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Blue Noteの音源を再構築した彼らしい新作

 パリ生まれでマサチューセッツ州育ちながら、マカヤ・マクレイヴンはシカゴの新たなジャズ・シーンを象徴する存在となった。ドラマー/ビート・プロデューサーとして、International Anthemから『Universal Beings』などの力作をリリースしてきたが、新作はBlue Noteからとなった。レーベルの音源を再構築する彼らしいアルバムだ。

 「これは僕にとってリミックスだと思っている。だけど、ストレートにビートを刻んで入れるだけではなくて、ミュージシャンにも参加してもらった。ドン・ウォズとも深く話す内にそういう提案をされ、自由にやらせてもらえることになった」

MAKAYA McCRAVEN 『Deciphering The Message』 Blue Note/ユニバーサル(2021)

 ハンク・モブレーの“ア・スライス・オブ・ザ・トップ”からスタートする『ディサイファリング・ザ・メッセージ』 は、ビバップからハードバップ期の音源を中心に取り上げている。

 「新しい時代には行きたくなかったんだ。バックビートやエレクトロニックな音が入っているコンテンポラリーなものではなく、もっと昔のカタログを掘り下げたかった。あの頃はまだレーベルも、ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターも若かった。若いエネルギーに溢れていて、いまのInternational Anthemを思い起こすようだと思ったんだ」

 ジェフ・パーカーやユニウス・ポールから、ジョエル・ロスやマーキス・ヒルまで、参加ミュージシャンの選択も興味深い。

 「僕自身のコネクションから選んだ。彼らの個性が活きる形に任せた。ジョエル・ロスがBlue Noteと契約しているのもとても好ましいことだよ」

 原曲からのサンプリングとミュージシャンによる新たな演奏のミックスもマクレイヴン自身が手掛け、様々なアプローチを聴ける。特にお気に入りを訊いた。

 「“サンセット”、“フランクス・チューン”、“ニューヨークの秋”の3曲。メロディー、サビの部分に突出したものがあって、特に“フランクス・チューン”はアート・ブレイキーの言葉をサンプリングしているのも気に入っているんだ。曲の構成もね」

 今回はBlue Noteの音源を使った特別なプロジェクトだが、これまでマクレイヴンがアプローチしてきた方法論の延長にあるという。

 「全部、繋がっていると思う。あるコンセプトのもとに、既に作曲されているものを再構築して新しいものを作っていくという点においてね。あらゆる可能性を駆使して、新しいものを作っていくというのが、僕自身の方向性になっている」

 現在、制作中の新作アルバムは、来年リリースの予定だという。