坂本龍一監修の音楽ガイド、今回はピアノがテーマだが、音楽さえも超えた芸術論となっているのが実にユニークだ。前半では鍵盤楽器の発展史を追いながら、ピアノという楽器の本質(音が粒状、12音しかない、楽譜に表現しやすい)を読み解き、後半ではプレイリストの20曲(QRコードで呼び出す)に触れながら、自らの様々な体験(修業時代やYMO時代を含む)や音楽観(響き、弱音への興味)を縦横に語り尽くしてゆく。ピアノを多面的に捉え、その不自由さにも斬り込み、広く芸術の本質に迫る内容はまったくスリリング。哲学的内容にもかかわらず、対話形式の平易な話し言葉で書かれているのも素晴らしい。