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コラム

ホセ・ジェイムズ(José James)『New York 2020』ロックダウンの状況下で音楽の魔法を鳴らしたキャリア初のライブ盤

©Janette Beckman

記念すべき年になるはずだった2020年、ロックダウンの状況下でホセ・ジェイムズが鳴らした音楽の魔法は、緊張と熱気の漲るキャリア初のライヴ・アルバムとなった!

 それまでも音楽的な野心に導かれるまま、キャリアに多様な形の楔を打ってきたホセ・ジェイムズだが、特にここ数年は動きが活発になったように感じられる。2018年にはエンジニアの盟友ブライアン・ベンダー、そしてシンガー・ソングライターのタリア・ビリグ(ターリ)と共同で、インディペンデント・レーベルとなるレインボー・ブロンドを設立、2019年にはそこからターリの初作『I Am Here』を送り出し、彼女とはプライヴェートでも結ばれた。そしてもちろん、拠点とするNYがロックダウン状況に置かれた2020年は、彼にとってひときわディープな記憶を残す年だったはずだ。

 その年の2月にはブルーノートを離れて最初のアルバム『No Beginning No End 2』を世に出して来日公演を行い、同作にも参加するベーシスト、ベン・ウィリアムズの新作『I Am A Man』も同時リリースした。何事もなければその2タイトルにまつわる動きはもっとあったに違いないが……5月にはレーベルのEP『Rainbow Blonde: Reworked』をコンパイルし、ターリのEP 『Were You Busy Writing Your Heart Out?』を配信、9月には自身がブラウンズウッドに残した2作目『Blackmagic』(10年)の〈10周年アニヴァーサリー・エディション〉をレインボー・ブロンドから発表している。そのようにリリース面では例年以上に充実の年だったと言えるものの、もちろんホセたちは制作面にのみ注力していたわけではない。このたび2枚組のヴォリュームで届けられた『New York 2020』は、そんな特殊な1年の記憶を記録したライヴ・アルバムとなる。

JOSÉ JAMES 『New York 2020』 Rainbow Blonde/ユニバーサル(2021)

 よく考えるとライヴ盤のリリースはホセにとってキャリア初の試み。Disc-1は8月13日にウッドストックのリヴォン・ヘルム・スタジオにて、Disc-2は10月3日にNYのル・ポワソン・ルージュにてそれぞれ行われた無観客配信ライヴの模様を録音したものとなる。演奏メンバーは両方のセットに共通して、『No Beginning No End 2』に全面参加していたマーカス・マチャド(ギター)と先述のベン・ウィリアムス(ベース)、加えてBIGYUKI(キーボード)、ジャリス・ヨークリー(ドラムス)という陣容。ターリとJ・ホアードも1曲ずつにゲスト参加し、ミックス担当はもちろんブライアン・ベンダーだ。披露される楽曲は直近の『No Beginning No End 2』と10周年記念盤を控えていた『Blackmagic』からのチョイスが大半を占める。Disc-1と2で共通して披露されるのは“Blackmagic”と“Park Bench People”(08年:初作『The Dreamer』に収められたフリースタイル・フェローシップのカヴァー)のみで、それぞれ異なるセットが楽しめるという格好だ。

 まず8月にウッドストックで録られたDisc-1は、先述した“Blackmagic”と“Park Bench People”を最初と最後に配置し、その間は『No Beginning No End 2』と『No Beginning No End』(13年)というシリーズの楽曲で固められている。ターリを交えた“I Found A Love”はもちろんハイライトだが、嬉しいのは『No Beginning No End』の人気曲“Come To My Door”と“Do You Feel”、そして“Trouble”の親密な雰囲気に包まれたパフォーマンスだろう。

 一方、10月にNYで録音されたDisc-2は、オープナーの“Code”を皮切りにエモーショナルな“Save Your Love”、Mitsu the Beats作の“Promise In Love”(曲終わりでは日本語の挨拶も)など『Blackmagic』の曲を連発し、後半に『No Beginning No End 2』の“I Need Your Love”と“Baby Don't Cry”を置いた構成。これに先駆けて9月に開催予定だった〈GREENROOM FESTIVAL '20〉では『Blackmagic』の再現ステージが告知されていたから、その一部を切り取ったような感覚で受け取っていいのかもしれないし、そうでなくてもクールで都会的な演奏のグルーヴと時に情熱的に弾ける歌唱の織り成すライヴの醍醐味は存分に味わえる。

 こんなことでもなければ実現しなかったのかも……と考えるとまったく皮肉な話ではあるが、結果的にはホセがこれまで行ってきた野心的な音楽の旅を、シンプルなバンド・フォーマットで改めて俯瞰できる好企画盤となった『New York 2020』。録音時点ではリリースを控えていたマーカス・マチャドやBIGYUKIの作品も世に出ているので、併せて楽しむのもアリだろう。

ホセ・ジェイムズの近作。
左から、2020年作『No Beginning No End 2』(Rainbow Blonde)、2010年作の10周年記念盤『Blackmagic(10th Anniversary Edition)』(Brownswood/Rainbow Blonde)、2013年作『No Beginning No End』(Blue Note)

 

左から、ターリの2019年作『I Am Here』、ベン・ウィリアムズの2020年作『I Am A Man』(共にRainbow Blonde)、マーカス・マチャドの2020年作『Aquarious Purple』(Soul Step)、BIGYUKIの2020年作『2099』(ユニバーサル)