千葉大樹(キーボード)、関将典(ベース)、内田怜央(ヴォーカル)、長谷部悠生(ギター)、益田英知(ドラムス)
 

ヴォーカル内田怜央とBREIMEN高木祥太による対談や、過去3回のインタビューで、これまでその特異なバンドの生態と活動を追ってきたKroi。その集大成とも言えるメジャー・ファースト・アルバム『LENS』が、2021年6月23日に世に解き放たれた。

バンド名の由来のひとつにもなっているブラック・ミュージックを始めとする多種多彩な洋楽から影響を受け、自己流に噛み砕いて生み出された『LENS』の楽曲たちは、影響を受けた音楽と同様に多種多彩であり、それでいてそのグルーヴ感、ファンクネス、クールさ、茶目っ気など、この5人にしか生み出せない軸が1本通ったものに仕上がっている。そんな各楽曲の制作秘話を、いつものように冗談を交えながら5人が語る。

Kroi 『LENS』 ポニーキャニオン(2021)

 

ずっと焦ってた

――いよいよメジャー・ファースト・アルバム『LENS』がリリースされました。Kroiについての基本的な情報は、これまでの全3回にわたるMikikiでのインタビューや、bounce、TOWER PLUS+(後日掲載)のインタビューでも読めるので、ここではもう少し突っ込んだところと各曲の制作秘話について訊かせてください。かつてKroiは〈出れんの!?サマソニ!?〉などいくつかオーディションに出ていますが、結成当時の目標は何だったんですか?

関将典「俺ら4人で結成して(千葉大樹は後から加入)、ちょうど2か月後が〈出れんの!?サマソニ!?〉(2018年)の応募締め切りだったんですよ。で、持ち曲が2曲しかないのにアンケートに〈10曲ある〉って書いて、とりあえず応募して、出たら最終審査まで行っちゃったんです」

内田怜央「スタジオで白目剥きながら歌った動画が、なぜかいいって言われてね(笑)」

「約3000組のうち最後の30組まで残っちゃって、結成2か月でそこまで行けたからさすがに図に乗っちゃってたんですけど、最後の最後で案の定落ちて。そこから2か月くらい何もできない期間を経て、いくつかのライブハウスに声かけてもらって、〈俺らにもまだやれることがあるな〉って1年間コツコツ活動して。だから2019年の〈出れんの!?サマソニ!?〉は応募した段階から〈今年は出れるっしょ〉みたいな自信はありましたね。2年目は案の定最終審査も通って本戦に出れるというところまでいった。まあ、実際出てみたら前2列が埋まるかどうかくらいのお客さんの数だったんですけど(笑)」

〈出れんの!?サマソニ!?2019〉最終審査の様子、Kroiは3:40ごろから
 

――結成して1か月で初ライブもやるし、Kroiはスピード感が速いですよね。

内田「もう本当に焦ってんですよ。メンバーもみんな焦ってると思うけど、俺は特に焦ってて。昔からドラムをやってて、小学校高学年くらいになると発表会とかで〈あの子すごくうまい〉みたいな評判になってたんですよ。で、〈中学2年生くらいになったら天才中学生ドラマーになってテレビに出てるんじゃないかな〉なんて安易な想像をしてたんですけど、気付いたら中2になってて。〈何してんだ俺?〉ってなって、そこから曲を書き始めたんですよ。で、もうその時からずっと焦ってるんですよ」

一同「(笑)」

内田「だから高校卒業するかしないかくらいの時なんて、本当に〈ヤベヤベヤベヤベ~〉みたいな感じで。曲もスパスパ書いてましたし」

――怜央さんの歌とギターはいつからなんですか?

内田「その、曲を作り始めた中2の頃からですね。友達もいないし、中高と軽音部もなかったし、自分で曲作って歌入れるしかねえなってことで、曲っぽいものを作り上げるスキルが付いていった感じで。もちろん人様に聴かせるものではないですけど、周りに頼める人がいなくて」

――今でも焦りはあるんですか?

内田「まだ時々ありますよ。ひとつは自分が生きてる間に納得できる作品ができるかどうかっていうこと。自分が生み出せる作品への期待からの焦りですね。もうひとつはバンドなのでみんなで上に行こうっていう目標とプレッシャーがあって、そこから来る焦りです」

――今回のメジャー・デビューっていうのは一番分かりやすく目標がひとつ上の階層に上がったところだと思うんですけど、みなさん何か変わりました?

「やれることは変わったし、俺らが今までやってきたことを大きなスケールでできるようになったとは思いますけど、基本的にやってることは変わらないです。関わってくれる人が増えて、俺ら自身も考える余裕や時間ができたっていうのが一番の変化かもしれないですね」

長谷部悠生「今まではメンバーとマネージャーとカメラマンの7~8人で内製してたしね」

内田「あとはこういうインタビューとラジオが増えました。だからお喋りを頑張らないといけないなって思ってます(笑)」

千葉大樹「演奏だけをやりたいならスタジオ・ミュージシャンになればいいもんね。見た目とか喋りとかいろんなところで自分たちを表現しないといけないのがバンドじゃないですか。そういうところがいいなって思うんですよね」

――でも5人はめっちゃ喋りがうまいですよね。

内田「そんなことないですよ」

千葉「インタビューを受け始めた時は、(長谷部)悠生なんて何言ってるか全然分かんなかったですよ」

「酒井さん(インタビュアー)の時だって、終わった後に反省会をして」

益田英知「インタビュー終わった後、関に怒られるのが憂鬱だった~(笑)」

「益田は言っちゃいけないことをぶちかましちゃう癖があるのでその塩梅が分かるようになったよね」

――でもおとなしくならないでほしいです(笑)。

益田「さっき別のインタビューで〈CHAIとかの今をときめくアーティストってフィーチャリングが多い〉って言う話になって〈Kroiはどうですか?〉って訊かれて。〈でも僕らはシャイですからね〉って答えた時に(CHAIのマネをしながら)〈We Are シャイ!〉ってずっと言いたくて」

一同「(爆笑)」

「益田~。〈We Are~~〉って言ってくれたらみんなで〈シャイ!〉って言ったのに!」

千葉「いやいきなりは難しいだろ!」

――(笑)。以前、怜央さんがレッチリについて喋ってた時に、〈アルバムごとにちゃんとやりたい音楽があってそれを毎回表現してるのがすごい〉って言ってて、じゃあ今回Kroiが、メジャー・ファースト・アルバム『LENS』でそもそも表現したかった音楽っていうのは一体どういうものだったんですか?

内田「(紙資料を指して)こういうことです(笑)」

一同「(笑)」

――(笑)。じゃあ質問を変えて、結果的にどういう作品になりました?

内田「全体的な所感としては、ファンキーではあるなということ。それからいなたいサウンドが多いなと言うこと。このサウンド感とか世界観っていうのは前作の『STRUCTURE DECK』(2021年)に通ずるものがあって――っていうのも作っている時間が結構被っているというのが大きいんですけど。なので『STRUCTURE DECK』をより進化させたもの、みたいなイメージはあります。

でも、このアルバムが出来上がるちょっと前に俺は、なぜかは知らないけど『STRUCTURE DECK』からの流れみたいなものを1回ここで終わらせたいなと思って。〈ここで第一章が終わる〉っていう錯覚じゃないけど、だからここから先は自分の中で〈第二章〉にしなくちゃいけないなと思っているところはあります」

――おお、1作目にしてもうその感覚ですか。

内田「〈Kroiの第一章〉と言うよりも〈人生の第一章〉っていう感じがする。人生で初めてのアルバムを出せる。だから人生の第一章はここまででもいいんじゃないかって思うんですよ。でもこの後、第二章が始まるからにはいろいろ研究をしてから次の作品を皆様の前にお出ししなければな、という気持ちもあります。自分で自分のハードルを上げてるし、上げたところで大して変わらないと思うんですけど(笑)」

一同「(笑)」