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本隊以外の活動も多岐に渡るBuffalo Daughterのオルタナティヴな歩み

 ハバナ・エキゾチカを解散したシュガー吉永と大野由美子、そして山本ムーグという現メンバーにドラマーの小川千果を加えて93年に結成されたBuffalo Daughter。94年にはインディー誌「米国音楽」主宰のレーベル、Cardinalより『Shaggy Head Dressers』を、95年には『Amoebae Sound System』を発表し、同年に小林が脱退。その後、ルシャス・ジャクソンの来日公演時にメンバーへ渡した音源がマイク・Dの耳へ届いたことをきっかけに、ビースティ・ボーイズ主宰のグランド・ロイヤルと契約する。96年には初アルバム『Captain Vapour Athletes』をリリースし、USの主要都市でライヴも行う。そのツアーの移動時に目にした同じ景色の連なりとクラウトロックの反復感に触発され、98年には2作目『New Rock』を発表。99年のリミックス盤『WXBD』を挿み、ジョン・マッケンタイアやマニー・マークも参加した2001年作『I』、テクノ前夜の意匠をさらに発展させた2003年作『Pshychic』、そこからさらにニューウェイヴ色も帯びた2006年作『Euphorica』と、ワールドワイドなリリースを重ねていく。

 2010年には自身のレーベル、Buffalo Ranchを設立。〈物理〉をテーマに据えつつ、ヒップホップへの接近も試みたアルバム『The Weapons Of Math Destruction』を送り出すと、2013年には結成20年周年を記念した初のベスト盤『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』を発表。入手困難な過去音源や、新録/カヴァー曲、ライヴ/リミックス音源などで自身の音楽性をフレッシュに再提示した翌2014年には、オリジナル作『Konjac-tion』も登場。イギリスの現代アーティスト、ピーター・マクドナルドの展示会におけるコラボに端を発した本作はリミックス盤との2枚組。一筋縄ではいかない〈パーティー感〉を反映した楽曲群には坂本慎太郎や砂原良徳らもクレジットされている。そうしたリリースや世界的なライヴ活動で本隊を動かし続けつつ、山本ムーグはさまざまなアーティストのアートワークを担当。シュガーと大野もサポート・プレイヤーとして多くの外仕事に携わりながら、シュガーは吉村由加とのMETALCHICKSやホアン・アルデレッテ&マーク・ジュリアナとのバンド、ヘイロー・オービットとして、大野はMaika Loubté、AZUMA HITOMI、新津由衣とのユニット、Hello, Wendy!や、石井マサユキ、ZAKと共に気鋭のアーティストとコラボするプロジェクトのXavierなどでも作品を発表しており、各々の動きも多岐に渡っている。 *土田真弓

左から、ハバナ・エキゾチカの92年作『火星ちゃんこんにちは』(ミディ)、Buffalo Daughterのベスト盤『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』、同2014年作『Konjac-tion』(共にU/M/A/A)、ヘイロー・オービットの2016年作『Halo Orbit』(BEAT)、Hello, Wendy!の2018年作『No.9』(ユニバーサル)、Xavierの2021年の7インチ・シングル『Call In Sick feat. chelmico/球体 feat. 塩塚モエカ』(Pヴァイン)