亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。まずは訃報から。デヴィッド・ボウイやクイーン、ルー・リード、セックス・ピストルズらを撮っていたことで知られるカリスマフォトグラファー、ミック・ロックが11月18日に74歳で逝去。ご冥福をお祈りします」

天野龍太郎「僕がショックだったのは、ラッパーのヤング・ドルフ(Young Dolph)が殺されたことです。ドルフは17日、地元のメンフィスで銃撃に遭って亡くなりました。母親のためにクッキーを買いに行っていたときのことだったそうで、あまりにも悲劇的です。まだ36歳でした。Pitchforkの追悼記事にもあるように、寄付や慈善活動をしていたドルフは、〈ヒップホップ〉というもののひとつを体現していたと思うんですよね。本当に残念です。RIP」

田中「華やかな話題もお伝えしましょう。〈AMAs〉の略称で知られる〈アメリカン・ミュージック・アワード〉の授賞式が先ほど開催されて、BTSが3冠に輝き、アジアのアーティストとして初めてアーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞する偉業を達成しました。オリヴィア・ロドリゴやシルク・ソニックなど、2021年を代表するミュージシャンたちのパフォーマンスも話題になっていますね。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

★TOWER RECORDS MUSICのプレイリストはこちら

 

Jockstrap “50/50”
Song Of The Week

田中「〈SOTW〉はジョックストラップの新曲“50/50”!  ジョージア・エレリー(Georgia Ellery)とテイラー・スカイ(Taylor Skye)のデュオであるジョックストラップは、ストレンジなエレクトロニックポップサウンドで注目を集めてきました。ジョージアはブラック・カントリー・ニュー・ロード(Black Country, New Road)のメンバーでもありますね。彼女たちは以前、ワープから作品をリリースしていたんですが、この曲の発表と同時にラフ・トレードと新たに契約したことをアナウンス。その移籍にも驚きました」

天野「UKのエレクトロニックミュージックを象徴するレーベルからポストパンク/インディーロックの名門へという変化にもかかわらず、この“50/50”はこれまででもっともアッパーでダンサブルでエレクトロニック、というのがおもしろいですね。〈Ahh, ayy, ooh, eee, ahh〉というボイスサンプルがキャッチーですし、アシッドテクノ的なサウンドを基調にしつつ、途中でボルチモアクラブっぽい展開が出てくるところが愉しい。なんでこんな曲になっているのかは、さっぱり理解できませんが(笑)。アンダーグラウンドなパーティーでヒットしそうな曲ですね」

田中「ミュージックビデオがまさにそんな感じですよね。小さなクラブでお客さんが飛び跳ねているところを捉えていて、幡ヶ谷forestlimitバイブスを感じました(笑)。プレスリリースによると、この曲はテイラーが扁桃炎で寝込んでいるときに書かれたそうです。〈馬鹿みたいに騒いでパーティーしたい!〉という彼の願望が、最高のパーティーチューンとして昇華されたのではないでしょうか。ラフ・トレード移籍後のジョックストラップも要チェックですね」

 

Big Thief “Time Escaping” 

天野「こちらも〈SOTW〉級の素晴らしい曲です。ビッグ・シーフのニューシングル“Time Escaping”」

田中「いまやUSインディーロックシーンを代表するバンドと言っても言いすぎではないビッグ・シーフが、新作『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』を2022年2月11日(金)にリリースするとアナウンスしました。しかも、同作は2枚組なんだとか。彼女たちの旺盛な創作意欲には圧倒されますね」

天野「新作、ジャケットがかわいいですよね(笑)。今年は、当連載で紹介した“Little Things”のリリース以降、ビッグ・シーフは素晴らしいシングルを発表しつづけてきました。なかでも、今回の“Time Escaping”はかなり実験的な曲ですよね。変わった弦楽器の音が左右のチャンネルで鳴っていますが、これはプリペアドギターか何かでしょうか? かなりひずんだ、奇妙な音色を奏でています。それに、エイドリアン・レンカー(Adrianne Lenker)のリリックはますます研ぎ澄まされていますね。歌いだしの〈電気の波、エネルギーの急流/エントロピーのフェイズと接触をすりぬけて/静かな川が永遠に逆流している〉なんて、具体性と抽象性が同居していて超しびれました」

田中「ちなみに、新作には、米NY州北部、ロッキー山脈のトパンガ・キャニオン、コロラド州のロッキー山脈、アリゾナ州ツーソンの4か所で5か月かけてレコーディングされた45曲から20曲が厳選されて収録されるんだそうです。バンドのクリエイティビティーが尽きない様子が、そんな情報からも伝わってきますね」