その環境がちょっと羨ましかった。ヨ・ラ・テンゴのようなバンドが存在し続けてくれることがすごく嬉しいし、勇気づけられる。

2009年作『Popular Songs』収録曲“Here To Fall”

 

夏目知幸の3枚

『Summer Sun』(2003年)
『I Can Hear The Heart Beating As One』(1997年)
『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(2000年)

3人がステージに立ってる画がいい。ヨラテンゴ以外にはないシルエット。『Summer Sun』というタイトルだけれど太陽ではなく伸びる影を思い起こさせる。影絵のようなバンドかもしれない。

2003年作『Summer Sun』収録曲“Moonrock Mambo”

 

奈良美智の3枚

Photo by リョウイチ・カワジリ ©Yoshitomo Nara

『Ride The Tiger』(1986年)
『Electr-O-Pura』(1995年)
『I Can Hear The Heart Beating As One』(1997年)

『Ride The Tiger』は(当たり前だけど)初めて手にしたヨ・ラ・テンゴ。最初はいいバンドが出てきたな~っていうくらいの印象だったけど、けっこう長い間ヘビーローテーションすることになって、彼らを本気で好きになっていくことになったアルバム。あとの2枚は今回再発されるんだけど、共に90年代の名盤だと思ってる。タイムスリップしてきたような60年代からの影響とポストニューウェイブ感が、気持ちいいんだよね。

そんな彼らと初めて会ったのは90年代の終わり頃で、ライブ後に共通の友人が紹介してくれた。その後はアメリカや東京での自分の展覧会に来てくれるようになって、僕もライブの時はゲストで入れるようになった(笑)。歳も近いので60年代に聴いてた音楽の話をしたり、個展の時にDJイベントしてもらったり、今年はロサンゼルスで大きな回顧展のために、みんなで選曲してカバーしてもらってレコード作って、ジャケを自分がやったり、こんな仲良くなると思ってなかった。

86年作『Ride The Tiger』収録曲“The Cone Of Silence”