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5年ぶり7枚目のオリジナルアルバムは、ボノボ史上最もドラマチックでダンンサブル

 先日発表された第64回グラミー賞でトータリー・イノーマス・エクスティンクト・ダイナソーズとの“Heartbreak”、オーラヴル・アルナルズとの“Loom”という2曲のコラボ・トラックがノミネートされ、依然、評価の高さを証明したボノボが7枚目のオリジナルアルバムを完成させた。作品を重ねるごとに熟成させてきたメランコリックなムードとダンンサブルな要素の融合がより大胆に昇華され、まるで人生の浮き沈みを表現したかのように感情表現を湛え、今を、そして未来へと突き進む力強さが漲る人生賛歌ともいえそうなドラマチックさだ。

BONOBO 『Fragments』 Ninja Tune/BEAT(2021)

 本作をそこまで高めた原動力は前作 『Migration』に伴う大規模ツアーで世界各地を巡ったことだという。「今回のアルバムの殆どのインスピレーションもそこから来ていると言えるね。ツアーで世界を旅すると、様々な文化に触れるし、沢山の景色を目にする。その経験は、僕にとっては常に刺激的であり影響を受けるんだ」(ボノボ)。こうして良好な作用を受けながらも2年に及ぶツアーからLAに戻るや否や、BLM運動、山林火災、大統領選、加えてロックダウンによる環境の変容も影響し、作業を進めるも一時は完成が危ぶまれ、「最終的に一旦すべてを白紙にするしかないと考えて、作業を停止した」という。

 その矢先、ジャミーラ・ウッズから届いた音源が状況を打破。「アルバムで最重要のピースが手に入ったのがわかった」という彼女が参加した“Tides”は、本作で活躍するミゲル・アトウッド・ファーガソンのストリングスとララ・ソモギのハープにより幻想的な空気を纏い、慈悲深き歌唱が安らぎをもたらす本作のハイライトのひとつとなった。またヴォーカル曲では友人のジョーダン・ラカイと共に「ムーディーマンやセオ・パリッシュらの影響を受けた」“Shadows”、「彼の声とエクスペリメンタルな要素が大好き」という88ライジングのジョージが内省的な歌声で微睡む“From You”も魅了されること必至だ。

 そして最大の驚きは強靭なビートと多幸感が注ぐ壮大な“Otomo”。ブルガリアのクワイアのサンプルが印象的なこの曲は、「あれこそ僕が必要なものだったんだよ」と称えるドラムパートがオフリンから届き、レイヴやベース・ミュージックが宿るUK色が濃厚な仕上りで、現実世界のダンス・フロアへの帰還を宣言するかのようだ。「大変だったのは、ダンスミュージックとメロウなサウンドのバランス。アルバムの中で全てのタイプのサウンドをうまく繋ぎ合わせるのが一番難しかったね」と苦心を吐露するだけあり、静と動のふり幅は過去に例をみない落差だが、様々な音の断片を丹念に紡いで誕生した音は眩い程に美しいのだ。