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いつもとなんか雰囲気が違うな

――中川さんは新作に至るポニーのヒサミツを間近でどう見ていました?

中川理沙「彼は平日に仕事をしているから、休日になると必ず何か録音してるんですけど、今回は私がお風呂に入ってる間とかに歌声がよく聴こえてきたんですよ。それを聴いていて〈いつもとなんか雰囲気が違うな。これはどうなるんだろう?〉と思ったりしてました」

ポニー「いや、そんなに違ったかな(笑)」

中川「私は結構出来上がりを楽しみにしてました」

――本人よりも中川さんのほうが〈ちょっと違うぞ〉と感じていたんですね。

中川「そうです。メロディーの感じとか」

――エキゾを作るぞということで意識的に変えていたわけじゃなく?

ポニー「個人的には、作り方をそんなに変えた感覚はないんですけど、“タイフーン・マンボ”とかは〈自分がこれまで作ってこなかった感じだな〉とは思ってました。テーマありきで作ってるから、いままでのメロディーとはちょっと違うものが出てるのかもしれないけど、作り方自体はそこまで違わないです。結局作ってるのは自分なので、根っこの部分はファーストから変わらない。ファーストをテーマをあんまり決めずに作ったことが、その後のテーマを縛った3枚につながったと思うんです」

『Portable Exotica』収録曲“タイフーン・マンボ”
 

――録音はリモートですよね?

ポニー「はい。今回は完全リモートで録りたかったので、録音メンバーは、この人なら自宅録音にも対応できるだろうという人を探したんです。そうしたら周りに信頼できる人がたくさんいたので、彼らにお願いしました。増村(和彦、ex-森は生きている)くんは大分在住ですけど、自分のスタジオを地元に作ってるので、そこで録ったドラムを送ってもらいました」

――今回、歌詞にも変化がないですか? “やわらかな愛”の〈君の頬に触れるのが/いつでも柔らかく/偽りない愛であるようにと〉とか、こんなにストレートなラブソングを歌ってたっけと思いましたし。

ポニー「あれは一見ラブソングですが、実は数年前に友達の子どもが2歳の誕生日を迎えるときに作って送った曲なんです。僕はあんまり自分のリアルな生活に基づく歌詞を書かないので、そういう意味ではイレギュラー。むしろ他の曲は逆にフィクション性が強いのかなと思ってますね。“ごあんない”と“やわらかな愛”だけは、自分の状況とかも含めて書いてるので、全体からは浮いてるかもしれない」

『Portable Exotica』収録曲“やわらかな愛”
 

――でも、歌詞の内容はフィクションだとしても、曲を通じてポニーのヒサミツという人格が伝わってくるから、聴いてるほうは不思議とフィクションっぽく感じないんですよ。漫画家その人自身を意識したくなるタイプの漫画みたいな感じ。

ポニー「(聴いてる人の)頭のなかで絵が思い浮かぶといいな、と思いながら作っているところはありますね」

 

TETRAはすごく考えてくれる

――今回、TETRA RECORDSからのリリースですけど。

ポニー「シャムキャッツの解散後、TETRAもまたあたらしく動き出してる気がしたんです。それで、バンドでベースをやってもらってる大塚くんに、今回のアルバムについてリリースの相談に乗ってもらえるでしょうか?と連絡したら、前向きな返事をもらえて」

中川「(TETRAに)すごくよくしてもらっているなと思います。リモートでの打ち合わせも頻繁にやってるし」

ポニー「いろいろ考えてくれるんですよね」

中川「やっぱりシャムキャッツをやっていた人たちという、こういう音楽のことをいちばんよくわかってる人たちが相談に乗ってくれて、アドバイスもしてくれる。歳も近いし、(音楽の)届け方とかも知ってる人たちだし、すごくいい形でやれているんじゃないかな」

ポニー「僕はこれまで(リリースの戦略とかを)意識せずに活動しちゃってたんですが、今回はサブスク解禁の日がCDアルバムの発売日と一緒とか、その前にシングルで少しずつ公開していくとか、そういう現在では当たり前になっている発表の仕方をやったんです。そうすることで聴いてもらえる人たちの層も全然変わるんだなと実感しました」

――ポニーのヒサミツは、ある意味、伸び伸びと育ってきた。

ポニー「そうですね。放牧されてました(笑)」