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The Weeknd & Ariana Grande “Save Your Tears (Remix)”

天野「ウィークエンド&アリアナ・グランデの“Save Your Tears (Remix)”。ポップ・シーンの大物2人による共演ということで、これはもう、今週最大の話題曲じゃないでしょうか」

田中「ウィークエンドといえば3月、インディペンデントで発表したデビュー・ミックステープ『House Of Balloons』(2011年)のリリースから10周年ということで盛り上がっていましたよね。同作のオリジナル・ヴァージョンが、ストリーミング/ダウンロード・サーヴィスで配信されました

天野「そうなんですよ。『House Of Balloons』には思い入れがありすぎて、サブスク解禁には感無量でした」

田中「で、今回の“Save Your Tears (Remix)”は、アルバム『After Hours』(2020年)からのシングルで、特殊メイクによる衝撃的MVも話題になった名曲。ゆったりとしたテンポのかわいらしいシンセ・ポップですね」

天野「アリが参加した今回のリミックスは、最初のサビで、アリのあのかすれた声のコーラスが入ってきて興奮。2ヴァース目では、いつになく低く深みのある声で歌い上げています。アリの声、なんだか最近どんどんハスキーになってませんか(笑)? 次第に盛り上がっていく展開や、超高音のコーラスや力強く声を張り上げるパートも最高で、アリアネーターにはたまらないリミックス。『After Hours』からは数々のリミックスが発表されていますが、アリが主役のこの曲は出色の出来!」

 

CHVRCHES “He Said She Said”

天野「チャーチズのニュー・シングル“He Said She Said”。パンデミック下で制作されたという、3年ぶりの新曲です。チャーチズといい、ウルフ・アリスといい、イギリスのバンドが元気だとうれしいですね。それにしてもこの新曲、めちゃくちゃよくないですか?」

田中「そうですか? 僕はいつもどおりのチャーチズ節だなって思ったんですけど(笑)」

天野「いやいや。最高ですし、これまでとちがいますよ。まず、ローレン・メイベリー(Lauren Mayberry)のヴォーカルに、プリズマイザーのようなさまざまなエフェクトやエコーが強くかかっていて、そこが聴きどころになっています。あと、EDM的な意匠ですね。これまではエレクトロ・ポップやシンセ・ポップと言っていい音楽性でしたが、今回は、特に構成の面で大胆にEDMへと寄せています。強烈なベースやビルドアップしていく展開、歪んだヴォーカルとのコール&レスポンスを繰り返すドロップ=サビの部分がまさにそうですね。バンドとして一皮むけてポップ・シーンのど真ん中に殴り込みをかける、力強い曲だと思いました」

田中「そこまでかなー(汗)。たしかに優れたポップソングだとは思いますけどね! リリックのフェミニズム的かつ現代的なメッセージも痛快ですし、『Love Is Dead』(2018年)に続くニュー・アルバムに期待したいですね」

 

aroomfullofmirrors “RAWAR”

天野「連載初登場のアーティスト、アルームフルオブミラーズによる“RAWAR”です。僕は、この曲を聴いてめちゃくちゃ興奮したんですよね。〈なんだこれは!?〉って。なので、ぜひ紹介したいなと思いました」

田中「たしかに、総勢7人によるマイク・リレーは圧巻ですよね。アルームフルオブミラーズは、オフィシャルサイトで紹介されているとおり、9人が参加する米LAの新鋭ヒップホップ・コレクティヴ。メンバーは、パンチ(Punch)、ニック・グラント(Nick Grant)、リリック・ミシェル(Lyric Michelle)、ジェイリアス・ロウ(Jrias Law)、イチバン・ドン(The Ichiban Don)、アーリー・ライザー(Earlee Riser)、デイライト(Daylyt)、ビリーマリー(Billymaree)、ハリ(Hari)。“RAWAR”は、2月にリリースした“MIRRORS”に続くセカンド・シングルですね」

天野「それぞれ、ソロ・アーティストとしてのキャリアがあるようですね。アルームフルオブミラーズの現代的でいいところは、性別も人種も混交しているところだと思いました。あと、〈イチバン・ドン〉の名前も(笑)。この“RAWAR”はデイライトがプロデュースしていて、NYドリル以降のベースラインと低音の響きを持ったトラップ・ビートがかっこいいです。あとはやっぱり、亮太さんが言ったマイク・リレーですよね。とはいえ、パンチの〈俺は超ナガサキのフロウ、ヒロシマ・ボム〉というリリックは聞き捨てならなかったですし、表現としてダメだと思います……。ただ、アルームフルオブミラーズは、個々の動向も含めてとても気になる存在です」