UKとオーストラリアを周るツアーを成功させたばかりの、カネコアヤノが率いるバンドのファースト・アルバム。もともとバンドでの表現と弾き語りが彼女の活動の両輪で、長らくライヴやレコーディングで柱になっていた林宏敏らがメンバーではあるが、バンド名義での本作は明らかに従来と異なるフェイズに入っている。音楽性の輪郭がさほど明確ではなくなり、音のグラデーションのなかにサイケデリックで実験的な色が浮かび上がる。しかしながら単に先鋭化するのではない、歌声が内包するフォーキーな情緒や、日常的な事象から極私的かつ詩的な奥深さを引き出す詞とのコントラストが絶妙だ。