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また愛を信じること

 アルバムでは、ドージャ・キャットとのアップ“motive”、タイ・ダラー・サインを交えた“safety net”など旬なメンツとのコラボ曲も収録。なかでも注目すべきはウィークエンドとの“off the table”で、彼との共演は彼女の2作目『My Everything』(2014年)収録の“Love Me Harder”以来となるが、ここでインティメイトなサウンドに乗せて歌われるのは、愛する人を失った後に他の誰かを愛することの難しさだ。〈あんなふうにまた誰かを愛せるのかわからない〉という不安の吐露に掛け合うウィークエンドの振る舞いも含め、元恋人マック・ミラーのことを連想する人も多いことだろう(その前曲“just like magic”には〈ペンを持って天国へのラヴレターを書く〉との一節もある)。

 そんな側面も率直に見せつつ、全体が穏やかなフィーリングで満たされているのは、アルバム半ば以降に固められた愛の表現だ。自身の〈髪〉をテーマに行為の導入部を描いたような“my hair”をはじめ、〈あなたの妻にして〉と歌う“west side”、曲名通りの“love language”、〈私がまた愛を信じることができるなんて思ってなかった〉と歌うメロディアスな“obvious”……と、対象を明確にしながらアルバムは美しいエンディングに向かって流れ込んでいく。

 ラストに控えるのは、持ち前の歌唱力が映える美しいバラード“pov”。pov=point of viewは〈視点〉〈観点〉という意味だが、〈あなたの目線で私を見るのが好き〉というフレーズは、愛の眼差しを向けてくれる人の存在によって自分自身を愛せるようになったという彼女のポジティヴな実感に他ならない。辛い記憶もあって特定の恋人を作らずにいるつもりだったという彼女は、今年に入って不動産エージェントのダルトン・ゴメスと交際をスタート。コロナ禍もあって同棲を始めてから関係を深め、現在も順調に愛を育んでいるようだ。この“pov”では〈すべての荷物が消えていく〉とも歌っているが、前作収録の“ghostin”で〈私は荷物の多い女の子〉と歌っていたことを思えば、新しい愛に満たされた彼女がずっと抱えていた荷物(=悩み)から解き放たれつつあるのは明らかだろう。押しも押されぬポジションを確立したアリアナのこれからがさらに楽しみになってきた。