ギブ兄弟のソングブック第1集で披露された永遠の名曲たち!

1. I've Gotta Get A Message To You
68年の『Idea』に収録されたビー・ジーズにとって2曲目の全英No.1シングルで、USでは初のTOP10入りとなる全米8位を記録している。今回コラボしたキース・アーバンは昨年の『The Speed Of Now Part 1』(Capitol Nashville)までヒットを連発中の人気者で、ビー・ジーズと同じくオーストラリアを起点に世界へ飛び出した人。死刑囚からの手紙という体裁を取った重いラヴソングで、パーシー・スレッジやスワンプ・ドッグらのディープなカヴァーが目立つのも納得だ。

左から、キース・アーバンの『The Speed Of Now Part 1』(Capitol Nashville)、スワンプ・ドッグの71年作『Rat On!』(Elektra)

 

2. Words Of A Fool
もともとバリーが86年に自身のソロ用に書いたままお蔵入りしていた幻の一曲だ。客演したグリーンフィールズ出身のジェイソン・イズベルは元ドライヴ・バイ・トラッカーズのギタリストで、脱退後はサザン・ロック~オルタナ・カントリー寄りのシンガー・ソングライターとして活動。ジェイソン・イズベル&ザ・400ユニット名義による昨年の『Reunions』(Southeastern)はデイヴ・コブの制作だ。

ジェイソン・イズベル&ザ・400ユニット名義による昨年の『Reunions』(Southeastern)

 

3. Run To Me
72年の『To Whom It May Concern』に収録されて全英9位を記録したポップ・ヒットで、ディオンヌ・ワーウィック&バリー・マニロウのカヴァーも知られる美しいナンバー。今回はブランディ・カーライルを招いてソウルフルなデュエットを聴かせているが、際立った評価で知られる彼女の18年作『By The Way, I Forgive You』(Elektra)もデイヴ・コブのプロデュース作だった。

ブランディ・カーライルの2018年作『By The Way, I Forgive You』(Elektra)

 

4. Too Much Heaven
ビー・ジーズの覇権を象徴する79年作『Spirits Having Flown』からのヒットで、78年にシングル・リリースされて全英3位/全米1位をマーク。穏やかなソウル・タッチの仕上がりだけにUSのソウル・チャートでも10位を記録した。今回は17年作『Windy City』(Capitol)以降の展開も待たれるブルーグラスの大御所アリソン・クラウスを迎え、バリーも原曲のファルセットとは異なる優しい地声を披露している。

アリソン・クラウスの2017年作『Windy City』(Capitol)

 

5. Lonely Days
70年作『2 Years On』に収録されて全米3位を記録した3兄弟の共作ナンバーで、ビートルズ『Abbey Road』のB面に影響を受けたという展開もよく知られている。ここでは昨年発表の『Nightfall』(Capitol Nashville)に至るまで長らくカントリー・ポップ界をリードするリトル・ビッグ・タウンを迎え、5人で絶妙なハーモニーを聴かせている。グループサウンズ的な歌謡性も備えたバロック・ポップ仕立ての原曲と聴き比べるのもおもしろい仕上がりだ。

リトル・ビッグ・タウンの『Nightfall』(Capitol Nashville)

 

6. Words
もともとクリフ・リチャードに提供するために3兄弟が共作したという68年の真摯なバラード。サンディー・ショウやエルヴィス・プレスリー、ロイ・オービソン、リタ・クーリッジら多くの面々が取り上げ、なかでもボーイゾーンのカヴァーは全英1位に輝いた。今回コラボ相手に迎えられたドリー・パートンは、大ヒットしたケニー・ロジャースとの全米No.1ヒット“Island In The Stream”(83年)をギブ兄弟から貰った縁もあり、彼女は同曲を16年の『Pure & Simple』(RCA)でもセルフ・カヴァーしていた。

左から、ドリー・パートンの2016年作『Pure & Simple』(RCA)、ボーイゾーンのベスト盤『By Request』(Polydor)

 

7. Jive Talkin
ビー・ジーズが渡米して世界的なブレイク期に突入していく転機の75年作『Main Course』からの大ヒット・チューンで、全英5位/全米1位を獲得。軽快なファンクへのアプローチがディスコ時代の到来を待ち構えることとなった。今回は19年作『Wildcard』(RCA Nashville)も記憶に新しいポップ・カントリー歌姫のミランダ・ランバートを迎え、さらにライヴァル・サンズのジェイ・ブキャナンも交えて程良くリズミックなダンス感も伴ったスタイルに仕立てている。

ミランダ・ランバートの2019年作『Wildcard』(RCA Nashville)

 

8. How Deep Is Your Love
ビー・ジーズ屈指のメロウ・バラードで、77年の『Saturday Night Fever』から全英3位/全米1位を記録。こちらでは再登場となるリトル・ビッグ・タウンと、オーストラリアのギタリストでベスト盤『The Best Of Tommysongs』(CGP)も発表しているトミー・エマニュエルをフィーチャーし、温かい雰囲気でまとめている。なお、この曲は全英1位を獲得したテイク・ザット版も有名だが、彼らの再録ベスト『Odyssey』ではバリー本人をデュエットに招聘。他にも松田聖子やアン・ヴォーグ、bice、PJモートンら幅広い面々がカヴァーに挑んでいる名曲だ。

左から、トミー・エマニュエルのベスト盤『The Best Of Tommysongs』(CGP)、テイク・ザットの2018年作『Odyssey』(Polydor)、PJモートンの2017年作『Gumbo』(Morton)

 

9. How Can You Mend A Broken Heart
71年作『Trafalgar』のリード・シングルとして記念すべき初の全米1位を記録したソウルフルなスロウ。ここでは最終作を謳った19年作『Threads』(Big Machine)以降の動向も気になるシェリル・クロウを招き、アーシーな雰囲気でしっくりデュエットしている。楽曲そのものの情感もあってテディ・ペンダーグラスやルーベン・スタッダード、ジョス・ストーンらソウル系のカヴァーが目立つナンバーで、なかでもアル・グリーンのヴァージョンは名高い。

左から、シェリル・クロウの2019年作『Threads』(Big Machine)、アル・グリーンの72年作『Let's Stay Together』(Hi)

 

10. To Love Somebody
ビー・ジーズが豪州から英国に渡った67年の世界デビュー作『Bee Gees' 1st』に収録されたブルーアイド・ソウル調のナンバーだ。今回のバリーが再起用したジェイ・ブキャナンはライヴァル・サンズのリード歌手で、バンドの最新作となる19年の『Feral Roots』(Elektra)はデイヴ・コブのプロデュース。原曲はもともとオーティス・レディングに提供する予定だったそうで、ニーナ・シモンからジャニス・ジョプリン、ビリー・コーガン、マイケル・ボルトン、マイケル・ブーブレら幅広い面々がカヴァーしている。

左から、ライヴァル・サンズ2019年の『Feral Roots』(Elektra)、マイケル・ブーブレの2013年作『To Be Loved』(Reprise)

 

11. Rest Your Love On Me
シングル“Too Much Heaven”(78年)のB面に収録されたカントリー・バラードで、翌79年にビー・ジーズの実弟アンディ・ギブとオリヴィア・ニュートン・ジョンがデュエットで取り上げていた曲。ここではそのオリヴィアを迎え、夭逝したアンディのパートをバリーが担当するという意味のあるデュエットを聴かせている。ギブ兄弟とは何かと縁深いキャリアを送ってきたオリヴィアは、そもそも76年作『Come On Over』(MCA)の時点でビー・ジーズ“Come On Over”をカヴァーしてもいた。

左から、オリヴィア・ニュートン・ジョンの1976年作『Come On Over』(MCA)、アンディ・ギブのベスト盤『The Very Best Of Andy Gibb』(Polydor)。件の曲は未収録ですが……

 

12. With The Sun In My Eyes
こちらはコラボではなくバリーのみで歌唱したボーナス・トラック。オリジナルは68年作『Horizontal』に収められていた隠れ名曲で、原曲もバリーがリードを務めていた。

 

13. Morning Of My Life
こちらもバリーの独唱によるボーナス・トラック。もともとオーストラリア時代に書いていた曲であり、71年の映画「小さな恋のメロディ」のサントラ『Melody』(Polydor)では“In The Morning”の曲名で収録されていた。日本でも特に人気の高い一曲だ。

映画「小さな恋のメロディ」のサントラ『Melody』(Polydor)

 

14. Butterfly
ラストを飾るのは、こちらもバリーが若葉の頃に書いたオーストラリア時代のナンバー(後に『Inception/Nostalgia』などの編集盤に収録)。ここでは名作『The Harrow & The Harvest』(Acony)で知られるフォーク歌手のギリアン・ウェルチとパートナーのデヴィッド・ローリングスを招いた贅沢な布陣で丁寧に聴かせる。なお、『Greenfields』という今作の表題はこの曲の出だしから取られたものだ。

ギリアン・ウェルチの『The Harrow & The Harvest』(Acony)