フランツ・フェルディナンド

フランツ・フェルディナンドが待望のニューアルバム『The Human Fear』をリリースした。フランツらしさを受け継ぎながらテーマ的にも音楽的にも新たな挑戦をし、ポジティブなムードに満ちた快作は早くも高い評価を得ている。そんな新作のリリースを記念して、日本のアーティストたちに〈フランツ・フェルディナンドと私〉というテーマで思いを綴ってもらった。第5回に登場してもらうのはDYGLのNobuki Akiyama。 *Mikiki編集部

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FRANZ FERDINAND 『The Human Fear』 Domino/BEAT(2025)

 

DYGL

フランツ・フェルディナンドと私
by Nobuki Akiyama (DYGL)

先日、撮影のため台北に行く機会があったので地元のレコードショップに立ち寄ってみると、懐かしいような、でも初めて聴く曲が流れてきた。新譜が出たんだな、とすぐにわかる声。フランツ・フェルディナンドの6枚目のアルバム『The Human Fear』1曲目の“Audacious”だった。

喋りから即入るイントロ。それをサラッとやれる感性、ぶちぶちのファズギターがイケすぎている。

 

2005年世界は踊る! フランツと恋に落ちる!

フランツ・フェルディナンドの2ndアルバム『You Could Have It So Much Better』の帯には、そんなキャッチコピーが書かれていた。2005年。丁度20年前。2002年あたりから2007年あたりにリリースされたイギリスのバンドの作品からは、魔術的と思えてしまうような素晴らしいアイディアとエネルギーがこれでもかというほど感じられて今でも本当に大好きな作品が多いのですが、正にその時期。セルフタイトルのファーストアルバム『Franz Ferdinand』のリリースもセカンドの僅か1年前。どちらも正にその魔法がかった時期にリリースされた作品だった。

2作とも、俄かに信じられないほど素晴らしい楽曲が惜しみなく詰め込まれていて、今改めて聴き返してもその完成度の高さに驚いてしまう。これ以外考えられないと思える完璧なメロディと無駄のないアレンジ。タイトな演奏と他のバンドにはない、独特なムード。帯のキャッチは大袈裟ではなく、確かに私もしっかりと心を掴まれた。

 

中学生の頃、当時はあまり時代感覚もなく何がファーストで何がセカンドなのかもよく分からず適当に音楽を手当たり次第漁りまくっていたのだけれど、振り返ると何故かセカンドから聴き始めたバンドが多かった。ザ・ストロークスしかり、ザ・リバティーンズしかり、ザ・クリブスも。

そのセカンドから聴き始める習慣(?)に漏れることなく、奇しくもフランツ・フェルディナンドもセカンドアルバムが初めての出会い。バウハウスを思わせるようなシャープなデザインのジャケットは、それまで知っていた国内外の他のアーティストとはまるで違った世界観で、音楽を聴いていてもCDを手にとってジャケットを眺めていても、まるで夢を見ているようだった。“The Fallen”、“Do You Want To”、“This Boy”と畳み掛ける楽曲の素晴らしさに自然と笑ってしまう。何なんだこれは。

当時はDVD展開も今よりずっと元気があったので、〈Tour De Franz〉と銘打たれたツアードキュメンタリーやライブ映像、初期のオフィシャルウェブサイトを閲覧できるコンテンツなど盛りだくさんのDVDを手に入れて、せっせとライブ映像を観ていた(最近見返したら何故かカラオケ音源と映像まで入っていた)。

個人的に音楽ルーツを語るインタビューのたびに名前を出してしまうザ・ヴューや、同じく当時入れ込んでいたザ・フラテリスと並んで、フランツ・フェルディナンドを通してもまた、スコットランドの音楽の懐深さを知ることとなった。