Kroiの快進撃が止まらない。10月に“HORN”を出したばかりの彼らが、5作目の配信シングル“Page”を12月3日にリリース。この曲はバンド初のドラマ主題歌(テレビ東京 水ドラ25「東京デザインが生まれる日」主題歌)で、現代のロック・サウンドと古き良きブラック・ミュージックが持つノリの良さや懐かしさ、さらにスペース感やジャングル感を見事にないまぜにした独自のサウンドを生み出している。
今回Mikikiでは、前回に引き続き、内田怜央、関将典、千葉大樹、益田英知、長谷部悠生へのインタビューを実施。新曲“Page”の制作秘話や、バンドを形成する10枚のアルバム、そして激動の2020年について、たっぷりと語ってもらった。
一度は封印した曲“Page”
――12月3日に新曲“Page”がリリースされました。またかっけえ曲が出来ましたね。
一同「ありがとうございます!」
――ちょっと懐かしさを感じるスペーシーなシンセが入ってたり、オクターヴを重ねたベースがズンズン動いていたりして、まさに、前回のインタビューで言ってたKroiが理想とする〈思わず身体を動かしたくなる曲〉だなと思いました。制作中、サウンドについてはどういう話をしましたか?
関将典「そもそもこの曲のデモはバンドの結成当初からあって、ライブでやってたこともあったんですけど、その当時はバーチー(千葉)が加入する前だったのでシーケンスを流してやってたんですね。でも、それだとなかなかいいアレンジが思い付かなくて、ライブではやらなくなってたんです。
で、今回ドラマの主題歌のお話をいただいたタイミングで、どの曲にしようかという話になった時に、この曲がドラマのテーマ感に合うんじゃないかって思ってピックアップしたんです。そういうこともあって、当初とは全く違う雰囲気になりましたね。リリックも定まってなかったんですけど、ドラマのメッセージ性も相まってこういう歌詞になりました」
――当初はどういう曲だったんですか?
内田怜央「もともとはザップ(Zapp)みたいな曲を作りたくて、割と遅くて、ギターのトーキング・モジュレーターがメインになるような曲だったんです。でも今回アレンジするにあたって、だいぶシュッとさせたね」
――そのシュッとさせた理由というのは?
内田「(当初のアレンジに)飽きちゃったんだと思います。レコーディングするなら新しい感覚で録りたくって」
関「もう一度やるってなった時に、以前とは違うアレンジのデモを(内田)怜央が上げてくれたんです。それを聴いたら俺らも〈カッコいいね!〉ってなって。ベースで言えば、当初からオクターヴのベースだったんですけど、BPMが速くなったことでフレージングは変えました。それと全く変わったのは、バーチーの鍵盤が入ったことで、さっき言ってたスペーシーな感じとかが出てることですね」
――やはりバンドにとって千葉さんの加入は大きかったんですね。
千葉大樹「(自分で)デッカいですね(笑)」
内田「めちゃくちゃ大きいです。シーケンス流す曲はやりたくねえなって思ってたし」
関「結成当初から生の音だけでライブをやるのが目標だったんですけど、サンプラーをやってたメンバーがすぐに辞めてしまって、しょうがなくシーケンスを使ってたので。バーチーが入ってくれたことで、バンドが形になって、本当にやりたかったライブができるようになりました」
――なるほど。結局トーキング・モジュレーターは使ってないですよね。
内田「いや、ちょっとだけ使っていて、気付いてもらえたら嬉しいな、くらいの感じです。本当にワンフレーズだけで、言葉も発してないので、シンセの音に聴こえるかもしれないですね」
ディスコにエキゾチカに
――他にもそれぞれの楽器や演奏についてこだわりがあれば教えてください。
長谷部悠生「さっきシンセのことをスペーシーって言われてましたけど、ギターもエフェクト面でいろいろこだわっていて、特にサビの部分では盛り上がるようにフィルター系のエフェクトで音を作り上げています。あとAメロのクリーンな音とのバランス感ですね。ルーツにリスペクトを持って、さっき言ったようにザップみたいなダンサブルな感じを意識しました」
――たしかにファンキーで踊れる感じですよね。益田さんは?
益田英知「この曲はデモの時点で結構攻撃的な感じがあったんで、ドラムに関してはバスドラをドシドシさせて、スネアもアタックが強めで、ドラム全体で聴いても攻撃的になるようにしました。ミックスの時、シンバルもめっちゃデカかったでしょ?」
千葉「デカい!」
益田「アタックを強めにしましたね」
――ミックスも千葉さんがしてるんですよね。本当いろいろできるんですね。
千葉「そうですね(笑)」
――千葉さんの鍵盤からスペーシーな印象を受けたのは合ってますか?
内田「結構〈スペーシー千葉〉だもんね」
千葉「変な音が好きで、放っておくとそうなりがちなんですよね」
関「宇宙に憧れでもあるの?」
千葉「(東京ディズニーランドの)トゥモローランドが好きなんだよね。あの感じいいですよね」
――分かります。あの雰囲気いいですよね。
千葉「ディズニーは全部好きなんですけど、とりわけあの感じの曲が好きですね。シンセって基本スペーシーになりがちよね。“Page”のサビで盛り上がるシンセはデモですでに入ってて、それをそのまま変えずに入れた感じなんですけどね」
長谷部「実は後半のセクションのビート部分も千葉さんが作ってくれて。プリプロの時に最後のベースラインが出来て、トイレ行ってる間に千葉さんがビートを打ち込んでくれて、トイレから帰ってきたら〈めっちゃカッコいいじゃん!〉ってなったよね」
千葉「なんかディスコっぽい曲を作りたいなと思ってたんですよね。でも1から自分でディスコっぽい曲を作って提案するのも面倒臭いし、この曲とディスコに直接関係はないんですけど〈ここに入れちゃえ〉って(笑)」
一同「(笑)」
内田「で、俺もそのビートに合わせてマイクを使わずに適当に歌って、その後で家に持って帰って歌詞をはめて出来たんだよね」
千葉「そうだ、〈エキゾチカ〉って言ってたじゃん!」
関「曲の展開が変わる時に動物の鳴き声がたくさん入ってるんですけど、あれ全部俺らの声なんですよ。マイクの前で(口で鳥の鳴きまねをしながら)〈ピヨピヨピヨ~〉ってやったり(笑)。めちゃくちゃおもろかったよね」
千葉「あれを立派なスタジオで録ってるんですよ(笑)」
――(笑)。なぜエキゾチカの要素を入れたんですか?
千葉「それもディスコと同じで直接関係はないんですけど、俺がたまたまマーティン・デニー(Martin Denny)の『Exotica』(57年)を聴いてたからで。昔のアメリカで南国気分を味わうためのレコードで、南国の鳥とか、草木とか、海の音を使ったラウンジ・ミュージックです」
――近年、モンド・ミュージックとしても再評価されましたよね。
千葉「それがサブスクに入ってて、特に脈絡もなく〈こういうのやりてえ〉って思ったんですよね(笑)」
――でもそれによって、結果的にいい感じの異国感が出ています。
千葉「やっぱり毎回その時に自分の中でハマってる音楽って違うので、それをうまくタイムリーに入れると曲のアレンジとか仕上がりが変わってくるんですよ。だから、前にやったネタとの被りを避けるためにも、無理やりかもしれないけどそういうのを入れて、毎回違う雰囲気を出すようにしてます」
関「あえて意味をつけるなら、密林の中でもがいてるって感じを出したかったってことにします(笑)。動物の声を録ってる時は〈それはちょっとジャングルじゃないよ〉とか〈それはサバンナだよ〉とか言い合って」
内田「めっちゃコイツ(長谷部)が下手くそなんですよ」
長谷部「いや、俺は憑依型の人間なんで(笑)」
関「全員やったけど、一人だけ人のまんまの声なんですよ」
長谷部「やっぱ
内田「類人猿な(笑)」
一同「(爆笑)」
千葉「それを言うなら霊長類か」
内田「もういいよ(笑)!」
長谷部「これそのまま使ってください(笑)」