Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、数無制限でNEWな楽曲を軸に、たまに私的マイブームも紹介していくので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません◎ *Mikiki編集部

 

【高見香那】

Magic, Drums & Love “MOMONA”

住所不定無職のメンバー擁するロックンロール・バンド、明日5月15日(水)リリースのセカンド『HURRICANE UPSETTER』の収録曲。トロピカルでオリエンタルなムードなこの曲、ダンス・パーティーの終盤というか、映画のクライマックスのパーティー・シーン(登場人物が全員大集合する感じの)でかかっていそうですごく良い。クラーク内藤氏によるJinta=Jintaへのインタヴューの〈もう踊れなくてもいい〉の下りが興味深かったですが、たしかに踊らせようという気はなさそうだけど、〈踊れそうな人は踊りなね、そこは自由でね〉という懐の深さを感じる曲。

 

【酒井優考】

acd. “accident!!”

もうタイムラインでいろんな人が話題にしてるので気になって。元ecosystemのメグミを中心とした女子3人の爆裂サウンド。(偏見入ってるかもしれないけど)関西の女子らしいエネルギーの塊みたいなものに元気をもらいました。今週末の東京のライヴから盤も売り出すらしいです。

 

SEQUOiA “swans swim”

先日惜しくも解散したManhole New Worldのメンバーたちが、バンド解散からわずか48時間で新バンドの結成と同時に発表した楽曲。すごいリズムの崩し方。なんか来そうな気がします。

 

siraph “Past & current Xfade”

元school food punishmentの蓮尾理之と山崎英明、ハイスイノナサの照井順政らによる5ピースが、ライヴ会場限定だったデモCDの音源を新規録音したアルバム『past & current』を先週リリース。アダルトでクールで近未来的ですごくイケてるのに、動画も配信もないからせめてアルバムのクロスフェード音源だけでも試聴してみてくださいな。

 

きゃりーぱみゅぱみゅ “きみがいいねくれたら”

アーティストごとにテイストは違うし、そのテイストも常にアップデートしてるってのに、どうしてヤスタカの曲はすぐにヤスタカだとわかるのか。この曲はイントロの8小節が特にヤスタカ。

 

星プロ竹下通り “はらじゅくのうた”

そういえばきゃりーちゃんで思い出した。もう15年以上昔からずっと動向を気にしてるPlus-Tech Squeeze Boxのハヤシベトモノリ氏(大天才)が今月頭に突然Twitterを始めてビックリしたんですが、そこで〈これの音楽を3曲作りました〉と紹介していたこの動画がめっちゃおもしろかったんです。星野源にそっくりな星あゆむというプロデューサーが立ち上げた星プロというキャラクターのプロダクションと、原宿・竹下通りがコラボした映像で、そんちゃん、LUCKY TAPES高橋海、tricot・ジェニーハイのイッキュウさん、ネクライトーキーのもっさ、そして島爺という〈なんだその人選!〉なヴォーカル陣の歌うCMを見事にマッシュアップ。映像狂ってますよね(笑)。(で、ハヤシベ曲は最初と最後の以外のどれ?)

 

【天野龍太郎】

王舟 “Come Come”

試聴会には行けなかったけれど、いろいろと伝え聞いたことから予想してみると、どうやら王舟のニュー・アルバム『Big fish』は一人で録音した前作『PICTURE』(2016年)と周囲の音楽家たちと作り上げたファースト・アルバム『Wang』(2014年)との中間、みたいな手触りの作品になっていそう。バンドで録音したものもあれば、王舟みずから演奏した音もあるという。

5月22日(水)にリリースされる『Big fish』からシングルとして届けられた“Come Come”は、そんな新作のムードを予感させるもの。ごく初期のCD-R作品『賛成』『Thailand』にも似たローファイでささやかで親密な質感と、風通しのいいフォーク・ロック・サウンドとが同時に聴こえてくる。変わっていないといえば変わっていないのかもしれないけれど。

『Big fish』にはトクマルシューゴ、見汐麻衣、annie the clumsy、そしてtamao ninomiyaがコーラスとして参加しているとか。新しい仲間もいれば、昔からの付き合いの音楽家たちもいるというこの感じ。そういう人選もすごくおもしろくて、王舟と彼/彼女らの声のハーモニーがどんなふうに聴こえるのか、すごく期待をしています。

 

BABYMETAL “Elevator Girl”

2018年の“Distortion”“Starlight”以来となる新体制BABYMETALのニュー・シングル。ジャングル風のイントロからヘヴィーなギターとブラスト・ビートがうなりをあげる冒頭の30秒が強烈。サビで聴けるようなJ-Popとしてのポップネス=軽さ、そしてメタル・ユニットとしての重さの同居が彼女たちの真骨頂だったと、いま一度痛感させられます。

この“Elevator Girl”も含めた3曲はいずれもシリアスなものではあるけれど、過度にポップであろうとしないこの路線、すごくかっこいいのでこのまま突っ走ってほしいと思いました。また彼女たちの現在の立ち位置を考えると、洋楽連載〈Pop Style Now〉で取り上げるほうが適当だったかも、という気も。西山瞳さんによる解説が待ち望まれます。

 

AOTQ “契約(​feat​.​初音ミク)”

奇妙によれたビート、蒸気が充満したヴェイパー/ニューエイジ・サウンド、そのなかで気だるげ(?)に歌う初音ミク。Local Visionsからの傑作『e-muzak』『ALONE』で知られるAOTQが、 “Farewell Song No​.​1(​feat​.​初音ミク)”に続く初音ミクとの共演曲を発表しました。これこそ2019年のプラスティック・ソウル。ロボットたちが働く工場のBGMとして延々とリピートされていそう、なんてSF的な想像力を働かせてしまいました。

 

【田中亮太】

Homecomings “Cakes”

楽曲についてはレヴューで書いたので、今回は先日に公開されたMVを紹介。“Cakes”を主題歌に配した映画「愛がなんだ」と同じく、今泉力哉が監督を務め、珍しくメンバーが演技らしい演技をしています。4人で食卓を囲むシーンを中心に、お花に水をやったり洗濯物を干したり。成美さん&穂那美さんがシェアしているお家に畳野さんと福富くんが遊びに来るという舞台設定だと思うんですが、どうなんでしょうか。

映画「愛がなんだ」は、〈ここにいない人〉について登場人物が話す、いくつかのシーンが印象的でした。それは愛をめぐる権力関係が残酷に発露する瞬間や、〈君の弱さを探すため〉のささやかながら切迫した営みが描かれていました。このMVに映る、1つだけ残された苺のショートケーキ。そのポツンとした佇まいに、いるべき誰かの不在や寄る辺ない心が投影されている気がします。本当に寂しいとき、思い出す人っていったい誰だろう。

 

DYGL『Songs of Innocence & Experience』

DYGLが7月3日(水)にリリースする新作『Songs of Innocence & Experience』。なんと期間限定での全曲フル試聴がスタートしました。ビートとギター、そしてレイジーなメロディー……潔いまでにシンプル&タイトなロック盤です。随所で匂わすセンチメンタルでムーディーな感傷は、スネイル・メイルやルーシー・ダカス、カー・シート・ヘッドレストらUS勢とも空気を共有しているもの。これは傑作でしょう。聴けるのは、明日の5月15日(木)いっぱいなのでお早めに。