Photo by Michael Lavine

USインディー・ロックを代表するヴェテラン・バンド、ヨ・ラ・テンゴ。彼らの90~2000年代における4つの傑作――『Electr-O-Pura』(95年)、『I Can Hear The Heart Beating As One』(97年)、『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(2000年)、『Summer Sun』(2003年)――が、2020年12月11日(金)にリイシューされる。いずれもメンバー監修のもと、ボーナス・トラックを多数収録した豪華仕様でよみがえる。

この再発に際して、Mikikiはヨ・ラ・テンゴを愛するミュージシャンやライター、バイヤーなどにお気に入りのアルバム3作の選盤と、それについてのコメントを依頼した。第1弾の〈アーティスト編〉に続いて、今回は〈ライター/バイヤー編〉を掲載する。

協力してもらったのは次の7人。タワーレコード新宿店洋楽バイヤーの阿部圭介、音楽評論家/TURN編集長の岡村詩野、音楽ディレクター/ライターの柴崎祐二、ディスクユニオン新宿インディ・オルタナティヴロック館の澤田裕介、音楽ライター/Sweet Dreams Press主宰の福田教雄、音楽ライター/Call And Response Records主宰のイアン・F・マーティン、音楽ライター/リズム&ペンシルの松永良平。それぞれの視点からヨ・ラ・テンゴへの熱い思いを綴ってくれた。 *Mikiki編集部

 

阿部圭介(タワーレコード新宿店洋楽バイヤー)の3枚

 

『I Can Hear The Heart Beating As One』(1997年)

ヨ・ラ・テンゴの名盤といえばまずこの一枚を挙げる人が多いのではないだろうか。

97年発表の代表作。オルタナ、シューゲイザー、フォーク、サイケ、音響系など様々な要素をアルバム毎に取り入れてきた彼等だが、このアルバムはすべての要素を絶妙にブレンドした集大成的な作品のように感じる。アルバムの頭から、ヨ・ラ・テンゴらしい心地よいノイズのインストではじまり、2曲目はベースがブイブイ言わす重たいナンバー、そして3曲でアルバムのハイライトとも言える疾走感あふれる“Sugarcube”。重たい2曲目から突然振り切ったように疾走する。この流れがアルバムとして凄く気持ちいい。疾走したかと思えば6曲目の“Shadows”ではジョージア・ハブレイの温かなヴォーカルで脱力。10曲目の“Green Arrow”は虫の鳴き声が入る秋の夜にはぴったりなインストで、緩急がついた展開によってアルバム一枚を通して飽きずに聴ける。

都会的な景色が見えたかと思えば突然夏の夜空が浮かんできたり、一枚のアルバムの中で色んな場所へトリップしてしまうようなそんな作品。

97年作『I Can Hear The Heart Beating As One』収録曲“Sugarcube”

 

『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(2000年)

2000年リリースの通算10作目。

激しいメロディーの起伏はないが、全偏を通して漂うダウンテンポなビート、そして優しいウィスパー・ヴォイスがゆっくり心に沁みこむ。今までにあったようなオルタナ要素は影をひそめた分、日常に馴染んでいくような味わい深い作品となった。ダウンテンポがメインにもかかわらず、不思議とじわじわ溢れ出てくるような多幸感が何度もこのアルバムを再生させる。最後に収録されている“Night Falls On Hoboken”はなんと約18分にも及ぶ超大作。名盤を締めくくるにふさわしいラスト。聴き終えるとまるで一本の映画を観終えたような感覚。このアルバムの雰囲気にぴったりのジャケットも素晴らしい。

飽きることなく長く付き合っていける名盤。

2000年作『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』収録曲“Night Falls On Hoboken”

 

『There’s A Riot Going On』(2018年)

2018年にリリースされた、前作から5年ぶりとなった通算15枚目のアルバム。

まずアルバムのタイトルを聞いて、暴動!?って思ったのをよく憶えている。やっぱり〈暴動〉と聞くとスライのあのアルバムを思い出す。内容的には激しいサウンドであったり、直接的な政治的メッセージがあったりするわけではなく、むしろ反対で、今までの彼らの作品の中で最も浮遊感を感じるサウンドが特徴的でとても優しい印象をを受けた。代名詞であるノイズは健在だが、包み込むような優しいノイズ。特に2、3、4曲目の流れはたまらなくドリーミーで美しく優しい。後半のジャジーな展開も面白い。ヨ・ラ・テンゴらしいノイズを優しいメロディーに上手く乗っけたヨ・ラ・テンゴ版ドリーム・ポップ・アルバム。ドリーム・ポップ好きにもぜひ聴いてほしい。

2018年作『There’s A Riot Going On』収録曲“For You Too”

ヨ・ラ・テンゴのサウンドを語る上で、欠かせないのはやはり〈ノイズ〉。ノイズを含む音楽をイメージすると、激しいパンクやオルタナ的なサウンドであったり、あるいはアヴァンギャルドなサウンドであったりがまず頭に浮かぶ。でも、ヨ・ラ・テンゴはそのイメージとは違う。むしろ聴き心地が良い。優しいノイズ。

アルバム毎、曲毎に非常に多彩な彼らだが、作品を通して一貫して感じるのはその〈優しさ〉。そして、インディーならではのいい意味での〈ゆるさ〉みたいなものを非常に強く感じる。本当にどの作品もそれぞれに色がある名盤ばかりで、この〈優しさ〉と〈ゆるさ〉を感じたくなり何度もCDを再生してしまう。

今回のリイシューは数ある名盤の中でも特に黄金期の名盤が4タイトル。一般発売されていないコンピレーション作品に収録されていたインスト曲“Last Train To Oviedo”も収録されるということでマニア向けの作品としても楽しみだし、これからヨ・ラ・テンゴを聴くという人にとってもこの4作品から聴いて間違いないと思う。

コロナが収まったら来日してくれないかなぁ。スタジオ録音もいいが、やはり生のノイズを身体に浴びたい。

 

岡村詩野の3枚

『Nuclear War』(2002年)
『Speeding Motorcycle』(1990年)
『Yo La Tengo Is Murdering The Classics』(2006年)

オリジナル曲がどれも素晴らしいことを前提にして、一方で極めて多いカヴァー曲の中でも特に好きなものを選びました(本来であれば3作品にジェイムズ・マクニューの〈Dump〉によるプリンスのカヴァー・カセットが入りますが)。というか、ヨ・ラ・テンゴにとってオリジナルもカヴァーもないんだと思います。元のアーティストへ敬意があるのは当然としても、一度自分たちに手繰り寄せたらそれはもう自分たちの音楽になる……その自由さが大衆音楽の醍醐味でありスリルであることを彼らはよくわかっている。だから、彼らのカヴァーは、例えボブ・ディランやレイ・デイヴィスのようなビッグ・ネームであっても最終的にヨ・ラ・テンゴでしかない、ヨ・ラ・テンゴ以外の何者でもないという仕上がりになるのだと思います。逆にヨ・ラ・テンゴの曲をカヴァーするアーティストが意外に少ないのは、それだけヨ・ラ節を切り崩すのが難しいからかもしれません。あんな調子でいつも飄々としてはいるものの、彼らの曲は結構頑固なんだと思います。

それにしても、渋谷の小さなライブハウスで観客が数えきれるほどしかいなかった初来日公演を観た時、あるいはホーボーケンという町の名前を彼らの存在で初めて知った時、よもや約30年後、ここまでの存在になるとは思っていませんでした。稀有な、本当に稀有なロック・バンドだと思います。

2002年作『Nuclear War』収録曲“Nuclear War (Version 1)”。『Nuclear War』はサン・ラーのカヴァーEP

 

柴崎祐二の3枚

『Ride The Tiger』(1986年)
『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(2000年)
『Fade』(2013年)

ごく初期のみ参加していたギタリスト、デイヴ・シュラム(2015年の『Stuff Like That There』で一時復帰)が率いるオルタナ・カントリー風バンド、シュラムスをヨ・ラ・テンゴよりも先に聴くというかなり変わったリスニング遍歴をもっている私なので、しぜん、彼のプレイが聴けるファースト・アルバムに思い入れがあります。まだ〈普通の〉オルタナ・ロック・バンド然とした楽曲も初々しい(といいつつ、既にどこかに老成が漂っていますが)。2曲目でキンクスの渋曲“Big Sky”をカヴァーしていて、いっぺんに〈あ〜、このバンドは絶対に信頼に足る人たちだ〉と勝手ながら強いシンパシーを抱くことにもなりました。ロバート・クワインやリチャード・トンプソンを思わせるシュラムのトリッキーなギターがたまりません。

86年作『Ride The Tiger』収録曲“Big Sky”。キンクスのカヴァー・ソング

ソフト・サウンディングなアンサンブルの中に、変質したアメリカン・ウェイ・オブ・ライフの空虚と甘い腐敗臭(それは例えようもなく美しくもありますが)をリリックのみならずサウンド自体から漂わすという、私個人が最も尊いと思うヨ・ラ・テンゴならでは魅力は、『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』において完成したのではないかと思っています。本作を聴くたび、たとえば「マルホランド・ドライブ」とか「ドニー・ダーコ」とか「ストーリーテリング」とか、同時期のアメリカ映画にあった特有の空気感を思い出してしまったりも。今回の再発で光栄にもライナーノーツを担当させていただいたので、是非そちらも参照いただければ嬉しいです。

『Fade』がリリースされた年、2013年の〈FUJI ROCK〉での彼らのステージは今でも鮮烈に焼き付いています。めちゃくちゃに広いGREEN STAGEの真ん中に三人で寄り合うようにちょこんと陣取って、粛々と(だが静かに内燃するように)演奏を続けていく彼らの姿に、〈あ〜、このバンドを信頼してきてよかった〉とまたしても勝手ながらの感慨に浸ってしまったのでした。アルバムの内容も、円熟期の幕開けという感じで実に素晴らしいですね。

 

澤田裕介(ディスクユニオン新宿インディ・オルタナティヴロック館)の3枚

『I Can Hear The Heart Beating As One』(1997年)
『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(2000年)
『The Sounds Of The Sounds Of Science』(2002年)

結成から35年以上にわたりインターバルを殆ど空けずにクォリティーの高い作品をリリースし続けてきている彼らの膨大なディスコグラフィーのなかからお気に入り作品を3枚に絞るのはなかなか難しい。

初期の歪なガレージ・サウンドの曲のなかにも好きな曲は多くあるし、同時代のオルタナ系のギター・バンドのサウンドと共振する90年代中盤の2枚(『Painful』と『Electr-O-Pura』)も捨てがたいし、2000年代以降のヴァラエティーに富んだ音楽スタイルを取り入れたアルバムもどれも思い入れがあるし、透明度がさらに増してスッと染み渡る『Fade』以降の近作も好きだし、彼らならではの選曲センスとアレンジ・センスがグッとくるカヴァー集もどれも好きだ。

でも、断腸の思いで絞るとするならばリアルタイムで聴き始めた90年代終盤から2000年代のあたまにリリースされた『I Can Hear The Heart Beating As One』と『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』の2枚は外すことができない。

 

自分にとっては〈That Summer Feeling〉ならぬ〈That Autumn Feeling〉な思い入れのある曲“Autumn Sweater”が収録されている『I Can Hear The Heart Beating As One』はリリースから20年以上経った今でも夏の終わりから秋が深まってくる季節に聴くことが多いし、『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』は内省的なサウンドのアルバムだけど夏の夜の時間帯に聴くことが多いアルバムで、最終トラックの“Night Falls On Hoboken”は18分近くある長尺曲で寝る前に再生すると後半のサウンドスケープのパートで心地良過ぎて最後まで辿り着かず寝落ちしてしまったことも多い。

97年作『I Can Hear The Heart Beating As One』収録曲“Autumn Sweater”

 

もう1枚選ぶとしたらヨ・ラ・テンゴのなかでも異色の海洋生物のドキュメンタリー映画のサントラでオフィシャルサイト限定販売のインスト・アルバム、『The Sounds Of The Sounds Of Science』だろうか。音響やポスト・ロック、フリー・ジャズの影響が強い作品だけれど、仄暗い海の底でぼんやりとした光が揺れているようなサイケデリックで繊細なサウンドで、タコの産卵やタツノオトシゴが泳ぎ回る無声映画の映像を大きなスクリーンに映しながら演奏した一夜限りの来日公演は自分がこれまで観てきたライブ体験の中でも1、2を争うくらいの素晴らしさでした。 

 

今回のリイシュー4タイトルはサブスクでは聴けないレアな7インチ音源やコンピ収録曲、リミックス曲など大量のボーナス・トラックを収録した決定版ともいえる内容なので、長年のヨ・ラ・テンゴ好きもこれから聴いてみようとしている若い人にもじっくりと味わってもらいたいと思います。また普段はアナログを買っている人にもCDを手に取ってもらえたらと思います。

個人的にはこれまで曲名すら聞いたことがなかった未発表曲“Last Train To Oviedo”と、自宅のどこかにあったはずだけど見つからない「The Wire Magazine」のコンピに収録されていた“Let’s Save Tony Orlando’s House”のソニック・ブームによるリミックスと、ヨ・ラ・テンゴのなかでも一番好きな曲“Deeper Into Movies”(ギターの不協和音とドタバタしたドラムに浮遊感溢れるメロディーのコントラストが最高!)のライブ音源を聴けるのが楽しみです。

 

福田教雄(Sweet Dreams Press)の3枚

『Fakebook』(1990年)
『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(2000年)
『Stuff Like That There』(2015年)

ヨ・ラ・テンゴが新しく発表する作品に接するたび年々強く思うようになったのは、いかに自分が音楽から離れてしまったかということだ。それはなんら悪いことではないが、なぜだか罪悪感や焦燥感を感じさせられることでもある。音楽よりも人生に起こるあれこれを優先せざるを得ないときは誰にでもあって、でも、3人がつくる音楽は自分が落ち着くまでそっとしておいてくれる。いつも歩調を合わせていくわけにはいかないが、ときどき追いつくようにして、でも、一緒に進んでいるという感覚を持てる音楽家やバンドがいるということは人生においてとても幸せなことだと思う。そんな風に今はヨ・ラ・テンゴのことを感じています。どうもありがとう。

90年作『Fakebook』収録曲“The Summer”

 

イアン・F・マーティン(Call And Response Records)の3枚

『I Can Hear The Heart Beating As One』(1997年)
『Painful』(1993年)
『I Am Not Afraid Of You And I Will Beat Your Ass』(2006年)

ヨ・ラ・テンゴはたくさんの表情を持っている。ヨ・ラ・テンゴはメロウであり、獰猛でもあり、なだめるような音楽を奏でたかと思えば調子っぱずれで、だけど聴きやすく、挑戦的で、実験的で、ポップだ――これらのうち1つか2つの要素は、ときにアルバム一作のなかに同時に存在しており、またあるときには聴き手をそのすべてへと一気に引きずり込む。でも、私にとってヨ・ラ・テンゴは、音楽の可能性をぐっと押し広げられる感覚と結びついたバンドだ。

同世代の多くがそうだったように、私はアルバム『I Can Hear The Heart Beating As One』を通じてヨ・ラ・テンゴの世界へと足を踏み入れた。1997年――ブリットポップの商業的かつ野心的でソフトなナショナリズムが衰退していった時期――に発表された『I Can Hear The Heart...』は、私にとって奇妙で、興味をそそられるものだった。そして、すべてを完全に理解するのが難しい作品だとも思った。そのかわり、その後、私はあのアルバムに何度も立ち返ることになる。なにか新しいものを発見するたび、音楽への理解を少しずつ広げていくたび、あのアルバムは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやクラウトロック、ポスト・パンクやビーチ・ボーイズ、そしてそれ以上のなにかが、いかに他の音楽と繋がっているのか、その関連づけを手助けしてくれた。

私はその後、1993年のアルバム『Painful』を発見する。『Painful』は、新たな音楽的語彙への感覚をちがったやり方で開拓してくれた。それ以前もヨ・ラ・テンゴはいいバンドではあったが、『Painful』は彼らが新たな音の世界へと急激に雪崩れ込んでいったことを感じさせるのだ。アルバムは穏やかに始まるものの、徐々に大胆さを見せていく――ヨ・ラ・テンゴは、いつのまにかあなたをすっかり魔法で包み込んでしまっている。そして、自分はいまマスターピースの内側に入り込んでいる、と気づかされるポイントがある(私にとってそれは、スペースメン3風の“I Was The Fool Beside You For Too Long”の中間あたりだった)。そう気づくと、本作はより一層スリリングになる。なぜなら、あなたはいま新たな創造の領域を初めて探検していることを、バンドと共有しているのだから。

93年作『Painful』収録曲“I Was The Fool Beside You For Too Long”

ヨ・ラ・テンゴが私の心を揺さぶるもうひとつの方法、それは、ステージでのパフォーマンスだ。そして、彼らのライブを観る体験は、2006年のアルバム『I Am Not Afraid Of You And I Will Beat Your Ass』と常に結びついている。オープニング・ソング“Pass The Hatchet, I’m Goodkind”は、シンプルかつキャッチー、ベースラインはありがちなロックのそれだが、11分間にわたって容赦なく、まるでロボットのように打ち付ける曲だ。楽曲が進んでいくにつれて、ギターはめちゃくちゃに暴れ回る。彼らの〈わかりやすさ〉と混沌とがステージ上で戦うさまは、驚くべきものだと言っていい。レコードはライブでの体験を再現することはできない。しかし、『I Am Not Afraid Of You...』は素晴らしい成果を上げている。ヨ・ラ・テンゴが表現するさまざまな表情のコントラストを強烈に対比させることで、ライブの興奮に近い感覚をもたらしてくれるのだ。

訳:天野龍太郎

2006年作『I Am Not Afraid Of You And I Will Beat Your Ass』収録曲“Pass The Hatchet, I’m Goodkind”

 

松永良平(リズム&ペンシル)の3枚

『Fakebook』(1990年)
『I Can Hear The Heart Beating As One』(1997年)
『Fade』(2013年)

初めて聴いたアルバムは1987年の『New Wave Hot Dogs』で、上京後まもなく。たぶん18歳くらい。池袋にあったオンステージヤマノで買った。彼らに対して知識があったわけではないし、特に強く推されていた記憶もない。バンド名とジャケットにぼくの好きなタイプの謎感があったし、ちょうどアメリカのポスト・パンクやインディー・バンドにもっと興味を持ち始めていた時期でもあった。そのころ、フィーリーズのファーストやビーチ・ボーイズの『Surf’s Up』あたりも一緒に買ったはず(オンステージヤマノさんには本当にお世話になりました)。

『New Wave Hot Dogs』の頃の彼らはまだずっとひ弱で、アルバム自体も傑作だとは思わなかったけど、少ない生活費のなかで買った一枚だから何度も聴いた。一度しか聴かないレコードもたくさんあったから、あれを何度も聴いたのは、当時の生活になじむものがあったんだろうな。しかし、そんな生活のなかにも他の名作レコードがどんどん流れ込んできて、お金に困ったときにあのアルバムは売り払い、ヨ・ラ・テンゴのことも忘れた。忘れてしまったために、彼らの初来日(1989年)を知らずに見過ごした。チャンスはあったのに!

しばらく忘れていたヨ・ラ・テンゴのことを思い出したのは、高円寺の喫茶店で働きだしてからのこと。店員が好きなレコードやCDをかけられる店で、バイトの先輩があるときかけたのがフォーキーなカヴァー・アルバム『Fakebook』だった。あの居心地のよい日陰みたいな感覚は、当時ぼくが夢中になっていたジョナサン・リッチマンやキンクスの『Village Green Preservation Society』や『Muswell Hillbillies』にも通じるものだった(『Fakebook』で彼らはキンクスの“Oklahoma, U.S.A.”をカヴァーしていた)。

90年作『Fakebook』収録曲“Oklahoma, U.S.A.”。キンクスのカヴァー・ソング

さらにアルバムを聴き進めていくと、もう一曲すごくいい曲を彼らはカヴァーしていた。聴き覚えが確かにあるはずなのに誰の曲なのかすぐに思い出せない。

その曲は“Did I Tell You”。あれ? これって『New Wave Hot Dogs』で好きだった曲じゃないか。ヨ・ラ・テンゴの曲だとまったく思いもせずに聴いたその曲で、ぼくの記憶は彼らの現在に連結された。

90年作『Fakebook』収録曲“Did I Tell You”

ライターになってからは取材も何度かしているし、その後に見たいくつものライブにまつわる思い出もいっぱいある。だけど、あのときの驚きはやっぱり忘れられないし、本気の好きはそこから始まった。いまも彼らに対しては、自分が自分であることにまつわる意外性の尊さを教えてもらってる。

きみって、きみだったのか! みたいなね。

 


INFORMATION
ヨ・ラ・テンゴ再発キャンペーン

YO LA TENGO 『ヨ・ラ・テンゴ紙ジャケット4作品セット(オンライン限定)』 Matador/BEAT(2020)

ヨ・ラ・テンゴの再発4タイトルの発売を記念して、タワーレコード オンラインで4作まとめ買いセットを購入、またはタワーレコードの対象店舗で対象商品を2枚以上同時に購入されたお客様に、先着で特製手ぬぐいをプレゼント!

特典:特製手ぬぐい
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対象店舗:札幌ピヴォ/仙台/渋谷/池袋/新宿/秋葉原/横浜ビブレ/町田/名古屋パルコ/名古屋近鉄パッセ/タワーレコード梅田大阪丸ビル/難波/梅田NU茶屋町/神戸/京都/広島/福岡/オンライン

■対象商品
『Electr-O-Pura(数量限定盤)』(OLE1681CDXJP)
『I Can Hear The Heart Beating As One(数量限定盤)』(OLE1682CDXJP)
『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out(数量限定盤)』(OLE1683CDXJP)
『Summer Sun(数量限定盤)』(OLE1684CDXJP)

 

YO LA TENGO 『Electr-O-Pura(数量限定盤)』 Matador/BEAT(2020)

仕様:CD/紙ジャケット/限定盤
品番:OLE1681CDXJP
価格:2,500円(税別)
ボーナス・トラック収録/解説書、歌詞対訳封入

TRACKLIST
1. Decora
2. Flying Lesson (Hot Chicken #1)
3. The Hour Grows Late
4. Tom Courtenay
5. False Ending
6. Pablo And Andrea
7. Paul Is Dead
8. False Alarm
9. The Ballad Of Red Buckets
10. Don’t Say A Word (Hot Chicken #2)
11. (Straight Down To The) Bitter End
12. My Heart’s Reflection
13. Attack On Love
14. Blue Line Swinger
15. Up to You *Bonus Track for Japan
16. Thin Blue Line Swinger *Bonus Track for Japan
17. Can’t Seem to Make You Mine *Bonus Track for Japan
18. Tom Courtenay (acoustic version) *Bonus Track for Japan

 

YO LA TENGO 『I Can Hear The Heart Beating As One(数量限定盤)』 Matador/BEAT(2020)

仕様:2CD/紙ジャケット/限定盤
品番:OLE1682CDXJP
価格:3,000円(税別)
ボーナス・トラック収録/解説書、歌詞対訳封入

TRACKLIST
CD 1
1. Return To Hot Chicken
2. Moby Octopad
3. Sugarcube
4. Damage
5. Deeper Into Movies
6. Shadows
7. Stockholm Syndrome
8. Autumn Sweater
9. Little Honda
10. Green Arrow
11. One PM Again
12. The Lie And How We Told It
13. Center Of Gravity
14. Spec Bebop
15. We’re An American Band
16. My Little Corner Of The World

CD 2 (Bonus Disc for Japan)
1. The Summer (live)
2. Looney Toons
3. Deeper Into Movies (live)
4. Autumn Sweater (remixed by Tortoise)
5. Autumn Sweater (remixed by µ-Ziq)
6. Autumn Sweater (remixed by Kevin Shields)
7. Sugarcube (live)
8. Be Thankful For What You Got
9. No Return
10. Black Hole
11. How Much I’ve Lied
12. By The Time It Gets Dark
13. Little Honda (live)

 

YO LA TENGO 『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out(数量限定盤)』 Matador/BEAT(2020)

仕様:2CD/紙ジャケット/限定盤
品番:OLE1683CDXJP
価格:3,000円(税別)
ボーナス・トラック収録/解説書、歌詞対訳封入

TRACKLIST
CD 1
1. Everyday
2. Our Way To Fall
3. Saturday
4. Let’s Save Tony Orlando’s House
5. Last Days Of Disco
6. The Crying Of Lot G
7. You Can Have It All
8. Tears Are in Your Eyes
9. Cherry Chapstick
10. From Black To Blue
11. Madeline
12. Tired Hippo
13. Night Falls On Hoboken

CD 2 (Bonus Disc for Japan)
1. Let’s Save Tony Orlando’s House (Sonic Boom remix)
2. Ready-Mades
3. You Can Have It All (Sonic Boom remix)
4. Excalibur 2001
5. Now 2000
6. Danelectro 3
7. Danelectro 2
8. Danelectro 1 (Q-Unique remix)
9. Danelectro 3 (Kit Clayton remix)
10. Danelectro 1
11. Danelectro 2 (Nobukazu Takemura remix)
12. Almost True
13. Last Train To Oviedo

 

YO LA TENGO 『Summer Sun(数量限定盤)』 Matador/BEAT(2020)

仕様:CD/紙ジャケット/限定盤
品番:OLE1684CDXJP
価格:2,500円(税別)
ボーナス・トラック収録/解説書、歌詞対訳封入

TRACKLIST
1. Beach Party Tonight
2. Little Eyes
3. Nothing But You And Me
4. Season Of The Shark
5. Today Is The Day
6. Tiny Birds
7. How To Make A Baby Elephant Float
8. Georgia Vs. Yo La Tengo
9. Don’t Have To Be So Sad
10. Winter A-Go-Go
11. Moonrock Mambo
12. Let’s Be Still
13. Take Care
14. Today Is The Day - EP Version *Bonus Track for Japan
15. Styles Of The Times *Bonus Track for Japan
16. The Needle Of Death *Bonus Track for Japan