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インターナショナル・アンセム、ノンサッチ、XL レコーディング3レーベル合同のプロジェクトでリリース!

 ビート・サイエンティストの異名をもつ新世代ジャズ・ドラマー。2018年にマカヤ・マクレイヴンが初来日した時、プレイヤーとして秀でた才能を持つ彼は、そう紹介された。だが、マカヤは、プログラミングされたビートやサンプリングを使用し、狭義のジャズに収まらないユニークな作品を創造してきた音楽家。ブルーノートの音源を再構築したアルバムでは、プロデューサー的な視点が顕現していたのも印象的だった。

MAKAYA McCRAVEN 『In These Times』 International Anthem/Nonesuch/XL/BEAT(2022)

 そんなマカヤの新作『In These Times』は、インターナショナル・アンセム、ノンサッチ、XLレコーディングという3レーベル合同のプロジェクトで発売される。それだけで否が応にも期待が高まるが、実際、仄暗いブレイクビーツと優美なハープ、浮遊感溢れるヴィブラフォン、秀麗なストリングスなどが一体となったそのサウンドは、3レーベルのカラーを無意識のうちに統合したようでもある。

 複数のライヴとスタジオで録音した音源を元に、マカヤの自宅スタジオでポスト・プロダクションが行われたという本作。ジェフ・パーカー(ギター)、マーキス・ヒル(トランペット)、グレッグ・ワード(サックス)、ジョエル・ロス(ヴィブラフォン)など、マカヤが信頼するプレイヤーが起用され、個々のポテンシャルが引き出されている。

 ビート・ミュージックとジャズとファンクが折り畳まれた折衷的なサウンドは、実に巧み、かつ、周到にデザインされている。ひとつひとつの音の配置、音色、効果などを考え抜いた上で最適解を選んでいるのだろう。全体を俯瞰する冷静さと、ビートを研ぎ澄ましていくドラマーとしての顔が同居している。それゆえだろう、どの曲も調和と均衡のとれた音像に仕上がっているのだ。

 また、労働者階級のミュージシャンであるマカヤは、社会から疎外された人々の現実を音楽を通して知らしめたかった、とも述べている。なるほど、本作のストイックで厳然とした作風の背後には、そうしたステートメントが込められているのか。そう得心した次第である。