tamao ninomiyaがニューアルバム『we are different』『she always looks so confused』を2021年11月19日にリリースした。
〈lo-fi chill bedroom pop〉をテーマに掲げ、2017年から活動を行っている宅録音楽家のtamao ninomiya。2021年は、主宰するレーベル〈慕情tracks〉のコンピレーションアルバム『minami no shima』のリリース、ディガー集団〈lightmellowbu〉のZINE「lightmellowbu紙Vol.5 -JAUNT-」での執筆、さらにシンガーソングライターの浅井直樹が33年ぶりに発表した新作『ギタリシア』に参加するなど、多方面で活躍をしてきた。
そんなtamao ninomiyaが、2019年12月にリリースしたEP『涙、天使、さざ波』から約2年ぶりの新作『we are different』『she always looks so confused』を2作同時にリリースした。両作はそれぞれ〈夏/二人の終わりの予感〉〈冬 / 追憶、そして次の旅路〉という対を成すイメージを表現し、異なるコンセプトで分けられていながらも、フルアルバムとして通して聴くことができる作品になっている。
『we are different』では夏の思い出を回想するかのようなノスタルジアに富んだローファイな楽曲が眠りに落ちる最中の時間を彩り、『she always looks so confused』ではオブスキュアな浮遊感にあふれるシセポップ的な電子音が迫る冬の気配を捉えているという。いずれも5曲からなるコンパクトな作りでありながらも、その余白が作品の殻を破り、現実と楽曲の世界との間にある壁を中和していくような深淵を感じさせる仕上がりとなっているとか。
『we are different』『she always looks so confused』のミキシング/マスタリングは、SoundCloudなどをメインの活動の場としているアーティストのYatchanが担当。彼の貢献によって、全体的なサウンドデザインを大きく見直すことを試みたという。
両作は、Bandcampで販売されているほか、各種ストリーミングサービスで聴くことができる。さらに、fumika kobayashiがデザインを手がけた、アクリル素材のポストカードとデジタルデータが封入された特殊なフォーマットのフィジカル版も販売される。フィジカル版には両作のアートワークを重ねることで〈第三の視点〉が浮かび上がる仕掛けが施されており、聴覚だけでなく視覚にも訴えかけるアプローチが試みられているそうだ。過去にtamao ninomiyaが発表した作品はいずれもデジタルやカセットテープでのリリースが主だったが、今回はそれらとはまったく異なるアプローチでフィジカルの価値を問うたものになっているとのこと。
『we are different』『she always looks so confused』についての、松永良平(リズム&ペンシル)のコメントは次のとおり。
遠に季節外れの手紙、あるいは
tamao ninomiyaの新作は2枚組ですよと、知人の編集者が教えてくれた。どうして教えてくれたんだろう。彼とtamaoさんの話とか前にしてたっけ?
それからしばらくして、ご本人から作品を送っていただいた。事前に「2枚組」と聞いていたものだから、さぞやすごい大作が来るのだと思い込んでいたから、封をあけてみて驚いた。「2枚」とはアクリル板にプリントされたイラストとクレジットにすぎず、音源はQRコードからダウンロードする。しかし、作品は確かに「2枚」だ。
『we are different』と『she always looks so confused』。異なる時期に出された2通の手紙のようでもあるし、自分を両側から写す合わせ鏡のようでもある。実際、前者の曲には夏の、後者の曲には冬のイメージがある。だが、その季節に聴かれることを意識したというよりは、届いたことを忘れていて積まれたCDや本の山から偶然発見した、差出人もにじんで見えなくなった手紙のような「季節外れ」感が永遠につきまとっている気がする。それは、彼女が自分のレーベル「慕情tracks」で作ったカセット・コンピレーション『minami no shima』(21年)にも感じたこと。最先端の音楽を的確に配置した現代の縮図、というより、地図には載っていない音楽家たちの部屋を訪ねて歩くフィールドワークのような感覚があった。彼女のことを作品を通じてしか知らないはずなのに「tamao ninomiyaらしいな」と、勝手にぼくは思った。
それとも、これは現代のメッセージ・イン・ア・ボトル。誰かに漂着することを願っているけれど、その誰かをわたしは知らない。そもそも受け取った人もわたしが誰なのか決して知らないだろう。だけど、2枚合わせても20分に満たないこの小さな大作は、詠み人知らずの五七五よりもバンクシーよりも近くであなたに語りかける。あなたはわたしですよと。ドキッとして振り返っても、そこには誰もいない。合わせ鏡みたいなこの2枚組があるだけなんだけどね。
松永良平(リズム&ペンシル)
閉塞の時代とされる2020、2021年に、マイペースながらも勢力的な活動を続けてきたtamao ninomiya。彼女の活動の集大成として『we are different』『she always looks so confused』を聴くことで、2年という月日のなかで更新された新たなムードを伺い知ることができるかもしれない。
RELEASE INFORMATION
tamao ninomiya『we are different』『she always looks so confused』
リリース日:2021年11月19日
フォーマット:デジタル音源+クリアカード・クレジット・QRコードをジップロックに同封(2作同封)
価格:1,320円(税込)
取り扱い店舗:ココナッツディスク池袋店/バサラブックス/JET SET/pianola records
tamao ninomiya 『we are different』 tamao ninomiya(2021)
リリース日:2021年11月19日
品番:tmo-003
TRACKLIST
1. we were so different
2. 魔術師の弟子
3. eazy maze
4. attendance record
5. 夏のページ
tamao ninomiya 『she always looks so confused』 tamao ninomiya(2021)
リリース日:2021年11月19日
品番:tmo-004
TRACKLIST
1. fictional farewell
2. 唇は純粋無欠
3. mouillette
4. elescope
5. chiisanabinn