コラム

サンダーキャットも超絶ベースで参加!? CRYSTALのゲーム×ファンクなEP『Ecco Funk』にハマる

サンダーキャットも超絶ベースで参加!? CRYSTALのゲーム×ファンクなEP『Ecco Funk』にハマる

少し前に、ココナッツディスク吉祥寺店のTwitterアカウントが以下のような投稿をしていたのだが……。

驚いた! CRYSTALが2009年にリリースしたデビュー・12インチ『Initiative!』のジャケットーーCD銀盤を高々と掲げたそのアートワークは、私も末席に名を連ねているCDディガー集団、lightmellwobuが今年のはじめに刊行したディスクガイド「オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド」(DU BOOKS)のカヴァーになんと似ていることか……!

同書の編集作業が大詰めを迎えカヴァー・デザインに思い悩むなか、この『Initiative!』のジャケットが無意識的に去来したのだろうか……。いや、そもそも私がCRYSTALを知ったのは、2016年のアルバム『Crystal Station 64』においてであって、この12インチの存在は今日まで知らなかったはず……と思って『Crystal Station 64』のジャケットを見てみると、なんとこちらもCD盤面、しかも×3! 私はもう、CRYSTALから逃れられない……?!

以来、彼らのことが頭の奥底に巣食って離れない状態で今年を過ごしてきたわけだが、今回、なんと3年ぶりのオリジナル作品としてEP『Ecco Funk』がリリースされるというではないか。うわー、どんな作品になっているんだろう!と思っていた矢先、Mikiki編集部からレビュー執筆の依頼が。これぞ、深き縁(と勝手に思ってしまった次第)。

CRYSTAL 『Ecco Funk』 FLAU(2020)

CRYSTALは、ギャスパール・オジェ(ジャスティス)やサーキンに見出され、フレンチ・エレクトロの代表的なレーベル、インスティテューブスから上述の『Initiative!』でデビューしたシンセサイザー・ユニット。もしかするとそのアートワークなどからヴェイパーウェイヴ・プロパーのアーティストと思われるかもしれないが、フレンチ・エレクトロ人脈を出自とするキャリアからしても、そうした意匠的一致はある意味で〈偶然〉の符号である。ダンス・ミュージックにアプローチするにせよ、例えばフューチャー・ファンクのようにシティ・ポップなどをある種諧謔的にコラージュするというより、むしろハウスやエレクトロ系の伝統に根を下ろしながら創作を行ってきたといえる。

今作において注目すべきは、そのコンセプトとして伝説的なヴィデオ・ゲーム・ソフト「エコー・ザ・ドルフィン」へオマージュを捧げているという点だろう(ウィリアム・ギブソンの短編小説「記憶屋ジョニィ」並びにそれを原作とした95年の映画「JM」にもインスパイアされているらしい)。「エコー・ザ・ドルフィン」のヴィジュアルやニューエイジ風サウンドトラックはかねてよりヴェイパーウェイヴ・シーンにおいてもさまざまな形で援用されているが、ここでCRYSTALの2人はその参照関係をもう一捻り二捻りし、彼ら自身のフィルターを通すことで、むしろ極めてフィジカルなサウンドを導き出している。

タイトル曲の“Ecco Funk”は、(散解前の)後期YMO風味もあるテクノ・ファンクなのだが、ここで異様なほどにテクニカルなベースを聴かせているのは、なんとあのサンダーキャットだという噂(本当!?)。彼は訪日時、この曲を使ったInstagramへの投稿を行っており一部で話題になっていたので、たしかに有りうる話ではある……。もはや打ち込み的とすらいえるほど突き抜けたプレイが、CRYSTALのトラックと絶妙な融合をなしている。

いかにもフューチャリスティックな高速ディスコ“Do It Again”、80年代NYアンダーグラウンドの薫りも注入されたような“Genesis Jam”、スペーシーな“Crystal Gates”も、どこかゲーム音楽的でありながら(ちなみに〈Genesis〉とはセガ・メガドライブの北米での機種名だ)、あくまで硬質かつ肉体的なファンクとなっているのが面白い。

……とひととおり聴いてきたところで、今作のアートワーク(かわいい)をあらためてじっくり見ていると、イルカさんが口にくわえているのは、またしてもキラキラ輝くCDではないか……!

ああ、こうなってしまっては来年も、彼らは私の脳内に居座り続けるのだろう。久々に本格始動したCRYSTAL。次なる作品が早くも楽しみになってきた。

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