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鈴木慶一は日本で一番ヤバい詞を書く人

――演奏陣も、佐久間裕太さん(キーボード)や西田修大さん(ギター)、鳥居真道さん(トリプルファイヤー/ギター)、ゴンドウトモヒコさん(ユーフォニアム、フリューゲルホルン)など錚々たるメンバーです。

佐藤「みなさん素晴らしかったです」

Kaede「もともと知り合いの方ばかりですよね」

佐藤「みんなそうだね。あ、KASHIFさん(ギター)は初めてでした。でもNegiccoで一緒にやってるよね」

Kaede「そうです。1曲ご一緒したことがあります(2015年作『Rice&Snow』収録曲“二人の遊戯”)」

佐藤「録音は今回データでのやり取りがほとんどでしたね。ここ1年くらいで宅録の環境を整えたミュージシャンも多くて、何なら家の方がリラックスしてできるっていう人もいるくらいで」

――制作期間はいつごろですか?

雪田「前作(『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』)を出した時にはもう構想があって、去年の10月とか11月にはお話をして」

佐藤「最初にお話を頂いたのがその頃でしたね」

――そして歌詞を1曲、鈴木慶一さんにお願いしています(“生きる爆弾”)。

佐藤「誰かに1曲歌詞を依頼するのもいいんじゃないか、と雪田さんから最初に話があって。それだったら慶一さんにお願いしたいなと。日本で一番ヤバい詞を書く人だと思ってるんで。それでOKして頂けたんですが、〈何かテーマがほしい〉と言われて、どうしようと思って。誰かにそういう依頼をすること自体初めてだったので」

Kaede「ああ、たしかに」

佐藤「それで、そういえば前にゴダールの話をしたことを思い出して……〈『気狂いピエロ』の最後の海みたいな感じで〉というお願いをしました(笑)。本当に素敵な歌詞を書いてくださって。届いた時すごく嬉しかったですね。慶一さんからは音楽だけじゃなく映画を教えてもらうことも多いんです」

 

何度も聴き続けても分からなそうな作品

――今回、作風が曲ごとにバラバラとか、まだ実態がよく分かってないなんてお話もありましたが、出来上がって通しで聴いてみてどうでしたか?

Kaede「ああ、こういう感じなんだ……っていう(笑)。一本の映画というイメージで聴き始めるんですけど、そもそも歌った4曲がバラバラだったよなとも思い、不思議な作品だなって思いましたね。あと自分のしゃべりを聴くことに慣れていないから、音源として聴くとすごく恥ずかしいんですよ。歌のときの声は聴き慣れていて、どう聴こえるかも分かってるんですけどね。ライブの映像を見返してもMCがすごく恥ずかしくて」

――佐藤さんはどうですか?

佐藤「自分が関わったのに、仕上がりがよく分からないっていうのがちょっと初めての体験で。大抵作り終わると〈ああ、よかったな〉とか〈こうすればよかったな〉とか思ったりするんですけど」

――お二人とも感想がずっとぼんやりしてますね(笑)。

Kaede「何度も聴き続けても分からなそう……」

佐藤「そんなアルバム他にないよ」

――じゃあ雪田さんはいかがでした? 想定通りのものができました?

雪田「想定していたものができましたね。〈こういうやつ! こういうやつ!〉って」

一同「(笑)」

雪田「でも、100%思った通りのやつではないですね。想定していたものそのままが上がってきても面白くないですし、だからオーダーする際もふわっとしていて。優介さんらしい面白いものが出来たと思います」

佐藤「ギリギリセーフ?」

雪田「(笑)。100%思った通りのものだったら、お願いする必要ないですからね」

――でもこの質感は他にはないものですし、音も心なしか沁み入りやすい音でした。

佐藤「音楽用語で〈サチュレーション〉(自然なひずみの意)って言いますけど、映画だったらフィルムの質感みたいなものを、どれだけデジタルで再現できるかっていう。あとは、制作中にたまたま観てた映画の影響もあります。“化石採集”は黒沢清監督の『蜘蛛の瞳』から取ったんですけど。黒沢清はKaedeさんから教えてもらったんですよね」

Kaede「どの作品でしたっけ?」

佐藤「『クリーピー 偽りの隣人』。今までで一番感動した映画だって言うから」

Kaede「いや、あれは一番〈観なきゃよかった〉ってなった作品なんですよ。観た直後はそうだったんですけど、今まで観てきたどの映画よりもインパクトがあって、しばらくしてもずっと印象に残ってて。すごく怖いから観返す勇気もないんですけど……」

佐藤「画面がずっと怖い。他の作品も観たけどやっぱり怖いのが多かった」

Kaede「そうなんだ……」

佐藤「でもちょっと笑っちゃうような感じもあったり、それこそジャンルのよく分からない感じのものも多くて。『蜘蛛の瞳』が一番好きでしたね」

 

佐藤優介の好きな雰囲気が分かる

――本作を作るにあたって参考にした映画が他にもあれば教えてください。

佐藤「雪田さんのメモにあったのは、山下敦弘監督の『天然コケッコー』とか、ウォン・カーウァイ監督の『天使の涙』とか。あと全然知らなかったけどイー・ツーイェン監督の『藍色夏恋』も初めて観てすごく良かったです」

Kaede「私は作ってあるものに乗っかっただけで、作ってないからな~(笑)。あ、でも優介さんが、大林宣彦監督の『この空の花(-長岡花火物語)』っていう新潟の花火の映画を〈変な映画だ〉って勧めてくれて観たんですけど、今回の作品を聴くとその感じが分かるんですよ。優介さんの好きな雰囲気が分かる」

映画『この空の花-長岡花火物語』予告編
 

佐藤「変な映画なんですよ。ずっと爆発してるんですよ(笑)」

Kaede「(笑)。長岡花火の話だから理解はできるんですけど、ぶっ飛んでるんですよ」

佐藤「花火を題材にしたいわゆる〈地域映画〉みたいな、そういうイメージとは全然違いますね」

Kaede「普通ほのぼのをイメージしますよね」

佐藤「2時間半ずっと〈何だこれは?〉っていう」

――それが今作に影響を与えている?

一同「(笑)」

Kaede「でも作品を通して聴いた時に、〈ああ、優介さんの好きなあの映画だ〉って思ったんですよね」

佐藤「最後にテロップで〈大団円〉って出る映画、観たことないでしょ?」

――気になってきたので今度観てみますね(笑)。最後に、リリースがあると今度はその曲を生で聴きたいというファンも多いと思いますが……。

Kaede「実は今回の曲は4曲ともライブのセットリストに組み込もうと思っているんですけど、作風的にも位置は難しいですね。特に“化石採集”と“生きる爆弾”の位置はどうしようって悩んでいます」

佐藤「変な曲だもんね~。無理にやらなくてもいいよ(笑)」

Kaede「いやいや(笑)」

――でもライブでも聴けるということで、そちらも楽しみです。ありがとうございました。

 


INFORMATION

Kaede「Youth - Original Soundtrack」リリース記念 無観客生配信ライブ
2021年6月17日(木)
開演:19:30(21:00頃終了予定)
出演:Kaede、佐藤優介(キーボード)
視聴チケット料金:2,000円(税込)
※アーカイブ視聴可 2021年6月17日(木)公演終了、約1時間後~2021年6月24日(木)23:59まで
チケット販売:
https://l-tike.com/kaede20210617/
販売期間:2021年5月29日(土)18:00~2021年6月24日(木)21:00
※生配信は6月17日(木)19:30スタートとなります。
視聴チケットに関する問い合わせ:ZAIKO
https://zaiko.io/contactus?cid=22&type=customer
※対応時間:月~金(祝日除く)10:00~19:00
公演に関する問い合わせ先:EHクリエイターズ
info@negicco.net
詳細はhttps://negicco.net/news/?id=1800

Kaede「Youth - Original Soundtrack」発売記念インターネットサイン会
開催日時:
(1)2021年6月24日(木)19:00スタート 21:00頃終了予定
(2)2021年7月6日(火)19:00スタート 21:00頃終了予定
対象商品:Kaede「Youth - Original Soundtrack」【初回生産限定盤】【通常盤】

対象商品をEHクリエイターズにてご購入の方に、対象商品1枚のジャケット表面にKaedeからサイン、日付(サイン会開催日)、お名前を入れてお送りさせていただきます。
当日は、サイン会をNegicco EHクリエイターズ公式YouTubeアカウントにて生配信させていただきます。
(1)2021年6月24日(木)19:00スタート 21:00頃終了予定
https://youtu.be/-yFOmx2eHd8
※アーカイブは2021年6月27日(日)21:00までとなります。
(2)2021年7月6日(火)19:00スタート 21:00頃終了予定
https://youtu.be/vadZel2a1pc
※アーカイブは2021年7月11日(日)21:00までとなります。
詳細はhttp://negicco.net/news/?id=1822