田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週に始まったことではないですが、今回は、いま世界的に大きな動きとなっているムーヴメント〈Stop Asian Hate〉を紹介したいと思います」
天野龍太郎「新型コロナウイルス感染症が拡大するにつれ、欧米件ではアジア系の人々に対するヘイト・クライムが増加。そんななか米ジョージア州アトランタでアジア人が多く働く店を標的にした銃撃事件が発生。アジア系の6人を含む8人が亡くなりました。その後〈#StopAsianHate〉というハッシュ・タグによるソーシャル・メディアでの運動が起こり、アジア系への友愛や連帯を示そうという動きが起こっているわけです」
田中「リアーナやバラク・オバマ、大坂なおみなど、多くの著名人が声を上げています。3月30日には、BTSがTwitterで声明を発表。彼ら自身も外見で差別を受けてきたことを明かし、暴力やレイシズムに立ち向かっていこうと呼びかける、とても感動的なものでした」
天野「僕たちもアジア系ですし、そういった差別は現実のものとしてありますよね。当事者として、〈Stop Asian Hate〉に賛同したいと思っています。今週は、アラバマ・シェイクスのドラマーであるスティーヴン・ジョンソンが児童虐待の容疑で逮捕されるというショッキングなニュースなど、他にもいろいろなトピックがありました。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」
Sons Of Kemet feat. Kojey Radical “Hustle”
Song Of The Week
天野「サンズ・オブ・ケメットは、英ロンドン・ジャズ・シーンを代表するテナー・サクソフォニストのシャバカ・ハッチングズ(Shabaka Hutchings)を中心とするグループ。彼らがインパルス!からリリースした『Your Queen Is A Reptile』(2018年)は傑作でしたね。待望の新作『Black To The Future』を5月14日(金)にリリースするというのは、うれしいしらせでした」
田中「アルバム・タイトルが最高ですね。同作からのファースト・シングルが、コジェイ・ラディカルをフィーチャーした“Hustle”。シオン・クロス(Theon Cross)のチューバによるベースラインやアフリカンなリズムはこれまでどおりですが、繊細なホーンのアンサンブルとダビーでアンビエントな音響空間が新鮮です」
天野「コジェイ・ラディカルのマントラのようなラップが強烈ですし、黒人女性2人が舞うミュージック・ビデオもパワフル。ブラック・ライヴズ・マター運動に共感してブラック・パワーを込め、未来に向けて黒人である意味を考えたという『Black To The Future』には、コジェイ・ラディカルの他にエンジェル・バット・ダヴィド、ムーア・マザー、ジョシュア・アイデヘン、D・ダブル・Eも参加しているそうです。すごい作品になっていそう!」
Olivia Rodrigo “deja vu”
天野「2曲目です。オリヴィア・ロドリゴのセカンド・シングル“deja vu”。オリヴィアといえば、2021年を代表する大ヒット曲“drivers license”ですよね。1月にリリースされ、Billboard Hot 100で初登場1位に、そして8週間連続で首位の座をキープしつづけました記録破りの曲です。すごい! “drivers license”は〈PSN〉ですぐに取り上げましたね。あの曲について僕がアツく綴った、Rolling Stone Japanの渾身の記事は読んでくれましたか?」
田中「いや、読んでないですね」
天野「読んでくださいよ!! そんな“drivers license”に続く新曲ということで、期待値は高かったわけですが、それをやすやすと上回る素晴らしい曲が届けられました。今回もダン・ニグロ(Dan Nigro)との共作で、プロデューサーも彼。ちょっと90年代っぽいローファイなブレイクビーツやドリーミーなサウンド・プロダクションがまず最高。そして、今回も失恋ソングです(笑)。“drivers license”にはオリヴィアが敬愛するテイラー・スウィフトやロードからの影響を感じましたが、今回の曲のメロディーを聴いて〈これはもう、オリヴィアの音楽だな〉って感じました。さらに、〈*O*R〉という仮タイトルが発表されたデビュー・アルバム。5月21日(金)にリリースとのことで、待ちどおしくて仕方ありません!!」