天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週は趣向を変えて、2020年に発表されたホリデー・ソング、クリスマス・ソングから〈PSN〉がおすすめする14曲を紹介したいと思います!」
田中亮太「先週の〈2020年年間洋楽ベスト・ソング25〉に続く特別企画。いよいよ年末だなー、という気がしますね」
天野「欧米のレコード会社などは、もう今週末からクリスマス休暇になるところもあるんだとか。うらやましい! 今年は新型コロナウイルスの影響で、例年どおりのクリスマスを過ごせない方も多いんじゃないかと思います。クリスマス・ソングにも、やっぱりそういった時勢が反映されていますね」
田中「〈みんなで集まって、大騒ぎのパーティーだ!〉とはいかないですもんね。とはいえ、しっとりとした楽曲ばかりでなく、ゴキゲンなものも選んでおります。では、14曲を一挙ご紹介!」
Andrew Bird “Christmas In April”
田中「まずは、アンドリュー・バードの“Christmas In April”。彼が10月に発表したホリデー・アルバム『HARK!』に収録されています。〈4月のクリスマス〉という曲名が目を引きますが、新型コロナのパンデミックが深刻化しはじめた春に、〈もし自粛生活が続いたら、クリスマスはどんなふうになるんだろう?〉と想像して書いたものなんだとか。当時はこんなにも長い期間、コロナ禍が続くとは思っていませんでしたよね……。物悲しい口笛の音が、いつもより静かな聖夜に寄り添ってくれるでしょう」
Phoebe Bridgers “If We Make It Through December”
天野「まちがいなく2020年の顔の一人だったフィービー・ブリジャーズは、毎年クリスマス・ソングを発表していますね。今年はカントリー・シンガー、マール・ハガードの楽曲のカヴァー。穏やかなピアノの調べに乗せて歌われる〈12月を切り抜けられたら/すべてはよくなる〉というリリックは、コロナ禍の現状を反映したように思えます。売上は、ホームレスの女性を支援するLAの慈善団体〈Downtown Women’s Center〉に寄付されるそうです」
Mariah Carey feat. Ariana Grande & Jennifer Hudson “Oh Santa!”
天野「クリスマスの女王、マライア・キャリーが出演するApple TV+での特番『Mariah Carey’s Magical Christmas Special』のサウンドトラックからシングル・カットされたのが、この“Oh Santa!”。なんといっても、アリアナ・グランデとジェニファー・ハドソンと3人で歌っているのが豪華すぎ! 池城美菜子さんも指摘していたとおり、マライアとアリは不仲なんじゃないかと噂されていたんです(笑)。なので、この共演曲を聴けてよかった!!」
Chance The Rapper “The Return”
天野「チャンス・ザ・ラッパーも、毎年クリスマスに合わせて作品を発表していますよね。さすが、敬虔なクリスチャン! この新曲は、ジェレマイ(Jremih)とのミックステープ『Merry Christmas Lil’ Mama』の2020年版〈The Gift That Keeps On Giving〉から。ジャジーでソウルフルなビートに乗せて、チャノらしいラップを聴かせてくれます。〈今年の労働者たちにサンタがちょっとした手助け〉というラインが、優しくていいなあ」
Liam Gallagher “All You’re Dreaming Of”
田中「UKロックのカリスマ・シンガーによる、感動的なクリスマス・ソング! リアム・ギャラガーの“All You’re Dreaming Of”です。彼にとっては初のホリデー・ソングですが、ピアノや管楽器が響く厳粛なムードのサウンドと、リアムならではの伸びやかでエモーショナルな歌声がマッチしています。個人的に、いまのリアムは20年ぶりのキャリアハイにあると思っていて、ヴォーカリストとして円熟の域に達しているな、と。今年リリースされた『MTV Unplugged (Live At Hull City Hall) 』も素晴らしかったですよ! なお、この曲の収益は子どもたちの支援を行う団体〈Action For Children UK〉に寄付されるとのことです」