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人前で歌うなんて

 今作のオープニングを飾るのは、坂本真綾×和田弘樹の“Duet!”。坂本のデビュー曲“約束はいらない”がオープニング・テーマだったアニメ「天空のエスカフローネ」でエンディング・テーマを歌っていたのが和田だ。現在はプロデューサー/作曲家として活動しており、今回は何と22年ぶり(!)にシンガーとして参加した。

 「〈デュエットしてくれませんか?〉とオファーしたときは、〈いやいやいや〉という感じだったんですけど(笑)、真剣にお願いさせてもらっていたら、こちらの気持ちが届いたようで。高校生の頃から知ってくれてる方だし、〈そこまで言うなら〉と引き受けてくれたのかもしれないですね。歌詞に関しては、今の和田さんが無理なく共感できる歌にしようと思ってたんですが、最初のフレーズは私自身のことでもあって。ステージに上がって歌うことを25年も続けてきましたけど、いまだに〈人前で歌うなんてどうかしてる〉って思うので」。

 続いて、坂本真綾×堂島孝平の“あなたじゃなければ”は、モータウン風のリズムを取り入れたポップ・チューン。大人の恋愛をお洒落に描いたリリックも魅力的だ。

 「今回のアルバムのなかで、一緒にラヴソングを歌えるのは堂島さんだけだなと思ってました。でも、いい歳した私たちがラヴラヴな曲を歌ってもアレなので(笑)、生活感があって、歳相応なラヴソングにしたいです、とお伝えしました。たとえば〈ケンカしていても、情熱的に愛し合ってるように見える〉とか」。

 坂本真綾×土岐麻子による“ひとくちいかが?”は、洗練されたエレクトロニック・サウンドと共に〈大人の女性同士の晩酌〉を描いたナンバーだ。

 「土岐さん、私、作・編曲のTENDREさんを交えてオンライン会議をしたんですよ。女性二人の歌にしたいというのは決まっていて、いろいろ話すなかで、〈せっかくだから二人が会話しているような歌がいいですね〉ということになり。〈どちらかが歌ってるときに、もう一人が相槌を打つようにコーラスが入ってくるのはどうでしょう〉とか、少しずつイメージを共有していったんですが、そのときに土岐さんから“ひとくちいかが?”というワードが出てきたんです。土岐さんらしいフェミニンなところ、都会的なところも出ているし、会話になっている部分も含めて、勉強になることばかりでしたね。もちろん歌声も素晴らしくて」。