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 また、österreichとして活動する高橋國光が詞曲を担い、“イナフイナス”に続いてケンカイヨシが編曲した“水の中の”も、アンビエントな音像の中を複雑なヴォーカリゼーションが潜っていく新感覚の逸曲だ。

 「初めて聴いた時は〈これをCYNHNが歌うの!?〉って、いままでと違う曲調すぎて戸惑いもあったのですが、〈情景を思い浮かべながら歌う〉というケンカイさんのディレクションがあったので、私は深い海の底にいて水面から差す一筋の光に向かうようなイメージを持ちました。それぞれ違う場所にいながらも同じひとつの光を探してるみたいな、聴く人の心のどこかに寄り添える曲になったのではないかと思います」(月雲)。

 「自分は海底へ落ちていく中で吐いた言葉と息が水泡になって歌になる、そういう感覚で歌いました。なので歌っていて、すごく苦しかったです。〈本当はこの言葉を言いたかったんだよ〉みたいな、言い表せない気持ちでいっぱいになりました。一つの物語を読む感覚で聴いてほしいですね」(綾瀬)。

 そして、渡辺翔の詞曲をebaの編曲で送る“アンサンぶる”は一転してはっちゃけたダンス・ロック。含みのある言葉も忍ばせつつ、かつてないアッパーな勢いが楽しい。

 「キャッチーな感じがライヴで盛り上がる予感がしていて、早く披露したいです! 単純で楽しそうな反面、皮肉の効いた歌詞でもあると思うので、考察厨の皆さんも楽しめると思います。わざとふにゃふにゃ歌ってみたり、サビは跳ねる感じで強弱を意識したり、レコーディングもめちゃくちゃ楽しかったです。この曲についてイメージしていたことを渡辺翔さんとお話しして、見事に一致して感動しました(笑)。実は、ダンスも初めて翔さんからリクエストがあったようです」(青柳)。

 「“水の中の”は、みんなが見えた世界を統一して作品を一つにするイメージだったのですが、“アンサンぶる”では〈私は私、あなたはあなた〉って、ある意味エゴイスティックにやらせてもらいました。周りとのバランスを気にせず歌うという面で個人的には新しい挑戦があったし、同時に新しい発見もあって楽しかったです。この曲をどこまでみんなで遊べるか、いまから楽しみです」(綾瀬)。

 加えて既発曲の〈-ν-〉ヴァージョンでは、個々の歌唱パートや一部のコーラスも新録され、音がアップデートされた部分もある。純粋なキャリアの総括という意味を超え、「いままでの青があって、いまの青があって、未来の青がある」(綾瀬)との言葉通り、この先のCYNHNも予見させてくれる珠玉の名唱・名曲集となった『Blue Cresc.』。デビュー5周年にあたる今年の動向にも期待するしかないだろう。

 「ひとつの節目としても思い出に残るハッピーな年にしたいです! そして今年こそはもっとたくさんの場所へファンの皆さんに会いに行きたいです!」(月雲)。

 「今年こそたくさん音楽番組にも出たいです! もっといろんな場所へ会いに行って、CYNHNを知ってもらいたい。個人としては学業も落ち着いたので、いままでやりたくてもできなかったことに挑戦したいです」(青柳)。

 「〈これ以上のものはない〉と毎回心を燃やしながら進みたいと思っています。また新しい自分を知って、その自分で新しいステージに立って、メンバーとファンのみんなで新しい景色が見たい。ワクワクしながら走っていきたいです」(綾瀬)。

左から、mol-74の2021年作『Replica』(ソニー)、蒼山幸子の2022年作『Highlight』(SONY MUSIC ARTISTS)、草野華余子の2021年作『Life is like a rolling stone』(CAT)、笹川真生の2019年作『あたらしいからだ』(笹川真生)、kan sanoの2020年作『Susanna』(origami)、österreichの2020年作『四肢』(パーフェクトミュージック)

 

CYNHNの作品。
左から、2019年のアルバム『タブラチュア』、同年のシングル“2時のパレード”、2020年のシングル“水生”、同年のシングル“ごく平凡な青は、”、同年のEP『#0F4C81』、2021年のシングル“AOAWASE”(すべてI BLUE)