もやのなかに佇むような状況のなか、4人が目を向けたものは――? 自分たちの根底に立ち返り、90~2000年代の〈突き抜けた音楽〉を現代的な解釈で追求したニュー・アルバムが完成!
突き抜けた音楽
DYGLが2年ぶりとなるサード・アルバム『A Daze In A Haze』を完成させた。ファーストはNY、セカンドはロンドンと、これまで国境を越えて自由な活動を展開してきた4人だが、本作はパンデミックの影響もあり、初めて国内でレコーディングを敢行。サウンドの軸を担っているのは、90年代半ばから2000年代初頭にかけてのオルタナティヴ・ロック、パワー・ポップ、ポップ・パンクなどで、トレンドに振り回されるのではなく、自分たち自身の探求心に従って〈突き抜けたもの〉をめざした。
「去年の夏くらいに恵比寿のバーに一回みんなで集まったときに、ファウンテインズ・オブ・ウェインとかを聴いて、〈突き抜けた音楽もいいよね〉みたいな話をしたのはすごく覚えていて。そのときカッコイイとされているもの、そのときオシャレとかファッショナブルだとされているものというよりは、〈自分たちの根底にあるものに戻ってやろうか〉みたいな話もしました」(Shimonaka Yosuke、ギター)。
「コロナが始まった頃は、自分的にはあんまりバンドが響いてなくて、ラップトップで作られたような音楽のほうが気分的にはハマってたんですけど、そこからしばらく経って、逆にものすごく突き抜けたものを聴きたい気分になったんです。今回やったことって、ファーストやセカンドを作ってたときの自分にとっては過去のものになってたけど、今なら時代的にも気分的にも、あえてやってみたいと思えたんですよね。前だったら〈ブリッジ・ミュートはやらない〉とかあったけど、そういうのもちょっとずつ解放して作ったアルバムです」(Akiyama Nobuki、ヴォーカル/ギター)。
ファースト・アルバムのプロデューサーがストロークスのアルバート・ハモンドJrだったこともあって、DYGLといえば2000年代前半のガレージ・ロック/ポスト・パンク・リヴァイヴァルをルーツとするバンドというイメージが今もあるにはあるが、本作の影響源となっているのはそれよりさらに以前の、音楽の原体験とも言うべきアーティストや作品だという。
「DYGLを組んだときはヴューとかフランツ・フェルディナンドとかを聴いてたけど、中学生の頃はブリンク182とかグリーン・デイが好きだったし、あとはリライアントKとかもことあるごとに聴いてはいたから、今回はそういう部分をあえて出して、〈歌える作品にしよう〉っていう意識もありました。USオルタナもみんなもともと好きだし、そうやっていろんなところから拾い上げたというか」(Akiyama)。
「オルタナは昔から好きで、俺にいろいろな音楽を教えてくれた友達の兄ちゃんがビッグマフ(ファズのエフェクター)のコレクターで、ちょっと変わった人だったんです(笑)。それでダイナソーJrとかはよく聴いてました」(Kachi Yotaro、ベース)。
「僕も中学でギターを始めたときはグリーン・デイのライヴ盤をよく聴いてたし、ソニック・ユースのマネをして、ギターに蛍光のテープを貼ったりしてました」(Kamoto Kohei、ドラムス)。
「オルタナも好きだし、パワー・ポップもめっちゃ好きです。ただ、俺のなかではビートルズからメロディーとかコードの影響を受けた人たちが、もうちょっと後の時代にそのときの新しい録音技術でビートルズっぽい曲をやってるのがパワー・ポップ、みたいなイメージもあるんですけど、今回やろうとしたのはそういうビートルズを意識したものではなかったですね」(Shimonaka)。