千葉大樹(キーボード)、関将典(ベース)、内田怜央(ヴォーカル)、長谷部悠生(ギター)、益田英知(ドラムス)
 

ヴォーカル内田怜央とBREIMEN高木祥太による対談や、過去3回のインタビューで、これまでその特異なバンドの生態と活動を追ってきたKroi。その集大成とも言えるメジャー・ファースト・アルバム『LENS』が、2021年6月23日に世に解き放たれた。

バンド名の由来のひとつにもなっているブラック・ミュージックを始めとする多種多彩な洋楽から影響を受け、自己流に噛み砕いて生み出された『LENS』の楽曲たちは、影響を受けた音楽と同様に多種多彩であり、それでいてそのグルーヴ感、ファンクネス、クールさ、茶目っ気など、この5人にしか生み出せない軸が1本通ったものに仕上がっている。そんな各楽曲の制作秘話を、いつものように冗談を交えながら5人が語る。

Kroi 『LENS』 IRORI/ポニーキャニオン(2021)

 

ずっと焦ってた

――いよいよメジャー・ファースト・アルバム『LENS』がリリースされました。Kroiについての基本的な情報は、これまでの全3回にわたるMikikiでのインタビューや、bounce、TOWER PLUS+(後日掲載)のインタビューでも読めるので、ここではもう少し突っ込んだところと各曲の制作秘話について訊かせてください。かつてKroiは〈出れんの!?サマソニ!?〉などいくつかオーディションに出ていますが、結成当時の目標は何だったんですか?

関将典「俺ら4人で結成して(千葉大樹は後から加入)、ちょうど2か月後が〈出れんの!?サマソニ!?〉(2018年)の応募締め切りだったんですよ。で、持ち曲が2曲しかないのにアンケートに〈10曲ある〉って書いて、とりあえず応募して、出たら最終審査まで行っちゃったんです」

内田怜央「スタジオで白目剥きながら歌った動画が、なぜかいいって言われてね(笑)」

関「約3000組のうち最後の30組まで残っちゃって、結成2か月でそこまで行けたからさすがに図に乗っちゃってたんですけど、最後の最後で案の定落ちて。そこから2か月くらい何もできない期間を経て、いくつかのライブハウスに声かけてもらって、〈俺らにもまだやれることがあるな〉って1年間コツコツ活動して。だから2019年の〈出れんの!?サマソニ!?〉は応募した段階から〈今年は出れるっしょ〉みたいな自信はありましたね。2年目は案の定最終審査も通って本戦に出れるというところまでいった。まあ、実際出てみたら前2列が埋まるかどうかくらいのお客さんの数だったんですけど(笑)」

〈出れんの!?サマソニ!?2019〉最終審査の様子、Kroiは3:40ごろから
 

――結成して1か月で初ライブもやるし、Kroiはスピード感が速いですよね。

内田「もう本当に焦ってんですよ。メンバーもみんな焦ってると思うけど、俺は特に焦ってて。昔からドラムをやってて、小学校高学年くらいになると発表会とかで〈あの子すごくうまい〉みたいな評判になってたんですよ。で、〈中学2年生くらいになったら天才中学生ドラマーになってテレビに出てるんじゃないかな〉なんて安易な想像をしてたんですけど、気付いたら中2になってて。〈何してんだ俺?〉ってなって、そこから曲を書き始めたんですよ。で、もうその時からずっと焦ってるんですよ」

一同「(笑)」

内田「だから高校卒業するかしないかくらいの時なんて、本当に〈ヤベヤベヤベヤベ~〉みたいな感じで。曲もスパスパ書いてましたし」

――怜央さんの歌とギターはいつからなんですか?

内田「その、曲を作り始めた中2の頃からですね。友達もいないし、中高と軽音部もなかったし、自分で曲作って歌入れるしかねえなってことで、曲っぽいものを作り上げるスキルが付いていった感じで。もちろん人様に聴かせるものではないですけど、周りに頼める人がいなくて」

――今でも焦りはあるんですか?

内田「まだ時々ありますよ。ひとつは自分が生きてる間に納得できる作品ができるかどうかっていうこと。自分が生み出せる作品への期待からの焦りですね。もうひとつはバンドなのでみんなで上に行こうっていう目標とプレッシャーがあって、そこから来る焦りです」

――今回のメジャー・デビューっていうのは一番分かりやすく目標がひとつ上の階層に上がったところだと思うんですけど、みなさん何か変わりました?

関「やれることは変わったし、俺らが今までやってきたことを大きなスケールでできるようになったとは思いますけど、基本的にやってることは変わらないです。関わってくれる人が増えて、俺ら自身も考える余裕や時間ができたっていうのが一番の変化かもしれないですね」

長谷部悠生「今まではメンバーとマネージャーとカメラマンの7~8人で内製してたしね」

内田「あとはこういうインタビューとラジオが増えました。だからお喋りを頑張らないといけないなって思ってます(笑)」

千葉大樹「演奏だけをやりたいならスタジオ・ミュージシャンになればいいもんね。見た目とか喋りとかいろんなところで自分たちを表現しないといけないのがバンドじゃないですか。そういうところがいいなって思うんですよね」

――でも5人はめっちゃ喋りがうまいですよね。

内田「そんなことないですよ」

千葉「インタビューを受け始めた時は、(長谷部)悠生なんて何言ってるか全然分かんなかったですよ」

関「酒井さん(インタビュアー)の時だって、終わった後に反省会をして」

益田英知「インタビュー終わった後、関に怒られるのが憂鬱だった~(笑)」

関「益田は言っちゃいけないことをぶちかましちゃう癖があるのでその塩梅が分かるようになったよね」

――でもおとなしくならないでほしいです(笑)。

益田「さっき別のインタビューで〈CHAIとかの今をときめくアーティストってフィーチャリングが多い〉って言う話になって〈Kroiはどうですか?〉って訊かれて。〈でも僕らはシャイですからね〉って答えた時に(CHAIのマネをしながら)〈We Are シャイ!〉ってずっと言いたくて」

一同「(爆笑)」

関「益田~。〈We Are~~〉って言ってくれたらみんなで〈シャイ!〉って言ったのに!」

千葉「いやいきなりは難しいだろ!」

――(笑)。以前、怜央さんがレッチリについて喋ってた時に、〈アルバムごとにちゃんとやりたい音楽があってそれを毎回表現してるのがすごい〉って言ってて、じゃあ今回Kroiが、メジャー・ファースト・アルバム『LENS』でそもそも表現したかった音楽っていうのは一体どういうものだったんですか?

内田「(紙資料を指して)こういうことです(笑)」

一同「(笑)」

――(笑)。じゃあ質問を変えて、結果的にどういう作品になりました?

内田「全体的な所感としては、ファンキーではあるなということ。それからいなたいサウンドが多いなと言うこと。このサウンド感とか世界観っていうのは前作の『STRUCTURE DECK』(2021年)に通ずるものがあって――っていうのも作っている時間が結構被っているというのが大きいんですけど。なので『STRUCTURE DECK』をより進化させたもの、みたいなイメージはあります。

でも、このアルバムが出来上がるちょっと前に俺は、なぜかは知らないけど『STRUCTURE DECK』からの流れみたいなものを1回ここで終わらせたいなと思って。〈ここで第一章が終わる〉っていう錯覚じゃないけど、だからここから先は自分の中で〈第二章〉にしなくちゃいけないなと思っているところはあります」

――おお、1作目にしてもうその感覚ですか。

内田「〈Kroiの第一章〉と言うよりも〈人生の第一章〉っていう感じがする。人生で初めてのアルバムを出せる。だから人生の第一章はここまででもいいんじゃないかって思うんですよ。でもこの後、第二章が始まるからにはいろいろ研究をしてから次の作品を皆様の前にお出ししなければな、という気持ちもあります。自分で自分のハードルを上げてるし、上げたところで大して変わらないと思うんですけど(笑)」

一同「(笑)」

 

Kroiの活動そのものにもちょっと〈夜明け〉感があった

――ではそんな『LENS』の1曲1曲の話を伺えればと思います。1曲目から順に訊いていくのと、レコーディングした順に訊いていくのだったら、どちらがいいですか?

千葉「ああ、レコーディングした順っていうのもおもろいですね!」

関「今作だと“夜明け”を一番最初に録って、そこから〈前回試せなかったことを試してみよう〉という感じでトライ・アンド・エラーをしながらレコーディングが進んでいって、その過程で徐々に音楽的に洗練されていった、みたいなところがあるので、レコーディングした順に話していくとそういう流れが見えやすくなるかもしれないです」

――ではレコーディングした順に行ってみましょうか。4曲目の“夜明け”が最初だったんですね。

関「そうですね。2020年の8月に“夜明け”を録って。実はそれと同じ時期に“HORN”(『STRUCTURE DECK』収録)も録っていて、当初は“夜明け”の方をシングルとしてリリースする予定だったんですけど、“HORN”を先に出す方がいいんじゃないかということになり、それで“夜明け”はアルバムの方に回しました。この曲はそもそもデモが結構前からある曲なんですよ。それで、いつかちゃんとした形で出したいと思っていたのが、今回ついに叶ったっていう」

――この曲、相当変な曲ですよね(笑)。

一同「(笑)」

内田「みんなあんまり言ってくれないんですよ、きちんと〈変な曲ですよね〉って。そう言ってほしくてこんな曲をやってるのになあ(笑)」

――(笑)。最初からコード感が割と希薄で、あとサウンド面でキラキラしていて、徹夜明けの変なテンションを表現してるのかなあって。

千葉「まさしくそうです! Aメロとかは基本ワン・コードですね。そもそもIRORI Recordsでやりましょうっていう話になって、大きなスタジオで試しに1曲録りましょうってなってこの曲をレコーディングしたんですけど、この前レーベルの人に話を訊いたら〈ちょっとビックリした〉って言われました」

関「最初にこれやるか、って感じで(笑)」

千葉「“Network”とか“Fire Brain”を聴いてレーベルに誘ってくれただろうに、蓋を開けてみて“夜明け”だったら〈あれ?〉みたいな感じになるよね」

関「これまでのリリース曲と比べて明らかに違う雰囲気だから(笑)。でも俺ら的にはむしろ、こういうふざけた感じこそがKroiだったんですよ」

――でも、収録曲の中では一番ぶっとんでいるけど、ソロ回しもあるし、全体としてはオシャレでかっこいい部分もあるし、いろんな要素が1曲の中に入ってて振り幅が広いから、最初にこれをやるっていうのは結構いいと思いますよ。

千葉「たしかに、ある種の自己紹介みたいにはなっているかもしれないですね」

内田「本当は結構めちゃくちゃでありたいんですよ。でもKroiはなんだかんだでちゃんとしているから、〈もっと壊せる〉と感じていたんです。それでレコーディングのタイミングがちょうど『STRUCTURE DECK』の前のEPの『hub』(2020年)を出した直後だったというのもあったので、ここら辺で一発〈どちゃふざけ〉しておきたいなと。まあでも〈どちゃふざけ〉って言えるほど、まだ振り切れていないんじゃない?とも思いますけど。デモではもっと化け物みたいなのがいるんで」

千葉「これ、ラスサビでメンバーにスタッフさんも交えてみんなで歌ったんですよ」

――その辺はやっぱり、夜明けのテンションを表しているんですかね?

内田「これ、出来たのがちょうど夜明けで太陽が昇る頃だったんですよ。当時、Kroiの活動そのものにもちょっと〈夜明け〉感がありましたし。そういう背景があり、さらにみんなで歌入れしたというのもあって、結構大事な曲だなっていう意識が自分の中でありました」

 

自分の中の違和感が、これを聴いた人の中にも同じように残ってくれたら

――“夜明け”の次は何を録ったんでしょう?

関「(『STRUCTURE DECK』収録の)“HORN”と“page”、“risk”を挟んで、“帰路”、“a force”、“feeling”を録りました。“帰路”は益田が大好きな曲で」

益田「1年半くらい前にデモが上がってきたんですけど、マネージャーがすごい喜んじゃって。でも〈この曲は最高の仕上がりにしたいから、もっといい環境が整ったときに録りたい〉ってずっと録るのをお預けされてたんですよ。それが今回、満を持してOKが出たので〈よっしゃ!〉っていう感じで」

――“shift command”がパーティー感がある曲だったので、その後にこの渋めの曲が来るとなんとなく〈パーティー感の終わり〉みたいな雰囲気を感じます。

内田「これは、朝帰りの曲なんですよ。それこそ、俺らが月の半分くらいライブをしていた時の帰り道がモチーフになっています。俺、家が遠くて、打ち上げとかで遅くなるとすぐ終電を逃しちゃうんですよ。それで結局残ってそのままオールして……となると、まあクソ疲れるわけです。ある時そんな感じでオール明けで地元に着いて、パッと空を見上げたら、めちゃめちゃ朝焼けが綺麗だったんです。その時、これは〈今の太陽の感じ〉と〈今の疲れ方〉が合わさらないと味わえない景色だな、っていうのを感じて。それで家に帰って、そのまま寝ないで書いたのがこの曲です。なので、パーティー感の後にこの曲が続くっていうのは、素晴らしい解釈ですね。ありがとうございます!」

――おお(笑)。

内田「歌詞に〈トワイライト遊泳〉って出てくるんですけど、あれは自分が地元の駅に降りてその朝焼けを見たときに抱いた、ふわふわふわーっとトリップしているような感覚を表す造語なんです」

――なるほど。その流れで次はラストの“feeling”。この曲はこれでフル・レングスなんですか?

関「デモと尺はまったく一緒ですね」

内田「元は曲の欠片だったんですよ。俺は本命のデモを出す時、そのサイドに影武者みたいな曲を置いて挟んで出すっていうのを毎回やってるんですけど、その時は影武者の出が悪くて、一度自分の中でボツにしたこの曲を出したら、意外と反応が良くて。あとこの曲は、歌詞がすっごい怖いんですよ。怪談※とかではないんですけど、なんか奇怪で。その時何を考えてたか覚えてなくて」

※メンバー内で現在、怪談がブームらしい

千葉「たしかに支離滅裂な感じはある(笑)。これって歌詞のモチーフは何かあるの?」

内田「たぶん、あったんだけどもう覚えてなくて。一応自分の中の解釈はあるんですけど、他にもいろいろ解釈できるし、聴く人一人ひとりにその解釈は覆してもらえたらいいなって思っています。自分の中にも正解はないので」

――歌詞のどこに句読点を入れるかによっても解釈が変わってきそうですよね。この曲があることで、アルバム全体に何とも言えない余韻みたいなものが残るような気がします。

内田「自分の中の違和感が、これを聴いた人の中にも同じように残ってくれたら〈よし、もう1回聴いてみよう!〉って思ってもらえるかもしれないし。だとしたらおもろいですよね」

 

〈曲を作ってやった〉っていうよりかは〈なんか出てきた〉くらいの感覚

――で、次が7曲目の“a force”ですか。

関「まだ千葉がバンドに加入する前のスタジオで、ある時、(長谷部)悠生が仕事で30分くらい遅れてくるというので、俺と怜央と益田の3人で先にスタジオに入ってジャムってたら、この曲の原型が出来たんです。

で、悠生が来た時に何食わぬ顔で〈じゃあこの間のアレやるよ〉っていう感じでその曲を急にやり始めたら、悠生がめちゃくちゃ焦るっていう(笑)」

長谷部「着いたら、みんな当たり前のように演奏してるから〈あれ、こんな曲あったっけ……?〉って(笑)」

関「で、その後に怜央がそれを元に清書したデモを作ってくれて、今の形が出来上がりました。1回封印したけど、また引っ張り出してきて」

――なるほど。この曲は歌がずっとファルセットですよね。

内田「だからライブでやるのが大変で、それで封印していたんです。これからライブでやるのに今から怯えてますね(笑)」

――(笑)。で、次にレコーディングした曲が5曲目の“Pirarucu”。

内田「自分たちは基本的にいつも昼夜逆転生活みたいな感じなんですけど、そんな生活から同時期に生まれた曲っていうことで、“夜明け”と“Pirarucu”は割とセットで捉えていて。“Pirarucu”に関しては、かなり自分の精神状態がナイーヴな時に生まれた曲なんで、〈曲を作ってやった〉っていうよりかは〈なんか出てきた〉くらいの感覚です。その時は病室を思い浮かべていて……」

――また怖い話!?

内田「そうそう(笑)。病室の窓の向こうで自分の好きなピラルクっていうでっかい淡水魚がワーッと空中に浮いてる画が頭の中に出てきて、それを元に書き上げていったんです。きっと俺の好きな世界観なんですよ、こういうのが」

――なんか寝る前のトロっとした感じが出ている気がします。

内田「小さい頃って寝る前に〈死んじゃったらどうなるんだろう〉とか考えるじゃないですか。そういう時のトラウマ的な不安とか儚さみたいなものを表せたらいいかなっていうのがあったのかな」

千葉「この曲はドラムを結構デッドな音で録ってるんですけど、シーケンスでめちゃくちゃデカい音でストリングスを入れたり、すごくディレイのかかった壮大な感じのエレピを入れて。そういうアレンジで怜央の言ったファンタジー感みたいなものを上手に演出できたと思います」

――次は8曲目の“侵攻”。この曲は以前からライブでもやっていましたけど、ライブに比べてテンポは遅くなりましたよね?

2020年の自主企画ライブ〈Dig the Deep vol.2〉での“侵攻”
 

内田「そうですね。BPMを落として、曲構成とかアレンジも考え直して。やっぱり音源とライブは差別化したいというのもありつつ、〈曲の持つ別の表情も見せたい〉みたいなところもありました」

――なるほど。もともとダークで妖しかったけど、さらにもっとドロッとして。

内田「この曲は俺らの中では結構ミックスがおもろいと思っていて。ドラムとか鍵盤を結構大きめに入れたりとか、あと長谷部のギターが近付いてきたりとか」

千葉「ずっとピャーっと鳴ってるエレピが、ミックスした自分でも〈なんでこんなにでっかく音出したんだろう〉って思ってて(笑)。バスドラとエレピがでかいのに理由はないんですけど、でもバスドラって音がでかければでかいほどカッコよくないですか?」

一同「(笑)」

千葉「怜央のイメージでは小さいバーで演奏してるみたいなんですよね。だからイントロも、店内の雑音がザーッと鳴っていて途中で乾杯の音が入る、みたいなイメージで。そこに理由はあるの?」

内田「おもろいから(笑)。最初のデモは、電車の中でボイスメモに録ったんですけど、今回のアレンジは電車に乗ってる雰囲気じゃないな、と。それで、バーでチルい感じの時に、バック・バンドがフワッて演奏しているのが耳に入ってくる感じにしようと思ったんです。

俺、この曲のドラムがフレージングも含めてめっちゃ好きで、フィルも2回とかしかないんですけど、その2回にめっちゃ己を懸けてる感じがあって、そこがすごく気に入ってるんです。サラで鳴ってるグルーヴもビートもめっちゃいいし、そこに合わさるローズの音も完璧なので、それだけ聴いてもらえたらいいんじゃないですかね。歌とか歌詞は聴かなくていいんで(笑)」

 

〈ダッサ!〉が〈天才的〉に変わるまで

――次が9曲目の“NewDay”ですか。

内田「ここら辺から、アッパーめな曲を書こうみたいな話をし始めた気がします」

関「今まで話した曲に関しては2020年の12月の時点で録り終わっていたんですけど、“夜明け”以外は落ち着いたテンションのチルい感じになっちゃったんで、ここから結構作曲のエンジンがかかった感じですね」

千葉「最初にチルいのだけ録るっていうのは、後半テンションを上げられるからいい戦法かもしれないね」

――これは関さんが作詞で。関さんは過去にも“MAMA”と“Shincha”の歌詞を書いてますよね。

内田「俺はガッツリした英詞は書けないので、英詞が合う曲は関さんにお願いしたりします。演奏面では“NewDay”は〈新たなKroiだよな〉っていう感じがありますね。元々デモの時点からそこはかなり意識していて、新しいところを見つけようと思って作ったので」

関「アルバムの中で結構〈味変〉というか、キャラが立った曲にはなっていると思いますね」

――キーボード、めちゃくちゃカッコいいですよね。

千葉「あれを聴かせるための曲みたいなとこあったもんね、デモの時から」

内田「それこそ〈チル・レコーディング〉が続いたので、一旦ここで一番ブチ上がるのを作っとこうと思って」

関「あのシンセ・セクションのイメージに引っ張られて結構ベースも派手なフレージングをしようと考えてたんですけど、怜央は〈限界まで音を削りたい〉って思っていて。だからそのフレーズは一旦リセットして、いなたい感じでレコーディングして」

内田「元々は昔のR&Bとかファンクの音像を現代にレンジアップさせた音像を作りたかったんですよ。そこにみんなのエッセンスが組み合わさってこういう感じが出来て」

千葉「シンセ・ソロ終わりの悠生のギター、面白くないですか?」

――面白い! 〈あ、これでいいんだ〉っていう感じの(笑)。

長谷部「最初なかなかこうする勇気が出なくて。元々はリヴァーブとかをかけて録ろうとしていたんですけど、試しに1回何もかけずにやってみたら〈それで入れようか〉っていう話にありました」

内田「あれはいいよねえ。ドクター・ドレー感」

――(笑)。その次は3曲目の“selva”です。

千葉「“selva”も怜央からずっと〈いなたくしたい〉って言われてて。まあ毎回言われるんですけど(笑)、その中でも特に言われてて、僕はミックスするにあたって一番いなたくしています。他の曲よりもレンジが狭いししょぼいと思います」

内田「すごい大好きな音像です」

関「エレキ・ギターのチャカチャカ鳴ってる音から始まるんですけど、新しい試みとして、普通のエレキ・ギターをナマ音で録ってます。アンプとか何も使わずマイキングだけして」

長谷部「アンプを通さずに部屋で弾いてる感じね。最初はもっとリアルにしようと思って、ギターとiPhoneだけ持って、トイレとか、街の踏切の前で一人で録ってて(笑)」

――変なことやってますねえ(笑)。

長谷部「あと、プリプロでこの曲のギターのフレーズを弾く時に、怜央のデモのフレーズを聴き間違えて覚えてて(笑)」

内田「俺それ聴いて、思わず〈ダッサ!〉って言っちゃったんですよ。でもよくよく考えたら、最近の曲で〈ダッサ!〉って思えるギター・フレーズってなかったなと思って。それで〈これは天才的だ〉と思えてきて、そっちの方を採用しました」

――あ、使われてるのはそっちなんだ!

千葉「そういうのを活かすバンドなんですよ、Kroiは」

内田「すごく民族的というか、チャイニーズっぽさがあって。だからそのギター・フレーズが入ったことで、いなたいサウンドにめちゃめちゃ合う楽曲になったんですよ。それで改めて〈バンドって最高!〉と思いました」

関「ずっと言ってたよね、〈これがあるからバンドはやめられない〉って(笑)」

内田「本当にこれが一番気持ちいい瞬間なんですよ。だから“selva”のこのギター・フレーズが、俺の中での長谷部のベスト・パフォーマンスだとガチで思っています。“selva”っていう作品を作るうえで一番重要な役割を果たしたなって」

長谷部「ありがとう(笑)」

――次が先行リリースの時にお話を訊いた“shift command”で、その次が“sanso”ですか。個人的には今作の中で一番好きかもしれないです。この曲も途中までワン・コード感でジャムっぽくて。

内田「おおー、本当っすか! でも俺はまだまだアレンジいけたなと思ってます」

関「〈楽器頑張った!〉って感じだよね」

千葉「ここら辺から、ドラムの扱い方がすごく分かってきたんですよね。録りに関してもミックスに関しても、ドラムのサウンドメイクがやりたいようにやれたっていう手応えがあって。

あと、シーケンスをまったく使っていなくて、全員がその場で弾ける音で弾いたっていう曲ですね。全員分のオケを録った後で怜央が、真ん中のゆったりしたセクションにパーカッションを入れて。パーカスのセットを作ってステレオ・マイク2本で録ったら、一つの楽器を叩いた時の別の楽器の揺れとか、そういう細かいところまでリアルな音が録れて、信じられないくらいナマ感があって。そういう出したかったナマ感もありつつ、関さんのベースは普通出しちゃいけないようなところまでローを出したりして〈今っぽさ〉みたいなもの同時に出せていて、いろんなピースが上手くハマった楽曲ですね」

内田「この曲のサウンド感は素晴らしいよね」

――いや、この曲すごいですよ。サウンドもすごいし、このファンキーさこそKroiだと思います。

内田「“sanso”はデモが上がった時からアルバムに必要なピースという感じはしていて。でもやっぱり演奏の難易度は高そうだったし、レコーディングの後半に寄せていて。だから“sanso”はかなり意気込んでたんじゃないかなと思います」

千葉「あと俺は、この曲のドンケツのセクションが大好きなんです。これはゴスペルで言う、いわゆる〈プレイズ・ブレイク〉に当たると思うんだよね。全員で最後踊り狂ってバカ騒ぎするっていうアレ。“dart”(『STRUCTURE DECK』収録)も最後のセクションでやっぱり〈プレイズ・ブレイク〉を意識していて、そこは共通していますね」

 

もう次を作りたい

――残り2曲です。次が6曲目の“ichijiku”。

内田「これは千葉さんが作った曲ですね。関さんが〈ベースとドラムで始まる曲〉って言ったら、千葉さんが3日後くらいにデモを作ってきてくれて。それを元にみんなで作りました」

――このサンプリングされている声は?

千葉「これは僕のアイデアですね。怜央はバンド出身なんであんまりサンプルを使ったりはしないんですけど、僕はずっとサンプルを使って曲を作ってきた人間なんで、せっかく自分が作るなら怜央がやらないアプローチでやりたいということで入れました」

――“ichijiku”っていうタイトルはどういう意図でつけたんですか?

関「前回(『STRUCTURE DECK』で)“marmalade”っていうジャム(・セッション)の曲を入れたじゃないですか。それでこの曲も同じジャムの曲なので、〈マーマレード・ジャム〉に対して今回は〈イチジク・ジャム〉ということで〈ichijiku〉と付けました」

千葉「次やるならどんなジャムがいいと思いますか?」

――え(笑)……イチゴ?

関「実は〈イチゴ〉も考えてたんですけど、〈イチゴ〉だったらもっと王道っぽい感じのコード進行かなと思ってやめて」

千葉「じゃあ次は〈イチゴ〉やります! 決定!」

――楽しみにしてようっと(笑)。じゃあ最後が1曲目の“Balmy Life”ですね。読み方は〈バルミー・ライフ〉でいいんでしょうか?

内田「これ、いろんなところで〈バルミー〉と言ってたんですけど、正式には〈バーミー〉だったらしくて。でもまあ〈バルミー〉でいいかって(笑)。〈Balmy〉には〈かぐわしい〉とか〈爽やかな〉とか、逆に〈気の触れた〉とか、結構いろんな意味があるんですよ。そのいろんなニュアンスが1つの言葉に共存してるってすごいなって感動しちゃって、それがこの曲の世界観にぴったりだなと」

――華々しい幕開けみたいな感じだし、サウンドもファンキーだし、すごく良い曲で始まったなと思いました。

千葉「どうすか、益田さん的には?」

益田「うん、分かりやすいよね! やっぱり音がノリやすいし、すごくメロディアスで耳触りのいい感じだし」

内田「繰り返しが多いよね。今回はかなりラップをフリーキーなフロウにしたので、そことの兼ね合いもあってバランス感覚をしっかり保つために、サビやそれ以外のメロディーの繰り返しを多めにして。

基本的にリード曲って、作ってる段階でめちゃめちゃ好きになることってあんまりなくて。最終的に世に出てみんなの評価を受けて、〈あ、この曲、いいな〉ってなることは多いんですけど。でも“Balmy Life”に関しては、世に出る前からもうめっちゃ好きっすね」

千葉「あ、そういえばトーク・ボックスを使ってる話をしてないね」

内田「そうだそうだ! 千葉さんに、まったくの未経験だったトーク・ボックスをレコーディングの1週間前くらいに頼んで……」

千葉「いや、練習しだしたのは2日前とか(笑)」

長谷部「家でやっててさ、最初は全然できてなかったよね」

千葉「発音の仕方が普通に歌うのと違うんですよ。特に子音が難しくて、たとえば〈た〉って言うときに〈タッ〉みたいに破裂音を作らないといけなくて、レコーディング中にそういうことに気付きながら録ったんです」

――でもあれがあるから独特のサウンドに仕上がっていて。

千葉「1回引っかかりが生まれるっていうかね」

関「サラっといかない感じがするよね」

千葉「1曲聴いた後にあのフレージングが耳に残るというか、象徴的なものになってるんですよね。それこそザップとかスティーヴィー・ワンダーが使ってたみたいな採り入れ方をしていて」

――全曲のレコーディング秘話を訊いたところで、そろそろ締めにしましょうか。今作が出来てみて、どうですか?

内田「全員満場一致で、もう次を作りたいって感じです」

関「同じですね。とりあえず早くリリースしたくて」

内田「“Balmy Life”録ってる時から言ってたよね。次のレコーディングしたいって」

関「録り終わって数分後には言ってたよ。このアルバムができるまで1か月に1回はスタジオでレコーディングしてたので、今は物足りないんですよね」

――最初に〈これで第一章は終わり、ここからが第二章〉って言ってましたけど、その欲求っていつか満たされるものなんですか?

内田「曲を作ってる間だけはウハウハってなって満たされてるんです。でもこのモチヴェーションが毎回あるわけではないかもしれないから、大切にしたいですね。それに、すぐにでも次のレコーディングはしたいけど、アウトプットばかりの生活だと研究しなくなって進化しないじゃないですか。リリースするものが進化してないと〈あれ? 超えてきてねえな?〉って腹立たしい境地に辿り着きますし、Kroiは〈進化〉に目を向けて活動しているバンドなので、吸収期間を設けて研究して、しっかり吟味した上で新しい要素を入れていくとか、今のバランスの比重をちょっとだけ変えて重心をズラすことで違うものを作っていくとか。これからはそういう視点を増やせるようにしたいなと思ってます」

 


LIVE INFORMATION

Kroi Major 1st Album Release Tour “凹凸”
2021年7月4日(日)北海道・PLANT
2021年7月10日(土)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
2021年7月11日(日)千葉・LOOK
2021年7月16日(金)大阪・BananaHall
2021年7月18日(日)愛知・SPADE BOX
2021年7月30日(金)福岡・DRUM Be-1
2021年8月1日(日)京都・KYOTO MUSE
2021年8月6日(金)東京・渋谷CLUB QUATTRO
2021年8月27日(金)東京・LIQUIDROOM ※追加公演
※ご来場に関する注意事項など最新情報を公式サイトにて必ずご確認ください。公演前に発表する注意事項をご確認の上、ご来場をいただきますよう、お願い申し上げます
※当日は新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインを遵守し、然るべき安全対策を講じた上で開催されます
詳細はKroiオフィシャルサイトにて